Black Jack

□05
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「知世、おい知世」







自分を呼ぶ低音に

鼓膜が揺すられる。

どうしてなのかな・・・

この声に呼ばれると

私の胸は急激に鼓動を繰り返し

まるで暴れ出すように高鳴る。

ドクドクと血液の循環を感じ

胸をギュッと押さえて

この動悸を抑えようとする。



私、何かの病気なのかな?







「知世!」



『!は、はい!』



「はぁ・・・やっと目が覚めたか」



『え・・・あ!あ、あのっ・・・

ご、ごめんなさい!!』







私はいつの間にか

立ったまま意識を飛ばしていたようで

我に返ると

先生に抱きあげられていた。

この家に来て一週間。

先生は何かにつけて私を抱える。

私を捕まえた時だったり

私に言うことを聞かせる時も

家の中を移動する時もそう。

外では・・・少ないけど

時々、あったりする。



一度街中で買い物をしていた時

私がフラフラと興味津々に

見て回っていると

痺れをきらしたような先生に

ひょいと担がれた。

周囲の視線を一身に浴びて

一気に全身が熱くなってしまって。

先生に必死に下してほしいと訴えても

黙っていろの一点張り。

結局、車に戻るまでそのまま。



あの時のことを思い出して

瞬時に体も思い出したみたいで

同じように熱く真っ赤になった。







「くくっ・・・お前さん

恥ずかしい時は

全身を赤くするんだな」



『っ〜・・・先生・・・

下してください』



「断る」



『ぅ・・・先生、意地悪です!』







むくれてみても

こんな風に怒ってみても

先生には何の効果もなくて。

それどころか

何故か私のことを面白そうに見てる。

何だか、悪戯に成功した子供みたいに

どこか無邪気さを滲ませた

その明るい笑顔が

私の胸の鼓動を速くさせる。



いつもいつも、先生の傍にいると

こうしてドキドキが早くなる。

何で、なのかな?










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





『あれ?ピノコちゃん?』







昼食の後片付けを終えて

今日のお菓子作りを一緒にしようと

ピノコちゃんを探す。

でも、どこにも見当たらなくて

ひょいと外を覗いてみると・・・。







『あ・・・』







外で風に吹かれながら

本を読む先生。

その先生の膝の上で

優しく抱かれながら眠っているのは

私が探していたピノコちゃん。

その様子はとても微笑ましい。

夫婦と言っていた彼女の言葉を思い出し

とても納得のいく様子。

なのに・・・どうして?

今私は、どうして胸が痛くなるの?

どうして?

もしかして・・・本当に

私、何かの病気、なのかな?







『・・・ん〜・・・

後で、先生に診てもらお』







そう一人で呟くと

お菓子は二人が好きだと言ってくれた

ママレード・チーズケーキにしよう。

お菓子が決まると

気分がどんどん浮上していく。

そんな上機嫌のまま

キッチンへと戻った。










to be continued・・・



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