薄桜鬼

□あなたは誰のもの?B
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盛大な溜息を吐いた土方は

目の前の愛しい己の小姓を

見下ろして。

うるうると潤ます瞳に

湧きあがる諸々の欲求を押し込めて

コツンと軽く小さな額を小突いた。







「馬鹿野郎・・・

お前が悪いはずねえだろ。

第一話声は副長室まで聞こえてたんだ。

その内容や話声からすりゃ

誰に非があるのか・・・

分かってんだろ?」



藤「ぅ・・・」



永「・・・終わったな」



原「・・・まあ、仕方ねえな」



「・・・土方さん」



「ああ?」



「・・・」



「・・・」



「土方さ・・・」



「ちっ・・・だあ!

分かった、分かった!

・・・はぁ・・・平助。

今回だけは勘弁してやる」



藤「え?」



「ただし!二度はねえからな」



「土方さん・・・」



「はぁ・・・ったく・・・

お前のその目には敵わねえな」



「え?」



「いや、分からなくていい」



「?あ、土方さん

そろそろ一息つかれますよね?

お茶をお持ちします」



「ああ・・・調度頼みに来たとこだ」



「すぐに淹れてきますね。

皆さんの分も後から持ってきます」



原・永「あ・・・ああ」



藤「・・・・・・」







何てことはない。

普段よく聞く会話だ。

それなのに・・・

目の前の二人はどうだろう。

自分が欲してやまない

あの甘く桃色な特有の雰囲気を

醸し出しているではないか。

あはは、うふふ、と

互いに頬笑みあっている(ように見える)

鬼副長と想い人は(藤堂の目には)

まさに恋仲な二人だ(実際にそうだが)。



藤堂が我に返った時には

二人とも姿が消えていて

後方からそれぞれ

原田と永倉が

ぽんっと肩に手を置いてきた。







原「残念だったな、平助」



永「まあ、相手があの人じゃあな」



藤「!もしかして・・・

二人とも、知ってたのか?

あの二人の事・・・」



永「まあ、知ってたってぇか・・・」



原「普段の様子を見てたら気づくだろ。

まあ、当事者には

難しい話かもしれねえけどな」







いつからか、なんて聞きたくもない。

だが、自分が恋焦がれている頃には

とっくにくっついていて

更にはこの熱い想いを知るはずもなく

二人していちゃついていたのか。

何が好意じゃないかも、だ!

好意も好意、恋人ではないか!







永「そう落ち込むなって!」



原「今夜は飲みに行くか?

付き合ってやるぜ」



藤「ぅ・・・う・・・

ちっっくしょぉ〜〜〜〜〜!!」







穏やかな昼下がりに

雄たけびのような悲痛な叫びが

屯所内を木霊していたとか。



その夜、泥酔した平助が

玄関口で騒ぎたて

原田、永倉含め三人揃って

あの鬼副長からお咎めがあったことは

また別のお話。










〜終〜


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