フリーザ様

□審神者してるフリーザ様の周りをチョロつくBのおまけ1
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※シリアスver.
※次郎太刀視点






思考が追いつかない。主に従うまま重傷の体を引き摺って、みんなが居て、長谷部が折れた刀を抱えていて、名前が、名前が――――







『はい、できた』
「あんがとね」
『よいしょっと』
「今日の予定は?」
『このあとはトランクスの勉強を見てやって、お菓子作り!』
「おっ!ついでに酒のツマミも頼むよ〜」
『任されよう!』
「そうこなくっちゃ!」
『じゃあまたあとでね〜』
「はいよ〜」
アタシの髪を結って、名前はトランクスのもとへ向かった。その背が見えなくなるまでジッと目を逸らさず見送って、小さく息を吐いた

あの日の出来事がまるで夢みたいだ。主が言うには此処はアタシ達が造られた場所とは違う地球で、日本なんて国は存在しなくて、審神者も歴史修正主義者も存在しないまったく別の世界らしい。主が放った光が眩しくて目を瞑った。そのあと目を開けたら此処に居た。なんとか様って人…人?が、連れて来てくれたそうで、アタシ達の姿を見て周りに居た人間達が叫んだ。その叫び声の中には フリーザ とか 名前 とか呼ぶ声も混じっていて、あぁこの人間達はアタシの知らない二人を知る人間なのだと回らない頭なりに理解した。折れずにいた仲間達と共に見知らぬ人間達の喧騒をまるで霧の向こうの出来事のようにぼんやり眺めていたら、ひとりの男が主に食ってかかった。貴様名前に何をしやがった。ビリビリと肌に突き刺さる怒鳴り声で、ようやくアタシは我に返って名前の行方を探したのだ。付喪神になる以前から何度も人間の死を見てきた。長い長い年月の中で何度も見てきた。人間とは呆気無く死んでしまうものだと知っていたのに、主に抱えられた名前が死んでいると認めたくなかった。仲間達も名前の姿に気がついて、泣き崩れた。他の審神者から造られたアタシが何を想って人形(ひとがた)の姿で刀を振るうのかは知らないが、フリーザ様と言う主に造られたアタシの一等は名前だった。審神者と言う絶対的な存在よりも優先しなければならない対象が名前だった。それが主からの唯一で絶対の命令でもあったのだからある意味では主が一等だったのかもしれないが、それすらも越えて名前の側に居たつもりだ

二振り目だった。顕現されて初めて視界に映ったのはきらきら光る瞳でアタシを見上げる名前だった。持てるわけ無いアタシの刀身をいつも触ってた。血の臭いが似合わない子だから、他の仲間は刀身を触らせたくないようだったけどアタシは名前の手の中に在る自分が好きだった。名前が触れる度に必ず守り抜こうと誓いを立てた。それなのに。ほんの少し指を切っただけでも痛い痛いと騒ぐ子が、全身を真っ赤に染めている。咄嗟に蛍丸を探して視線を彷徨わせ、長谷部が抱えるいくつかの刀の中にその姿を見つけて泣きたくなった。主は鍛刀するペースが遅いから、蛍丸と二振りでいる期間が長かった。アタシ達でも知っている日本と人間の歴史や常識をあまり知らない主と名前を相手に、二振りでなにかと奮闘したのは忘れられない。本丸が充分賑わってから知ったのは、他の本丸に居る蛍丸はもっと奔放で世話を焼かせることが多くて、アタシはひたすら飲んだくれてるらしかった。アタシだってお酒は大好きだし蛍丸も気ままを好むけど、それより優先するものがあっただけの話だ。だからこそさ、ねえ、わかるんだ。無念で無念で堪らなかったろうね。折れたやつも残ったやつも全員、思いは同じなのはわかってる。だけどやっぱり蛍丸は特別だ。蘇ってすぐアタシにだけ 守り抜けなくてごめん と謝ってきた蛍丸のその心情は、この新しい世界でアタシだけが正しくわかってる。これから次々やって来るだろう他の刀剣の誰にも負けないくらい強くなろうと約束したのは、二振りぽっちの最後の夜だった

なんとかボールとかって奇っ怪なモンで名前はもちろん折れた刀剣男士もみんな蘇った。あり得ない、摩訶不思議な光景でこれもまた夢のようだった。ただ、いろんなヤツらにもみくちゃにされて笑う名前を見て、こんな夢ならいつまでも見続けていたいと思った
「次郎さん…」
「あらお小夜。どうかしたかい?」
「…あの人は」
「ああ、名前ならトランクスの勉強を見てるよ」
「そう…」
「…気になるなら行っておいで」
「ううん…。邪魔したくないし、それに、きっと蛍丸さんが居るでしょう」
「多分ねぇ。でも蛍丸以外にも引っついてるかもしれないし、かまわないんじゃない?」
「……」
小夜左文字は俯き黙った。名前の側にはいつも刀剣男士が居る。ずっと前からそうだったけど、あの日をきっかけにますます名前を気にかけるようになった。無理もないことだと思う。実際、アタシだって名前が何処で何をしているかいつも気になって落ち着かない。蛍丸はとりわけ顕著で、四六時中名前の近くに居て、ふいに焦ったように声を掛けたり触ったりもしている。暗い顔こそしなくなったものの、名前を守れなかったことが深い傷と大きな罪となっていた。「こう言うのはね、時間が解決してくれるのを待つしかないのよ」とブルマが言った。曖昧に笑うしかないアタシの背をやんわりと叩いて笑う。ちっこい手が驚くほど頼もしい。人間とは付喪神より遥かに短い時間しか生きられないのになんだってこうも強いのか。わかっちゃいるんだけどね。名前だってアタシらが暗いと淋しそうにする。目の前で蛍丸が壊れるのをあの子は見たはずだ。蘇ってまず蛍丸を抱きしめた名前は震えてた。それでも変わらない表情を見せてくれるんだから、アタシらもそれに応えなきゃいけない。心を持つって難しいものだとつくづく考えさせられる

「お小夜、名前はお小夜が会いに行ったら喜ぶよ」
「…そう、でしょうか」
「そうさ、そら」
「あっ…!?」
俯いたままのお小夜の髪紐をほどいてやったらびっくりして顔を上げた。この小さな刀があの日、名前と蛍丸を追った無数の歴史修正主義者にひと振りで勇敢に立ち向かったのは長谷部から伝え聞いている。いつも離れた場所からこっそりと名前の様子を伺っていたこの子は初めてやって来た短刀だ。名前から与えられる無邪気な優しさに戸惑い、後から来た短刀達のように素直に甘えられない損な性分であるけれど、名前と繋ぐ手を離したことはなかった
「紐、取れちゃったねぇ。アタシじゃ上手く結べないから名前のとこ持ってお行きよ」
「え、あ、でも…」
「アタシの髪もさ、綺麗なもんだろ?名前がやってくれたんだ。お小夜もやってもらうといい」
「あ…」
「さあ行った行った」
「わ…、えと…じゃあ…行って来ます…」
頬を染めて照れながら、お小夜は髪紐を大切そうに握り締めペコリとお辞儀をしてから去って行った。名前の所でもずっと頬を染めたままなんだろうなと想像して自然と笑みが溢れる。なんて穏やかなんだろう。穏やか過ぎて良い夢をずっと見続けているのかと錯覚してしまいそうになる。でもそうじゃない。あの日の恐怖も怒りも絶望も現実として起こった出来事だし、この平和と幸せだって確かな現実だ。アタシも名前も存在していて、それは生まれた世界ではなくても夢じゃない。不安や葛藤があったって、ブルマの言葉の通りになるまで一緒の時間を生きればいい。今度こそ誓いを折らなければいい
「主も人が悪いよねぇ。顕現して真っ先に言ったのが 名前さんの為に存在してなさい なあんてさ」
あのきらきらの眼差しで見詰められながらそんな事を聞かされた日には、応えないわけにはいかないじゃないか

この身が存在して名前と共に居られる限り、夢の噺なんかにゃさせないんだ






















そうして終わりもきみと一緒がいい



(でも出来ればそれはもっと後の話がいいな)

















ーーーーー
・ビルス様がカプセルコーポレーションに連れて来てくれた
・フリーザ様に突っ掛かったのはベジータ

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