Black Jack

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肌を刺すような冷えた空気。

小さく漏らした吐息は

白くはっきりと目に映る。

冷たくなる指先に温かな息を

ゆったりと吹きかけながら

キラキラと散りばめられた

夜空の星を見上げる。

初めてここに来た時に見た星空。

初めて見るその景色に

涙しそうになったことを

今でもはっきりと覚えている。



あれから、一年。

家族からの連絡もなければ

関わりが全くない。

先生が私を引き取ると

そう言った時の

両親の嬉しそうな顔。

そんな両親を見ても悲しみや

怒りを覚えない私も

きっと、家族と同じ人間なんだ。

すくなくともあの時までは。

今は、先生とピノコちゃんが

私の傍にいてくれる。

先生は・・・先生は・・・

私に恋を、愛を教えてくれた。

悲しみも、喜びも

全て愛が故のものは

とても温かなものだと

初めて知ることができた。

それは全部、先生のおかげ。







「知世・・・

こんなところにいたのか」



『あ、ごめんなさい』



「・・・眠れないのか?」



『・・・うん』



「お前さんが初めてここに来た日も

同じようにここで星を見ていたな」



『!・・・先生も

覚えてたんですね』



「忘れるはずがない。

その姿に見惚れたんだ」



『!えっ・・・』







思いがけない言葉に

驚きを隠せない。

まさか、先生が私に見惚れるなんて。



驚いたままの私を

急に抱きかかえた先生に

更に追い打ちを掛けられて。

控えめな抵抗をしてみたけども

全くびくともしない。







『うぅ・・・先生』



「どうした?」



『は、恥ずかしぃ、です』



「もっと恥ずかしいことをする関係で

これのどこが恥ずかしいんだ?」



『それとこれとは別です!

・・・キャッ』







そのままギュッと抱きしめられ

先生の温もりと香りを感じる。

トクンと穏やかな心音を聞き

徐々に落ち着きを取り戻した。

ほっと安心して身を任せていると

大きな手は私の髪を撫で

ゆっくりと背を這いおりて

何故か膝上丈のスカートから覗く

太股を撫で始めた。

妙な動きと若干の危機感を覚え

慌てて距離をとろうとして。

でも、反対の手で腰を引き寄せられ

離れることはできない。







『せ、先生・・・足・・・』



「この足に、見惚れたんだ、と

そう言ったら減滅するかい?」



『へ?』



「肌の白さといい・・・

触れたら心地の良い足だろうと

あの時思ったんだが・・・」



『こっ・・・あ・・・ぅ・・・

・・・先生・・・エッチ、ですよ』



「分かりきったことだろ」







淡白だと思っていた先生は

そんなことはなく。

むしろ、私が断らなければ

毎晩そういう行為をしていたのかも。

この一年を振り返ればそう思える。

それでも、そこには確かに

先生からの愛を感じられる。







「いい加減、中に入らないと

体が冷え切ってしまうぞ」



『・・・はい』



「・・・私が、温めてやろうか?」



『えっ!?』



「くくっ・・・冗談だ」



『・・・・・・』



「知世?」



『先生・・・・・・温めて、下さい』



「・・・」







近づけば緊張するけど

離れたら寂しくなってしまう。

自分でも分からないけど。

でも、寂しいのは嫌。

緊張はするけど、嫌ではない

この触れ合う距離。

だから、もっと先生に触れて欲しい。



無言の肯定を示してくれた先生は

先程と同じように

私を抱え上げて家の中へと入った。

たぶん、このまま先生の部屋へ。











to be continued・・・


 

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