薄桜鬼

□金平糖
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手のひらに乗せてみた

淡い色の小さな粒。

摘んで口の中へと入れる。

舌で弄ぶようにコロコロと転がし

溶け始めた頃にカシリと噛み砕く。

その瞬間、甘い甘い味と香りが

口一杯に広がっていく。



じっくりと一粒を味わう千鶴は

頬を仄かに桜色に染めて

ふにゃっと表情を崩している。

想い人への表情とは

また別の緩んだもの。

まさに幸せを表している。







「おい、千鶴・・・ん?」



「!あ、土方さん!

あ、あの、何かご用事でしょうかっ!」



「いや・・・それ、金平糖、か?」



「あ、はい。近藤さんからいただいたんです」







土方は千鶴の手のひらにある

小さな粒を見た。

確かにそれは金平糖。

だが・・・一粒しかなく。







「何だお前・・・一気に食っちまったのか?」



「そ、そんなことしません!

いただいたのは二粒で

今一粒食べただけです」







二粒だけ、というのは

千鶴のことだから

包みごと渡されたところ

遠慮したのだろうと

土方はすぐに分かった。

同時に大げさな程に落胆した

近藤の姿までもが目に浮かび

思わず苦笑を浮かべた。



土方は手を伸ばし

千鶴の手のひらから

残り一粒の金平糖を摘んだ。

千鶴はその動作を見つめ

土方も甘いものが欲しいのかと思い

何も言わずにただ見つめていた。

しかし、金平糖は何故か

千鶴の唇へと押し当てられた。

驚いて口を僅かに開いてしまい

その隙間から押し込まれてしまい。

次には土方の少しかさついた指先が

唇に触れていて・・・

その部分だけ熱を持ったように熱くなった。







「・・・美味いか?」



「っ・・・分かり、ません」



「くくっ・・・今食べてんだろ?」



「・・・ゆ、指・・・離して、下さい」



「・・・ふっ・・・それは聞けねえな」







何やら意地の悪い笑みを浮かべる土方は

真っ赤に染まる千鶴を楽しげに見下ろし

己の指を唇から熱を孕む頬へと滑らせた。

心地の良い感触を堪能しながら

緩慢な動作で千鶴の柔らかな唇を奪う。

しっとりとした唇を舌先で辿り

開くように促すと小さく震わしながら

ゆっくりと開かれていく。

僅かな隙間を割るように押し進めると

口内にある小さな塊を見つけた。

それを転がして溶かしていく。

そして、互いの舌で絡めとりながら

崩してしまうと・・・

甘い、甘い、砂糖の味が広がって。







「んっ・・・は、ぁ・・・あ・・・」



「・・・甘い、な」



「お砂糖、ですか、ら・・・」



「前に食った時は

こんなに甘味は感じなかったんだが・・・」







ふと土方は腕の中でくったりと

体を預けている千鶴を見下ろして。

何か納得のいく答えが見つかったのか

ひどく満足げに微笑んで見せた。







「お前だからだな」



「え?」



「お前の甘味が加わったからだってことだ」







思いもよらない一言に

千鶴は顔を上げていられなくなり

土方の胸へと顔を埋めてしまった。

そんな行動も只々土方を

悦ばすだけだと知らずに・・・。










〜終〜


 

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