Black Jack

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優しく問いかけられて

その視線も、声も、表情も

全部、とても優しくて。

こんなにも私に優しく接してくれた人

今までにいなかった。

先生が、初めてで。

だから、そんな先生を

裏切っているような気がして仕方ない。

こんな感情、こんな気持ち

先生に対して抱くなんて。

先生のこの優しさを

私は裏切ってしまっている。







「・・・知世」



『っく・・・ど、どうしても

・・・言え、ませ、っ・・・ふ、ぇ』



「・・・はぁ・・・正直に言いなさい。

・・・私が原因なんじゃないのか?」



『・・・え・・・?』



「私の・・・お前さんに対する想いに

気付いてしまったんじゃないのか?」



『・・・先生、の・・・オモ、イ?』







思いがけない先生の言葉。

私への想い、なんて

優しくしてくれる先生の

その想いなんて・・・。







『・・・家族、みたいに・・・

想ってくれてると・・・思ってました』



「だろうな」



『!・・・違うんですか?』



「・・・気付いてないのか?」



『ぁ・・・ご、め・・・なさ』



「・・・ああ・・・違うぞ。

同情だのなんだのと

そういうことではない。

確かに・・・家族のように

思う部分もある」







頬に触れる先生の手の温もりが

ゆっくりと首筋へと下りてきた。

撫でるように蠢くその手に

何故か顔が熱くなって

だんだん体全部が熱くなってくる。

そんな表面上の反応とは別に

私の心は先生から紡がれる言葉に

不安と恐怖が交錯していた。







「だが・・・それ以外の想いもある。

その想いの方が大部分を占めているが」



『っ・・・やぁ・・・や、だぁ』



「知世?」



『っく・・・ご、ごめ、なさい!

も、もう、避けたり、しません

ひっ・・・も、う・・・逃げ、ない

・・・から・・・だから・・・

先生、の、言うこと・・・聞く、から

・・・捨て、ない、で・・・』



「なっ・・・!?」



『ひっ・・・す、好き、に・・・

なって、くれなく、て・・・いい、です

・・・で、も・・・嫌わない、で』



「知世・・・」







泣きじゃくり、聞き取りづらいはず。

それでも、先生は私の言葉を

最後まで聞いてくれた。

そんなところもやっぱり優しくて。

だからこそ、私は私の気持ちも

存在も申し訳なくて。

もう、何もしてくれなくていいから

ただ、傍には置いてほしい。

只々、それを願った。



すると、急に何か大きく温かなものに

ぎゅっと包まれた。

わけがわからずにいたけど

嗅ぎ慣れた安心する香りに

先生に抱き締められていると

数秒後に、やっと分かった。









to be continued・・・


 

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