華鬼

□ふたりきり
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「華鬼・・・」



「どうした?」



「あの、ね?後片付けを・・・」







午前中に業者さんに

部屋の修繕の見積もりを出してもらい

また、かかる日数も華鬼と一緒に聞いた。

費用はやっぱりたくさんかかるみたいで

日数も結構かかってしまう。

それでも部屋全部というわけではなくて

お風呂やトイレは無事で

華鬼の部屋も無事。

でも、キッチンとリビング

それから私の部屋は半壊状態で。

元通りになるまでは華鬼の部屋を

一緒に使わせてもらうこととなった。

そして、キッチンも使えないので

食事は皆と一緒にということになった。

でも・・・。







「何やってんねん、華鬼!

神無ちゃん困ってるやろ!」



「!い、いえ・・・ちがっ・・・」



「あら、でもお腹も一杯で満足した後は

ゆっくりリラックスしたいものでしょう?」



「まあ、そうだけど・・・

それとアレとどういう関係が?」



「つまり、華鬼は今

リラックス中ということですね」



「・・・・・・」



「華鬼?」







確かに皆が言うように困っているけれど

決して嫌なわけではない。

そもそも困っている理由は

華鬼が食事を終えた途端に

私を見つめていた所から始まっていた。

見られていると落ちつかないけど

私を見る華鬼の優しい瞳が

とてもくすぐったくて、でも嬉しくて。

小さく幸せを感じながら食事を済ませた。



それから皆も食事を終えたので

もえぎさんと一緒に

後片付けをしようと席を立った瞬間。

それは突然起こってしまった。

急に腕を掴まれたと思ったら

強く引かれてしまい

そのまま・・・

華鬼の膝の上へ座ってしまった。

突然のことに驚いたのは私だけでなく

皆も呆然としながら見ていた。



そして現在にいたるわけだけど。

結局後片付けはもえぎさんと

士都麻先輩がしてくれた。

申し訳なさを感じつつ

私の意識は腰に回された腕と

胸に埋められた頭に集中していた。

柔らかな髪が時折

胸元をくすぐる。

ふわりと香る大好きな香りに

この普通ではない状況に

違和感を感じなくなってしまいそうで。

このまま流されてしまっても良いような

そんな気持ちになってくる。







「くっ・・・あんな堂々と顔を埋めて

・・・羨ましいっ!」



「光晴〜、本音出し過ぎ」



「っ・・・華鬼・・・

あの・・・は、恥ずかしい、の」



「・・・何でだ?」



「何でって・・・あのね、華鬼。

神無は華鬼と違って繊細なんだから

もう少し自重ってものを身につけなよ」



「ふん、んなもん

コイツに理解できるはずないやろ!」



「まあまあ、華鬼もいい大人なんですから。

ほどほどに、した方がいいですよ」



「・・・何とでも言え」







触れた部分の力は強まるばかりで

でも、纏う空気が少しピリッとして。

皆のからかいに苛るいたのかもしれない。

からかわれるのは私も慣れていないけど

それでも、やっぱり皆の前では恥ずかしい。

できれば二人きりでしてくれたなら

そうすれば、私も華鬼に返せると思う。

少し躊躇いながら華鬼の耳元に顔を寄せた。







「・・・華鬼」



「何だ?」



「あの、ね・・・ふ、二人きりに、ね

なりたい、の・・・」



「っ!?」



「・・・ダメ?」







聞いてみたものの

華鬼からの返事がなくて

もう一度問いかけてみた。

それでも反応がなくて・・・

やっぱり駄目なのかと思っていると。

急に体が浮いた感覚に囚われて

思わず華鬼の首にしがみついてしまった。

気がついた時には

華鬼にお姫様だっこをされていて

私達の部屋へと向かっているところで。

どういうことなのか分からず

華鬼の横顔を見つめていた。







「・・・二人きりが良いんだろ?」



「え・・・うん」



「部屋に戻れば二人だけだ・・・

存分にお前を堪能させてもらうからな」



「!・・・は、はい」







平然とそんなことを言う華鬼に対して

真っ赤になってしまい

俯くしかできない私。

それでも、私も望んでいたことだから

ちゃんとその気持ちは伝えたくて

小さく、でもはっきりと言葉にした。







「わ・・・私も・・・

華鬼を、堪能、したい、です」



「っ・・・お前は・・・

どうなっても、しらないからなっ・・・」







部屋へと入る瞬間。

月明かりの中見上げた華鬼の頬が

仄かに赤くなっているように見えたのは

きっと、気のせいではないと思う。










〜end〜


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