Black Jack

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『先生・・・』



「・・・・・・」







今にも泣きだしそうな

悲痛な表情で見つめてくる彼女に

この家の者達への、自身への

苛立ちを膨れあがらせた。

知世の性格を考えたからこそ

あえて姉に金を渡したことは

言わないでいたんだ。

それなのに、こんな形で

彼女に知れてしまっては

傷つくに決まっているんだ。

まさに、こんな風に・・・。







『ぁ・・・わ、たし・・・

私、の・・・せい・・・』



「そうよ、全部あんたのせいよ」



「ふん、自分は悪くないなんて

まだ思ってたのか?

自分勝手にも程があるだろ!

自分の親を死に追いつめて

何も知らない顔して、被害者面して

のうのうと生きて・・・ふざけるな」



『・・・・・・

ごめん、なさぃ・・・っ・・・ふ、ぅ

・・・ごめんな、さい・・・先生』







俯いたまま肩を震わせる彼女が

謝罪を告げたのは、私に対して。

驚きつつ彼女を見つめていると

小さく私の手を握り、ポタリと

滴をこぼして。



ああ・・・やはり、私は歪んでいる。



彼女の涙も、傷ついた心も

今感じているであろう痛みも

悲しみも全て。

それが私を想うが故のものと

そう思うと、私はこんなにも

喜びを感じてしまっている。

今の彼女全てで私への想いを

表してくれているのだ。

愛おしく感じないはずがない。



俯いてしまった知世と

黙ったままの私に対して

父親と姉、叔父夫婦が

まだ何かを言っていたので

いい加減に黙ってもらおうと

口を開きかけた、その時。







「いい加減にしなさい!」



「「「「っ!?!!」」」」



「・・・・・・」



『・・・っ・・・』







口火を切ったのは、彼女の祖母だ。

今まで静かにこの場の成り行きを

只々見守っていたのだが。

静かに見開いた瞳を

まっすぐに彼女に向けた。

そして、周りの4人へ語りだした。







「先程から黙って聞いていれば・・・

自分の娘に向かって

人殺し呼ばわりなんて

どうすればそんな言葉を

投げつけられるのですか!

貴女もですよ愛菜。

あの母親は自殺したのです。

精神的に追いつめられていた事は

知っています。

それが、知世が少なからず

関わっていることも」



『っ・・・!!』



「それでも!

知世を売ったのは

父親である貴方とあの母親

そして、愛菜に他ならない。

違いますか?」



「っ・・・だが・・・」



「言い訳など見苦しいですよ。

そもそも虐待をしていた

貴方達3人に今の知世と

そちらの先生にとやかく言う

権利は全くありません。

自分たちの犯した罪を

いい加減に認めなさい!

何の為に貴方達をこの家に

住まわせていると思っているのですか」



「っ・・・」



「ははっ・・・本当だぜ、兄貴」



「貴方もですよ!」



「え?」



「兄弟とはいえ、他の家庭の事情を

面白半分にとやかく言うものでは

ありません。

ましてや、貴方達夫婦の場合

自分達へ火の粉が降りかからないよう

恐れてのことかもしれませんが

それでも、知世を

侮辱するような発言をするのは

違うのではありませんか?」



「くっ・・・」







彼女の祖母の言葉に

あれだけ好き勝手に話していた

彼ら4人が何も言えなくなった。

これだけはっきりと言われてば

当然かもしれない。

聞いている私としても

少しはすっきりとした。







「知世」



『・・・はい』



「・・・私は貴女が

家族に虐げられていることを

知っていました」



『・・・え・・・』



「私だけではありません。

私の主人、即ち貴女の祖父も

その事実を知っていました」



『ぇ・・・』







祖母から告げられた言葉に

知世は驚きを隠せないようだ。

今まで握られていた手に

一層の力がこめられた。

私は少しでも落ち着くならと

傍には私がついているという意味を

十分に込めて、こちらからも

きつく握り返した。










to be continued・・・



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