氷帝学園で過ごす

□7月、合同合宿にてA
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今回の合同合宿には氷帝・青学・立海・四天宝寺の四校が参加している。四校共に全国大会に出場する学校だ。大阪からわざわざ参加するって凄いなって思うが、充実した練習の為なら苦にならないのだろうか。今のところ各校の部長達と少し話した程度だけど、どことなく全校キャラが濃そうに見えた。もちろん氷帝も含めての全校だ。あと、皆びっくりするくらいテニスが上手い。全国レベルなんだから当然だけど、でもやっぱり間近で見ると感心する。青学に関してはこの前の練習試合ですでに見たけど、それでも感心する気持ちは新鮮なものだ。何度見てもやばい。そんなやばい部員しか居ない合宿はマネージャーにもルナティックモードで襲いかかり、午後からはスコアチェック以外で立ち止まる時間なんて無かったような気がする。言い過ぎか?いやそんなことはない、ペーペーなあたしはともかく滝と青学の二人まで走り回ってたから間違いなく忙しかった。今日の練習が終わったと告げる号令を聞いてホッとしたことは見逃してほしい。夕食は一時間後とのことだが、それまで自主練をする人達がけっこうな人数いて慄いた。マジかよ。自主練組の使ってる道具は各自片付けるそうでマネージャーが付き合う必要無いから好きにしてくれて構わないんだけどさ、今日一日の練習だけでも凄かったのにまだやるのかよ。彼らはロボットか何かか。こわ…。大声で鳳くんの名を叫ぶ宍戸を見ないフリしてあたしはコートから立ち去った




夕食は大ホールでビュッフェスタイルだった。どっかの良いホテルのビュッフェみたいな、雑誌で特集されてそうななんかすごいのだった
「俺たち高校生なのにこんな贅沢していいのかな…」
近くにいた立海の部長の引き気味の呟きに内心で激しく同意する
『榊先生やばすぎじゃないですかね』
「俺なんて六年目だけど未だにわけわかんねぇからな。苗字も余計なこと考えるのやめとけよ」
向日が悟りの表情で首を横に振った。せやな。お腹ぺこぺこのせいもあってか純粋に喜ぶ部員も多いのでその波に加わりたい。とは言えまずは部員たち優先だから混雑がおさまるまで遠慮しようと、ひとまず席についてジッとする。席は氷帝のみんなと一緒で、隣の団体は四天宝寺になった。忍足2号たっての希望だ。全員 食料確保に旅立っていて今は空っぽだけど。それにしてもすごい人だかり…。あの群れが居なくなる頃に果たして料理が残されているのか不安になるな…。補充してくれるよね?
「苗字、どうした?食わねぇのか?」
『跡部』
いまホールに来たらしい跡部が声をかけてきて、その表情はなんだか心配そうだ
「疲れたか?」
『そりゃあね、帰宅部にはなかなかの試練だったから。足パンパンになったし…あ、でも元気だよ!お腹も空いてるし』
「そうか?何も取ってきてないみてぇだが…」
『あーうん、あの集団が引いてからにしようと思って』
「あぁ…なるほどな」

ジェントルマンな跡部がすごく気遣ってくれるけど、あたしは疲れながらも元気です。なんなら合宿中にここの料理をコンプリートしたいと企むくらいにはピンピンしてる
『跡部こそお腹空いてないの?忙しそうだけどちゃんと食べないと』
今もそうだけど、この人はやたらと忙しなく先生達や他校の人達のところを行ったり来たりしてる。しかも合間に何度も電話してたみたいだし。その姿はただのビジネスマンにしか見えない。どこに居ても跡部様はすごいや
「あぁ、今からゆっくりさせてもらう…けど俺もあの波が引いてから取りに行くか」
お皿を山盛りにしてる向日達に保護者の視線を送りつつ跡部はあたしの隣に座る。だよね、あの中を掻き分けて料理を取るとか跡部に似合わないもんね

「苗字、今回は参加してくれてありがとうな。すごく助かった」
ひと息ついた跡部に言われた
『いやいやそんな、あたしのほうがありがとうだよ。部屋も料理もこんなに豪華だなんて思ってなかったからビックリしてる。これで内申点まで貰うのはなんか悪い気するわ…』
しかもバリバリ動ける助っ人が他に居ますし。やる事はやってるけど、見返りのほうが大きすぎて動揺してます
「部屋も料理も最初から決まってた事だ。苗字が気にすることじゃねぇ」
『まあねぇ』
「青学の二人にも助かってるが、滝のフォローに入れる苗字のおかげで滝の負担がだいぶ減ってる」
『あぁそこはね。異性の先輩でしかも他校だとさすがに萎縮しちゃうだろうからね。滝も気をつかうだろうし。気を付けてるよ』
「マネージャー業務に加えてそういう所に気を配れるから苗字に頼んだんだ。他の学校の奴らも褒めてたぜ」
『あ、そう?』
それは素直に嬉しい。氷帝の人たちは同じ学校だから多少の贔屓目があるだろうけど…あるよね?頼むよそこは?…まあとにかく、他校の人々から認められたのはホッとする

『あ、そうだ跡部さ、ミーティングの前後どっちか少し時間取れる?ドイツ語の課題で聞きたいことあるんだよね』
「ミーティングの後のほうがいいな」
『わかった。そんなに時間取らせないから、よろしくお願いします』
「あぁ」
こうしてちゃっかり勉強まで教えてもらえるあたり、やっぱり見返りのほうが大きくてコレはもう跡部に足向けて眠れません
『それにしてもさぁ、こうやって跡部と学校以外で一緒に居るって不思議なかんじ』
「…そうか?」
『てか、合宿自体が初めてだから、跡部がどうとかよりも今ここに居るのが不思議なかんじかな』
悲しいかな帰宅部生のあたしだ、他校も交えてのこんな体験したことない
『貴重な経験してるなーって思う』
「そうだな…俺もそう思う」
ありがとう、と続けようと思ったけど跡部が感慨深く頷いたから、なんとなく黙った
「こんな貴重な経験、なかなか出来ねぇな」
『…?うん、そうだね…?』
随分と優しい笑みで言う跡部の真意がなんなのかいまいちわからないけど、跡部の台詞に対しては完全に同意なので大人しく返事する
「…アイツらやっと戻ってきたな」
『え。あ、本当だ』
向日たちが両手にお皿を持ってこっちへ戻ってくる。忍足まで両手に山盛りだ。なんか2号と言い争ってるし
「よし、俺らも取りに行くか」
『だね。お腹すいた!』
「たくさん食えよ。スイーツコーナーにはチーズケーキも用意してある」
『うわチーズケーキ大好き!』

跡部からレクチャーを受けつつ選んだ料理はどれも美味しくて、高校生なのにこんな贅沢…とか見返りが…とかの考えは食べてる間は吹っ飛んだ。ちらりと見た立海の部長もめちゃくちゃ食べていたから罪悪感は薄まりました。あたしこの合宿で太って帰ることになりそうでこわい…















ぼくらどうやって永遠になろう



(なあ苗字さん、俺と謙也どっちが多く食べたか判定してくれへん?)(えっ)(俺やろ!?)(俺やろ?)(ええ…)


















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謙也の前だと子供っぽくなる忍足侑士がかわいい

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