華鬼

□彼の災難〜水羽の場合〜
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水「神無〜」



「えっ・・・」



水「お昼一緒に食べよ」



「あ・・・ごめんなさい」



水「?もしかして、先約?」



「はい・・・次は一緒に食べるから」



水「気にしなくていいよ。

ほら、早く行きなよ」







神無の背中を軽く押して促して

そうすると、明らかに嬉しそうに

駆けていく背中を見つめた。

先約・・・誰か、なんて

聞かなくてもすぐに分かった。

神無にあんな表情をさせられるのは

華鬼しかいないんだから。



二人が上手くいってくれて

僕としても嬉しい。

けど・・・だからといって

終始目の前でイチャつかれたら

それはそれで気分も滅入る。

周りに気がつかないのは

どうなのかと思いつつ

あの二人なら仕方がないかとも思う。










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





水「はぁ〜・・・外は気持ちいなぁ」







誰ともなしに一人ポツリと呟いて

大きく伸びをしてみた。

麗二と光晴の所に行ってもいいけど

偶には一人で食べるのもいいかなと

何となくそんな気分で屋上に出た。

くつろげる場所を探しながら

移動していくと

入口の裏手から微かに声が聞こえた。

予想というか確信だけど

でも、この目で確かめようと

気配を殺して覗いてみた。

すると・・・。







「どう、かな?」



「ああ・・・美味い」



「本当?良かった」



「大げさだな・・・

そんなに心配しなくても

お前が作るものは何でも美味い」



「そん、な、こと・・・

華鬼が作るご飯の方が美味しいよ?」







・・・何なの、この甘ったるい空気は。

滅入った気分が余計に落ち込んでいく。

確信通りそこにいたのは

華鬼と神無だった。

二人がいつも昼休みにいるのは

中庭とか人気の少ない場所。

屋上はまばらといっても

他の生徒もいるというのに。

どうして今日に限って

こんな所にいるのか。

そんなことを考えながら

だんだん苛立ちが増していく。







「あ、華鬼。

今日の夕食は何が良い?」



「そうだな・・・

野菜の煮物がいいな。

後・・・卵焼き」



「卵焼き?」



「・・・お前の作った卵焼き

気に入ってるんだ」



「!じゃあ、今日はたくさん作るね」







そんな新婚さんのような

いや、新婚さんなんだけど。

こんなにもバカップルよろしく

甘い雰囲気を醸し出されるなんて

思いもしなかったから。

この上なく居心地の悪さを感じて

今日の昼食も保健室で食べようと

踵を返して屋上を後にした。



こうなったら光晴を弄らないと

気がおさまらない!

そんな苛立ちと空しさを胸に

周囲を凍てつかせるような

空気を纏いながら保健室へ向かった。












〜END〜


 

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