Black Jack

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目が覚めて何か温かく柔らかなものを

抱え込んでいることに気づき

己の腕の中を見ると・・・。







「・・・知世」



『ん・・・』










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





昨日、互いに想いを告げ

散々泣き腫らした彼女を見るなり

虐めただの、許さないだの

ピノコに悪者にされた私は

弁明の余地などなく。

確かに私が泣かせたことに変わりなく

甘んじてピノコからの説教を

聞いていたのだが。

慌てふためく彼女は

また、別の事に苛んでいたようで。

ピノコが言った“奥さん”

ということが気になっていたようだ。

彼女が私とのことを丁寧に説明し

そして・・・。





『ピノコちゃんの、先生、なのに・・・

好き、に・・・っく・・・なって

・・・ご・・・ごめん、ね?』





ああ・・・彼女はここでも

ずっと傷ついていたのか、と。

初めて気づき

彼女の心の優しさに

また惹かれた。

堪らなく愛しいと、思えた。

ピノコは彼女を抱き締めてやりながら

日頃より優しい口調で紡いだ。





「・・・ほんとは、じぇ〜ったい

いやらけど・・・

知世なら、いいのよさ。

あたちも、知世のこと

らいスキなんらから」





そんな二人のやりとりを聞いていると

再度ピノコが私を振り返って

今度知世を泣かせたら

許さないから、と

そう宣言されてしまった。

ピノコなりに私達を認めてくれた

そのことに安堵した。










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「知世・・・

本当に、お前さんは

私のものになったのか?」







つい零れ出た呟きの女々しさに

何ともいえない気分になった。

だが、想いが通ったことが

信じられないという気持ちも

否定できない事実である。



白いシーツに広がる

艶やかな黒髪を

そっと指に絡めて唇を寄せる。

こんなにも愛しいと思える

焦がれてやまない相手が

できるなんて。

このまま、鎖で繋いで

錠をかけて

私の目にしか入らないように

閉じ込めてしまえたら。

そうすれば、どんなにいいだろうか。

私だけの知世・・・

狂気的な言葉に揺さぶられ

ジワリと恍惚とするような

欲が胸内に広がっていく。

それと同時に、穏やかな寝顔が

堪らなく庇護欲をそそられて。

本当に、大切にしたいとも思う。



全ては、彼女を愛しているから。







「・・・知世・・・

愛している」



『ん・・・・・・っ・・・

?・・・んぅ・・・ぇ?』



「・・・起きたか」



『せん、せぇ?』



「・・・おはよう、知世」



『ん・・・おはよぉ、ございます

先生・・・ふ、ぁ』







まだ眠気がとれていないようで

欠伸をする彼女。

甘く声を漏らしながら

目をこするそんな些細な仕種でさえ

愛らしく思える。

そっと彼女を抱き起こすと

昨日のように腕の中に抱き締めた。

すると、彼女特有の甘い香りが

私の心を包んでくれる。

癖のないサラリとした髪に

指を絡めながら

首筋に顔を埋めるようにして

初めて彼女の肌に口づけをした。







『!・・・せん、せ・・・?』



「・・・知世・・・」



『・・・な、何だか・・・

恥ずかしぃ、です・・・』



「・・・はぁ・・・知世

そういう表情を

しないでくれないか?」



『?表情・・・って?

私、変な顔、してますか?』



「・・・・・・・・・いや

分からないならいい・・・

いや、良くはないか」



『?』



「ふっ・・・これから

じっくりと教えてやるさ」



『・・・はい!

教えて下さいね?先生』







何も分かっていない彼女は

小首を傾げながら

愛くるしい瞳と笑みで

腕の中から見上げてくる。



・・・やはり、無自覚というのは

始末が悪い。

彼女に感づかれないように

小さく溜息を吐いて。

苦笑を浮かべながら

彼女の綺麗な額に

口づけをまた一つ落とした。










to be continued・・・


 

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