日記

ぐだぐだ喋りませう

◆ドフトリ夢主で小話 

※続・夢主がカタクリに嫁ぐ
※カタクリ夢

ひとつ屋根の下で暮らしていて隠し通せるはずがないと覚悟していたが、カタクリは内心でひどく動揺した
『…カタクリ様…』
目を丸くさせる夢主が何を考えているのかなんて想像に容易い。だって幼い頃に散々浴びせられてきたのだから
「…部屋へ下がってろ、荷造りはホーミーズにさせよう」
『……は?』
食べかけのチョコレートタルトを床に置き低い声で言う。シェフの作る、カタクリの好みにぴったり合わせたドーナツよりも夢主の作るありふれた味のお菓子ばかり食べるようになったのは、美味かったと告げた時の彼女の嬉しそうな顔が見たいからだ。しかしそれも今日で終わり。醜く裂けた口を見て傍に居ようと思うはずがない。妻であることに絶望しただろう。ありのままの自分を誇っていたのはもう遠い昔で、今のカタクリは完璧な存在でなければならなかった
「明日には屋敷を用意する。今夜はホテルに泊まるといい」
『…、…え?な、なに…?どういうこと?』
「この口を見た」
『…え、う、うん…?』
「一緒には居られねェだろ」
いつからか、この口を見たものを生かしておくわけにはいかなくなった。けれどまさか妻の命を奪えるはずもない。相変わらず目を丸くさせたままの夢主はその場を動こうとせず、その視線が自身の口もとへ向けられてるのだと思うといっそ怒鳴りつけてしまいたかったが彼女は何も悪くない。だが一刻も早くこの場を去ってほしかった
『……なんで一緒に居られないの?』
カタクリの心情などこれっぽっちも気づかぬ夢主は惚けたように訊ねる
「この口を見た」
カタクリは先程より強く言う
『…見た、けど…それが理由…?』
「……メリエンダ中の姿を見られた」
口だけじゃない、この、緩み切っただらし無い最悪の姿をよりによって妻に見られた。一番完璧でありたい人の前でこの姿を晒した
『あぁ…、そう言えば寝っ転がってたね…。びっくりしたけど誰に迷惑かけてるわけでもないんだし、いいんじゃない』
「…いいんじゃない、だと?」
あっけらかんとする夢主にカタクリの表情が険しくなっていく
「誰にも見られるわけにいかなかった」
『それは…ごめんなさい』
「この口も、食ってる姿も、誰にも見られるわけにいかなかった」
『…もう見ない』
「…フクロウナギのようだ」
『…?ふくろ…?なにそれ?』
「……口が裂けたバケモノだ」
『へえ…』
「バケモノのおれが恐ろしいだろう」
『いいえ特には』
「…一緒に居ればお前も蔑まれる」
『そう』
「お前を傷つける」
『守ってくれないの?』
「……醜いこの顔に失望したか」
『しない』
「あのだらし無い格好は」
『いいんじゃない』
「完璧な男と言われてるヤツがこのザマだ」
『完璧な人なんていないよ』
夢主が呆れた顔でカタクリの頬に付いたチョコを拭う
『あたしはね、特別美味しいわけじゃないあたしの作ったお菓子を美味しいって言ってくれるカタクリ様が好きなだけよ』
カタクリは、だったらついでに他人行儀な様付けをいい加減やめてくれと言えばいよいよ彼女の前で完璧で居られなくなるなとチョコの付いた指先をぼんやり眺めた

2018/12/30(Sun) 11:03

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