Black Jack

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「・・・一体、何をしに来たんだ?」



「・・・私、知世の家族ですよ?

随分冷たくあしらうんですね」



「・・・あんた達が知世に

今までどんな仕打ちをしてきたのか

・・・忘れたわけではないだろ?」



「くす・・・さあ?」







今・・・知世がピノコと

買い物に出かけていて良かった。



目の前にいる知世と

どことなく面影が似ている女性。

知世の姉で愛菜(アイナ)というらしい。

あの子を散々傷つけてきた人間に

興味など湧かないし

ましてや快く迎えるはずもない。

この一年でようやく心も体も

傷が癒え新たな生き方を模索している。

それなのに・・・。







「さっさと用件を言え」



「・・・知世に会わせて下さい」



「断る」



「どうしてですか?」



「・・・あの子は今、自分の道を

やっと歩き出したんだ。

それを妨げる奴はたとえ家族であっても

私が許さない」



「・・・許さないって・・・

貴方だって、私達と変わらないでしょ?」



「何?」



「お金であの子を買ったも

同然じゃないですか。

どうせ、毎晩愛玩人形がわりに

抱きまくってるんでしょうけど」







女性を、殴りたいと思ったことが

今まであっただろうか。

この女が、本当に

あの知世の姉だというのか?

あんなにも心が真直ぐで優しい

あの子の・・・。

今更、あの子をあの家に

帰せるはずがない。

例えあの子が望んだとしても

手離してやれない。

知世以上に、私の方が

もう知世なしではいられない。



怒りの色を露にする私に対して

ニヤリと嫌な笑みを浮かべると

本来の目的であった内容を

ようやく吐き出した。







「ブラックジャック先生?

どうしても私を知世に

会わせたくないようですね」



「当たり前だ」



「でしたら、直接貴方に言った方が

早いかもしれませんね」



「・・・・・・」



「私が欲しいのはお金ですよ」



「・・・払わないといったら?」



「その時は、知世に直接

お願いしますよ?

別に貴方に許可を得なくても

会う方法はいくらでもあるし。

それか、知世の身にあったこと

先生とのことも含め

表沙汰にしても良いかもしれませんね」







どこまでも、歪んでいるこの女。

それでも、どんな性格であろうと

紛れもなく知世の姉だ。



言い値を書くよう小切手を渡し

沸々と湧き上がる黒い何かを

ギリっと噛みしめながら。

知世とピノコがまだ帰らないように

それだけを強く願っていた。










to be continued・・・



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