過去ドフラミンゴトリップ

□朝の出来事
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「!んねー、ドフィどうした?今朝は早いな」
朝、普段よりずっと早い時間にドフラミンゴは広間にやって来た。朝が早いのはトレーボルとラオG、セニョールで、彼らは丁度朝食を食べ終わったところだった。三人しか居ないのを確認してドフラミンゴは口を開く
「まだ起きてきてねェか」
「?だれだ?」
「…ベビー5…と…」
「あァ名前か。まだだな。ベビー5に合わせてるならあと30分ってところだ」
セニョールがサラリと答え、ドフラミンゴはそれに対してぴくりと眉間を動かした
「?名前に用があったのか?」
トレーボルが首を傾げてドフラミンゴに訊ねる。昨晩の歓迎会で名前はすっかりファミリーの一員となった。ドフラミンゴの隣に座る名前は、基本的にはファミリー達にただただ圧倒されまくりで、それでも楽しそうにしていた。ベビー5がやけに懐いたせいか、子供たちもそれに釣られよく喋りかけていた。しかし、ベビー5がうとうとし始めてすぐに、ベビー5を連れて部屋へ下がってしまったのだ。他はそのあともいつも通り気の済むまで呑んでいたが、思えばドフラミンゴは普段より早く切り上げていた気がする

「酒はあまり呑んでいなかったはずだ。どれ、気になるなら様子を見て来てやろう」
食後のお茶を飲み終えたラオGがゆっくり立ち上がって言う。ドフラミンゴはラオGを見て、セニョールはドフラミンゴを見ている
「いやいい。フフフ、ゆっくり寝かせてやれ」
「そうか?」
「あァ」
「ならワシはこのまま部屋に戻るとしよう」
立ち上がったついでだと言ってラオGはそのまま広間を出る。ドフラミンゴはラオGを見送ってから、ようやくセニョールの視線に気づいた
「なんだ…」
「いや…」
歯切れの悪い返事を返すセニョールだったが、ドフラミンゴは追求しなかった。メシ食うかとトレーボルに聞かれたが、まだいらないと答え椅子に座る。それから少ししてトレーボルは席を立ち、ドフラミンゴとセニョールの二人だけになってすぐ名前とベビー5がやって来た

「おはよう若様、セニョール」
『おはよう』
「あァおはよう」
「おはよう、よく眠れたか」
口々に挨拶をかわし、最後にセニョールが訊ねた
「ぐーっすり!」
『ベビーは本当によく寝てたね』
「名前はどうだ」
『あー…まあまあかな…。ほら、ここに来て初めての夜だったから。でもベビーと一緒だから思ったより早く眠れたよ』
「!私、ひつよう?」
『必要?う、うん、ベビーが居てくれたおかげで寝れたからね』
「えへへ!」
「そうか。若に同じ部屋にしてもらえて良かったな」
『本当に。…わ、若…ありがとう』
昨日だけでドフラミンゴがどんな立ち位置の人物かよくわかった名前は、ベビー5やセニョールをならって若呼びすることにした。全然敬える気がしないが、アンタやコイツなどと呼ぶのはさすがにダメだと思った。昨晩のグラディウスの若語りがなんか凄かった。自分勝手の俺様で正直どうかと思うが、苦言を呈していい立場じゃないんだろうなぁと自覚して黙っているつもりだ
「……」
「?若?」
挨拶したっきり無言のドフラミンゴを不思議に思いセニョールが声を掛ける。なぜかむっすりしてるドフラミンゴはじとりと名前を見ている
『な、なに…?』
「…なんで呼び方を変えた」
『え』

呼び方って?名前は自分がいつこの男を呼んだだろうかと首を捻る。昨日はほぼ“ねえ”とか“ちょっと”で済ませたはず。変えるってなんだ。まともに名前を呼んですらいないのに
『あ』
ハタと気づいたであろう名前を見てドフラミンゴは笑みを浮かべた。そうなのだ。最初の自己紹介で名前はドフラミンゴの名前を口にしたのだ。ざっくり回想抜粋すると−−−

「名前…。フフ、名前チャンかそうか。おれはドンキホーテ・ドフラミンゴだ」
『ドン…?え?』
「ドフラミンゴだ」
『…ドフラ……へぇ…そう…』
「…!フッフッ…!そうだ、ドフラだ」

−−−以上である。名前は決して愛称を口にしたのではない。嘘つけよと思い口ごもっただけである。しかしどうやらドフラミンゴは好意的に受け止めて勝手に解釈しているらしい。だとしても、名前を口にしたのは今のところその1回だけだ。そう呼ぶと決めた訳でもなければ、なぜ呼び方を変えたのか?と問われるほど呼んでもいない

『……まあ、みんな若って呼んでるみたいだから』
合わせるよね普通、と心の中で付け足すがドフラミンゴは納得してないようで、またしてもむっすりとしてしまった。なんだこいつ?面倒臭いな…。名前が明らかに困っているので、静かに二人の話を聞いていたセニョールが口を挟んだ
「名前、若がこう言ってるんだ。無理におれ達に合わせなくて良い」
「…!そうだ、呼びやすいように呼べばいい。フッフッフッ!」
『……』
まだまともに呼んだことがないので、無理も何も無いし呼びやすい呼びにくいも無い。なんで他に呼びたい呼称がある前提なんだ。待ってくれと言いたいが、呼び方ひとつでいつまでも議論するのはバカらしい。ここに来た目的は朝食だ。ベビー5もお腹を空かせているだろうし、早く終わらせてしまえ
『…あー…わかった。じゃあ…お言葉に甘えようかな』
「フフフ、それでいい」
『ところでベビー、朝はいつも何食べるの?』
「パンとー、ハムとー、たまご!」
『いいね、美味しそう』
「果物とヨーグルトもあるわ!」
『へえ、楽しみ』
「……おい」
『ん?』
「……」
『?なに?』
「若様?」
ベビー5との会話に割ってきたくせに、ドフラミンゴは何も言わない。しかもまたまたむっすりしてる。またかよ、と若干イラつくが言い分を聞いてやろう
「……呼べよ」
『え?』
「コックさん?」
「ちげェ」
『?』
「?」
「……」
「…名前、その……名を…」
『え?セニョー……あぁ………チッ、ドフラ…』
「…!フフッ…フッフッフッ!」
「…へんな若様…」
「しぃー」
小さな舌打ちはとりあえず皆聞かなかったことにした





ところで、名前という人物は寝起きが悪い。幼い頃からずっとそうなので、体質的なものとして諦めている。今では上手くやり過ごす手段を心得ているが、無理に誰かに起こされたり起き抜けに話しかけられるとどうしても態度がキツくなってしまう。なので、ベビー5と一緒の部屋になって唯一不安に思ったのは朝どうしようと言うことだ。家族はもちろん、恋人だって落ち込ませるほどの名前の寝起きの悪さだが、だけどまさか子ども相手にはダメだろう。その心配も相まって寝つきが悪かったのだが、起きたら以外にも杞憂だった

『………』
朝、安定の苛立ちと共に目覚めた名前。天井を見詰めて此処はどこだっけなどと思う。どうにもならないイライラを少しでも逃がすために深呼吸をして、そこでようやく違和感に気づく。体に何かしがみついている。どういう状況なのか頭が回らず全然わからない。そのまま少しぼんやりしてからやっと何かにしがみつかれてる自分の身体を見た
『……あら…』
滅多なことでは変わらない、名前の寝起きの機嫌が上を向く。しがみついているのはベビー5で、気持ち良さそうに寝息を立てていたのだ。それはもう可愛い寝顔だ。小さい子供と関わったことのない名前は、子供が好きかと問われてもイマイチ返事に困る。好き嫌いを判断するほど子供がどういうものか分からないからだ。だけど、自分で言うのも嫌だが寝起きの自分がこうもあっさり機嫌を持ち直すのは本当に珍しい。まだ少しボーッとする頭が冴えるまで、名前はベビー5を撫でた
「おはようドフィ。なんだ今朝はずいぶん早いな」
「あァおはようピーカ」
「なんだ?じっとして。食堂行かねェのか?」
「…いや、あとから行く。先行ってろ」
「?そうか。じゃああとで」
「あァ」
部屋の前が騒がしかったのはちょっとイラッとさせられたけども、ピーカの綺麗な声で相殺された





「ところでベビー5と一緒に寝てなんでもなかったか?コイツは少々寝相が悪い」
コーヒーを飲みながらセニョールが名前に向けて言うが、真っ先に反応したのはベビー5だ
「セニョール!私そんなことないわ!」
心外だとばかりに頬を膨らませ抗議するベビー5に、セニョールは薄い笑みを浮かべて返す
「寝ぼけて銃をぶっ放したことがあったろう」
『!?』
「あ、あれはまだ扱い慣れてなかったときだもの!」
『!?』
「そうか」
いや、「そうか(微笑み)」じゃないだろ。衝撃の会話に名前は二人を交互に見る。寝ぼけて銃を撃つってそうとうだろ。こんな子供に銃を持たせる云々はここでは置いておくとしても、銃を手に持って寝てるのかこの子は?昨夜はそんな素振り見せなかったはずだけど、実はベッドに忍ばせていたのだろうか。護身用と言われればそれまでだが、寝ぼけて撃たれるのは困る
「フッフッフッ、ナイフでシーツを切り刻んでたこともあったなァ」
『!?』
ドフラミンゴの付け足しに、まだ考えがまとまっていなかった名前はさらに驚愕した。姉様だなんて言って懐いてくれた子供に、寝ぼけて殺されるかもしれないってどんな状況なの。暗殺かよ。青ざめる名前にやっと気づいた三人は、慌てて訂正した
「ね、姉様!心配しないで!セニョールと若様が言ったのはずっと前の話よ!私、いまはそんなことしないわ!」
「驚かせてすまないな。ベビー5の言う通り、今はなんともない。からかっただけだ」
「そうだ。コントロールを覚えた今はなんてことはねェ」
『…あー……そうなんだ…』
「姉様…!」
『…うん、大丈夫、気にしてないからそんな顔しないで…』
泣きだしそうなベビー5を前に他に何も言えない。空笑いの名前は、今夜から寝る前にベビー5の身体検査をしようと決めた























きみはてんし



(ベビー!?足が!!?)(えへへ!すごいでしょう!)






















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ベビー5可愛い

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