薄桜鬼

□会うための小さな理由
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「失礼します。土方先生いらっしゃいますか?」         

          

「ん?・・・ああ、雪村か。どうした?」         

          

「あの・・・今、お時間大丈夫でしょうか?」          

          

「別に構わねえが・・・何だ?」             

             

            

             

ここは職員室。

今は昼休みの為教員はほとんどいない。



今いるのは、仕事に追われている土方先生と

あれで隠しているつもりなのか・・・

弁当片手に競馬中継を聞いている永倉先生。

それから、原田先生が土方先生の分まで

昼食を用意している。

今はこの3人しか職員室にはいない。





千鶴は、この時間なら土方にも

迷惑をかけないだろうと思い

こうして訪ねてきたのだが・・・。            

            

            

           


















「あ・・・でも、お忙しいんじゃ・・・」            

           

「ああ?お前は気にしなくていいんだよ。

で?何か用件があって来たんじゃねえのか?」          

           

「はい、今日の授業で

質問があったんですけど・・・」            

           

「・・・ったく、お前も真面目だな。

わざわざ昼休み割いてまで

勉強しなくてもいいだろう?」           

            

             

             



















苦笑気味にそう言われて、千鶴はドキリとした。





本当は・・・

ただ、土方先生に会いたかっただけなのだ。





会いにくるために何か理由を見つけ

最近ではほとんど毎日こうして職員室か

もしくは土方先生が入り浸っている

国語準備室へと通っている。             

            

        

         


















「あ、あの・・・私、そんなに

頭が良いわけじゃないので

すぐにお聞きしないと

分からなくなるからで・・・その・・・」          

       


「くくっ・・・いいから落ちつけ。

誰も攻めちゃいねえだろ?感心してんだよ。

他の連中にとっちゃあ

授業なんざ形だけのもんで

良い昼寝の時間にしかなんねえからな」             

           


「そんなこと・・・」         

         


「まあ、お前がこうして真面目に

俺の授業を受けてくれてりゃあ

それで良いけどな」          

           

          

           



















きっと今の言葉に深い意味はない。

千鶴にも分かってはいるが・・・

想い人からこんなことを

「お前だけで良い」

なんて言われれば

嫌でも意識してしまうし・・・嬉しくなる。            

           

            

           


















「ほら、見せてみろ。

どこが分かんなかったんだ?」            

          

「あ、はい!えっと・・・」 


















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