氷帝学園で過ごす

□7月、夏休み前日にて
1ページ/1ページ

※岳人視点

「よーっしゃ!終わった終わった〜!」
HRが終わり、待ってましたの時間が今から始まったと言ってもいい
「夏休みだ!」
まだだろ!とクラスのヤツらにツッコまれながら教室を出た俺は、夏休みにはしゃぎつつもしっかりテニスバッグは持っている。夏休みが楽しみと言いつつもそのほとんどがテニスに費やされるのはいつものことだ。それでも楽しみには変わりないからテンションが上がる

「あ、向日!」
「おー」
足取り軽い俺に声を掛けてきたのは関口だ。バイオリンケースを持ってるからコイツもこれからまだ学校に残るんだろう
「いいとこにいたわ、夜にLINEしようかと思ってたんだけどさ、明後日ついに合宿でしょ?」
「そうだけど…なんだよ、やっぱお前も気になってんじゃん」
「しかたなくない?」
うきうき顔で近寄ってくる様子を見ればすぐ察した。こいつ、跡部と苗字のことはそっとしておいて練習に励めと言ってたくせに結局面白がってるな
「なんか起きたら連絡するって」
「なんも起きなくても連絡してよ」
「いいけどよ、きっと何も起きねーと思うぜ?」
「そんな分かりやすい事が起きるとは思ってないって。だいたいの様子が知りたいだけ」
「まあいいぜ」
「てかさ、自由時間とかある?電話出来るかな」
「はあ?電話報告かよ」
「ちがうちがう、名前に電話したくなった時とかさ」
「一日、二日我慢しろよ」
「うるさいなぁ、仲良しなんだからしょうがないの。…それに、ウチらはこうして楽しんで…じゃない、ほら、テニス以外の部分を気にしたり出来るけど、」
「やっぱ楽しんでんのか」
「うるさい。でも名前は知らない場所で知らないことをやるわけでしょ、仕事しに行くっていうか…きっといろいろ考えてると思うの。だから電話でも出来たら息抜きになるかなってさ」
「……なるほどな…あーまあ、夜はだいたい自由時間だろうからイケんじゃね?つか、そういうのは苗字に聞いたほうが早いかもな」
「あ、そっか。そうだねそうするわ。じゃあね、部活がんばって」
「そっちもな」

関口と別れて部室に行ったら、なんとそこには苗字が居た。しかも跡部と…滝も居るけど。関口と話した直後だからドキッとした。え、合宿前だけど関口にLINEすることになるかコレ
『あ、向日だお疲れ』
「よ、よお、なんで苗字が居るんだよ」
『合宿の最終確認。明日から休みだしさ』
「あぁ、なるほどな…」
手に持ったプリントをひらひらさせながら応えるところを見るに、そのプリントに合宿の概要が書いてあるのだろう。俺と苗字の会話に区切りがついたのを確認して、跡部が口を開いた
「いま話した内容がひと通りの流れなんだが、質問あるか?」
『ん〜…、今のところ無いかな。プリントに書いてあることは当日までに頭に入れておくから、あとはその場でやってみないとなんとも』
「そうか」
「苗字 覚えが良さそうだし、期待できそうだね」
『うわプレッシャー。滝の足を引っ張らないように全力を尽くしマス』
苗字は眉をゆるく下げて笑う。そういや苗字は部活動やったことなくて、それなのに他校も集まる合宿のサポートだから不安な気持ちがあるって言っていた。俺は逆に、そういう苗字の気持ちを分かってやれない。苗字ならって簡単に考えてたけど、関口の言う通りだ。足を引っ張っらないようにって、本気で心配してるんだろうな。よし、合宿中は俺もなるべく気にかけてやらねーと。そう意気込んだ矢先
「そう気を張るな。いつも通りにしてりゃ充分だ」
少し口の端を上げて、はっきりとした口調で跡部が言う。俺はビックリして固まった。滝も興味深く跡部を見詰めていたみたいだがそっちにまで気が回らなかった。若干混乱してる俺に気づいてくれないのは仕方ない、仕方ないが次の苗字の発言でなんかもう、なんとも言えなくなる
『…そうだね、跡部がそう言うなら大丈夫だ!』

下がってた眉がパッと上がって一転してスッキリした顔で笑った苗字。それに対して頷きひとつで応える跡部。…あれ?え?なんか…うん?ここでようやく俺は滝の存在を思い出して、二人に気づかれないように注意して滝に目を向けたら
「……」
なんか、力強く頷かれた。……。いやいや、面白いもの見ました!って顔だなそれ
『んじゃああたしはそろそろ行くね。大丈夫だと思うけど、気になることあったら合宿までに連絡させてもらうわ』
「ああ」
「うん、よろしくね」
『じゃあね〜頑張って!』
「あ、おう、じゃあな…」
カラリとした笑顔のままさっさと部室を出てった苗字を、俺は変な顔で見送ったと思う
「……」
おずおずと跡部を盗み見れば、いつも通りの“ 跡部様”の表情だ。そして自分のロッカーを開き何食わぬ様子で着替えを始めるが俺の置いてきぼり感はすごい。妙な沈黙が出来てしまい跡部がロッカーを弄る音だけが響く中、さっきの跡部に負けないはっきりとした口調で滝がひと言

「やるねー」
もしかして合宿で何か起きるのだろうか。ちょっとよく分からない。とりあえず今夜、関口にLINEすべきかどうかが問題だ




















のんびり溺れいく君をみた



(跡部…苗字と仲良かったんだな)(アーン?お前ほどじゃねぇだろ)(いや…うん、まあ…)





























ーーーーー
思いのほか良い関係っぽくて動揺するがっくん

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ