Black Jack

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都心から離れた田舎町。

徐々に車の振動が激しくなり

今走るのは舗装された車道ではなく

荒れた砂利道となっていた。



窓の外を見つめる彼女。

今の心中を伺い知れないが

もし、直前で彼女が拒むなら

私は無理強いはしないつもりだ。

本当なら、私の望みで言うならば

関わらせたくもないし

今日、会わせたくもなかった。

だが、彼女が自ら望んだこと。

ならば・・・彼女の望みを

叶えてやりたいと、そう思った。

ただ、彼女が傷つくようなことがあれば

その時はどんな手を使ってでも

彼女を守るつもりだ。

相手がどう出てこようと

誰であったとしても、だ。







「知世、疲れてないか?」



『あ、大丈夫、です・・・』



「・・・とても大丈夫そうには

見えないがな」



『っ・・・緊張、しちゃって・・・』



「・・・当然だろうな」







彼女も片手で数える程だが

幼い頃に父方の実家へは行ったことが

あったと話していた。

これからその父親と姉に会うわけだが

多分、父親の両親・・・

彼女から見れば祖父母も

健在なら会うことになるだろう。

私も知世も・・・

あの『父親』というのは

彼女を捨てたあの時の姿しか

記憶にはない。

昨日訪れた愛菜の話では

見る影もなく落ちぶれた、と。



正直なところ、彼らがどう過ごし

どうなっていようと

私にはどうでも良く関係がない。

だが、彼女は違う。

彼らは関係ないと言いながら

心では家族であることを認め

未だ傷つき、心を痛めている。

切れない絆、血の繋がり

紛れもなく彼女の家族である。

その事実だけを見れば

私も無下にはできない。

渋々、関わらなければならない。



知らず溜息が洩れ出ていたようで

助手席の彼女から

心配げに声をかけられ

ほんの少し、体というよりも

心が軽くなったような気がした。










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「着いたな」



『・・・変わってない、なぁ』







車から降りて見上げるように

静かに彼女が見つめる一軒の家。

明らかに大きい家であるここは

来る途中に道を尋ねた時

代々この地域の地主であり

取り纏めているという。

きな臭さや面倒事の香りが

とてつもなく充満している。



緊張からか、それとも別の感情からか。

体を強張らせる彼女に視線をやり

そっと肩を抱いてやると

ビクリと体を震わせて

私を振り返ってきた。







「・・・私がいる」



『・・・はい』



「・・・行くか」



『はい』







肩に回した手を外して

次に彼女の左手に指を絡め

強く握りしめた。

安心させるように

誰が何と言おうと

彼女は私のものであると

そう、知らしめる為に。



彼女の震える指先がゆっくりと

インターホンを押した。

響いたベルの音に

微かに誰かが出て来る気配が感じられた。









to be continued・・・


 

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