華鬼

□蕩ける程の愛を君に
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「華鬼・・・朝ご飯の支度ができました」







ベッドの中で淡く残った甘い香りを堪能しつつ

心地よい微睡の中にいた。

意識の端で愛しい気配が近づいてくるのを感じ

しかし、このまま起きてしまうのは

彼女に起こしてもらうという行為を

無にするということで・・・。

それはあまりにも勿体ない。

そう思いそのまま微睡に身を任せていた。







「華鬼・・・華鬼?」







心を揺さぶられる甘い声音。

名を呼ばれるだけで

一言声をかけられるだけで

鼓動が早まり、体が熱を持つ。

それは・・・他ならない彼女だから。

反応を示さない俺に

彼女が遠慮がちに体に触れ揺する。

触れた部分から

体が疼き欲を孕んでいくような

そんな不可思議な感覚に陥る。

・・・朝から何を考えているのか。

流石に起きなければ、と思い

ゆっくりと瞼を開けると

目の前に柔らかく微笑む彼女。

ああ・・・こんなにも幸福を感じる朝はない。







「あ・・・おはよう、ございます」



「・・・おはよう」



「朝ご飯できてますよ?」



「・・・ああ」



「・・・?華鬼?」







返事をしつつ未だ起き上がらない俺に

彼女が小首を傾げながら見つめてくる。

愛らしい仕種に

言いようのない程の想いが溢れる。

どう言葉にすればいいのか

どう伝えればいいのか

優しさや愛情を示すのはどうにも慣れない。

それでも、愛しいこの存在には

できるだけ優しく

できるだけ多くの愛情を注ぎたい。



肩に触れている小さな手をとり

そのまま細い体を引き寄せ

ベッドの中へと彼女を引きずりこんだ。

突然のことに体を固まらせている

腕の中の彼女の頬に手を添えて

言外にこちらを向くよう示す。

すると、そろりとぎこちなく見上げて来る瞳。

潤む視線とスッと染まる頬に導かれるように

額に唇を押しつけた。

そして、甘い吐息の洩れ出る唇にそっと重ねる。

口内に広がる甘美な程の香りに

自然と深くなる口づけ。

早く起きなければと思いつつ

しばしこの感触を味わいたい。



俺が感じる程に、それ以上に

幸福を感じて欲しいから・・・

この口づけにのせ彼女への愛を贈る。















〜end〜


 

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