Black Jack

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『せ・・・ん、せ・・・?』



「・・・お前さんの言う、好き、は

・・・家族として、という意味かい?」



『・・・ぁ・・・それ、は・・・』



「私は違う・・・家族としては

どうしても見れない部分がある。

・・・お前さんを・・・知世を

恋愛対象として、見ている」



『・・・ぇ・・・ぇえ!?』







驚きで止まりかけた涙は

完全に止まってしまった。

先生に遠まわしに

“私は先生が好きです”と

伝えてしまった形で

先生から返ってきた答え。

私を恋愛対象として、ということは

一人の女として、ということ?



家族愛を知らない私が

未だ恋愛感情との判別が

できているのか危うい私が

先生と、両想い?







『先生・・・ふ、ぅ・・・せんせ、ぇ』



「ふっ・・・また泣くのか?」



『め、迷惑、じゃ、ないんですか?』



「私の言うことを聞いてなかったのか?

私はお前さんが好きだと言ったんだ。

迷惑に思う理由も

嫌う理由などどこにもない」



『ひっ・・・わ、私・・・

先生、が・・・優しく、て

そんな、の・・・は、じめて、で

家族、って、こんな、風なんだ、って

・・・そう思えた、の、に・・・

先生に、対して・・・こんな好きって

気持ち、持って・・・どう、したら

っく・・・分か、なくって・・・』



「ああ・・・辛かったな」



『うぅ・・・先生、どうして?

どうして・・・分かるんですか?』



「私も、お前さんと同じだからだ」







抱き締められる腕の温もりと

髪をゆっくりと撫でられて

心地よくも、何故か涙が止まらない。



そんな優しさを前に

自分の不安だった心を

少しずつ零して、伝えて。

頭の上から降ってくる柔らかな眼差しが

何だかとても嬉しくて

視線を上げて自分から絡めてみた。

ぶつかった視線は

少しの熱と小さな痛みを作る。

また、涙が一滴頬を伝っていく。







「知世・・・

いい加減、聞かせてくれないか?」



『え・・・?』



「私ははっきりとお前さんに

私の気持ちを伝えた。

今度はお前さんの気持ちを

お前さんから聞きたいんだが?」



『え!?ぇ・・・あ・・・ぅ』







確かに私ははっきりと

気持ちを口にしたわけではない。

でも・・・それでも

先生からの要望は

とてもではないけれど

叶えられそうにもない。

そんなに簡単に口にできるはずもない。

それができればこんなにも

悩んだりしなかった。

でも、だけど

先生は私にちゃんと伝えてくれた。

だったら・・・私も、伝えたい。







『っ・・・・・・先生?』



「何だい?」



『あの、ね・・・耳、貸してください』







私のお願いに先生は

そっと顔を近づけてくれた。

先生の耳にゆっくり近づいて

緊張のあまり小さな声になったけど

それでも、何とか自分の気持ちを

ちゃんと言葉にして伝えた。







『先生・・・好き、です』



「・・・ああ・・・私も、好きだよ」







照れと緊張から固まる私を

また、優しく抱きしめてくれた。





ねえ、先生。

家族としての温かさも

恋の切なさも、嬉しさも

言葉で伝える大切さも、難しさも

誰かと触れあえることの喜びも。

全部、全部・・・先生が教えてくれた。



これからも、できることなら

私は・・・・・・

私、先生の傍にいたい。

先生が私を要らなくなるまででいい。

だから、それまでは、どうか

私を貴方の傍に置いてください。











to be continued・・・


 

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