Black Jack

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散々泣きはらして、泣き続けて

気がつけば窓から見えた外の景色が

真っ暗になっていた。

思わず置時計を見てみると

もうすぐ日付が変わる頃。

そんなにも長い時間泣いていたことと

その間、先生が傍にいてくれたこと。

それが、恥ずかしくもあり

情けなくもあり・・・

でも、嬉しかったりもする。







「知世」



『・・・はい』



「・・・腹、減らないか?」



『・・・・・・・・・減りました』



「ふっ・・・少し遅くなったが

夕食を温めてくるから

・・・一緒に食べようか」



『・・・はい』







私から離れ冷めた夕食を

先生が温めに行ってくれた。

申し訳ないって思うけど

今日は・・・今日だけは

とことん甘えてしまおうと思う。



コロンと横になると

さっきまで先生が座っていた場所が

とっても温かくて、むしろ熱い程で。

この熱に私は、いつも励まされ

癒されてきた。

ずっと、私が探して求めていた

確かな希望で、離したくないもの。

熱いその場所をそっと撫でながら

先生を失いたくない

そんな気持ちが不安と一緒に

強く強くなっていくのが分かる。



温めた夕食を先生と一緒に食べながら

私はヒリヒリする目元を

先生から言われた通りに冷やしていた。

放っておいたら朝には腫れるからって。







『うぅ・・・痛い〜』



「目元もだが目も真っ赤に充血してるな。

くっ・・・まるでウサギだ」



『・・・あんまり嬉しくないです』



「何故だ?ウサギは可愛いだろ」



『ぅ・・・でも・・・』



「それに・・・寂しがり屋で

寂し過ぎると死んでしまう・・・

お前さんも、そうだろ?」



『っ・・・・・・先生、限定です』



「・・・そうか」







今まではずっと我慢できていたのに。

先生だと、寂しさだけじゃなくて

色んなことを我慢できなくなる。

自分の気持ちを止められなくなって

欲しくなって、どうしようもなくて。

だからいつも必死に

抑える努力をしてる。

先生限定、なんだから。

私は、それが困ってるのに

そう言ったら先生が

とっても嬉しそうだから。

私も、ちょっとだけ嬉しくなった。



最後の一口をパクリと口へ入れて

今度は私が食器を片づけた。

部屋へと戻るとベッドに腰掛ける

先生の横顔が目に入り

思わず魅入ってしまった。

艶やかな横顔に見惚れていると

ふいに視線をコチラへ向けられて

ドキリと鼓動が跳ねる。

その眼差しと表情に誘われるまま

先生の隣りに腰をかけてみたけど。

くいっと思いの外強めに引かれた腕に

きつく、苦しい程に抱きとめられ

先程の熱さが思い出された。



ああ・・・どうしてこんなにも

安心できるのかな。







『・・・・・・・・・先生』



「・・・どうした?」



『・・・明日・・・・・・私・・・』



「・・・・・・・・・」



『っ・・・・・・やっぱり・・・

何でも、なぃ・・・』



「・・・・・・行くか?」



『・・・・・・ぇ・・・』



「・・・・・・行きたいんだろ?」



『っ・・・何で、分かるんです、か』



「ふっ・・・お前さんが

ここで生活を始めてから

ずっと、見続けてきたんだぞ?

その瞳を見るだけで、分かるさ」







本当に、どうして。

先生はいつも私が欲しいものを

こんなにも分かってくれて

こんなにも与えてくれるのだろう。

私は、先生に同じだけ

返せてるのかな?

先生も、私と同じように思ってる?



先生が優しく瞼に口づけてくれて

それを合図に視線が絡み合うと

焦れる程にゆっくりと唇が重なり合う。

ちゅっ、と何度も繰り返しながら

徐々に深まる口づけに

意識が微睡んでいく感覚に

そっと身を委ねた時。

さらりと頬を大きな温もりで覆われた。







「知世」



『・・・先生・・・

今、私が何を考えてるか・・・

分かりますか?』



「・・・・・・ああ」



『っ・・・せん、せぇ・・・』



「・・・そういう

煽るようなことは止めなさい」



『・・・煽ってるん、です』







拭いきれない羞恥を零しながら

そう呟くと。

一瞬動きが止まった先生の手が

また、ゆったりと動き出すと

優しく親指で唇を撫でられて。

その動きはとても優しげなのに

とても淫靡で何故か焦燥感を抱かせる。



微妙に焦る私を先生のに比べれば

小さなベッドへと優しく横たえて。

私を虜にする低音の声音が

さっき言っていた明日のことを

決定事項として囁いた。







「知世・・・実家へは

昼過ぎに、一緒に行くからな」








to be continued・・・



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