Black Jack

□25
1ページ/1ページ







祖母も今は亡き祖父も

私の家族事情を知っていた。

祖父母の家に遊びに来ても

変わらずに接してくれていたから

てっきり、2人は知らないものだと

そう思っていた。

でも・・・知っていたんだ。







「そう・・・知っていたんです」



『・・・そう、ですか』



「知りながら、何もできず

ただ、見ていることしか

できませんでした」



『っ!?そ、そんなことありません!

この家に来た時におじいちゃんも

おばあちゃんも普通に

接してくれていました!

だから・・・』



「・・・主人と私は

一度、貴女を引き取ることを

考えたことがありました」



『えっ・・・!?』



「ですが、その話を匂わせると

次に貴女達家族がこの家に来た時に

貴女の体への傷が増えていました。

・・・強引に進めることもできます。

それでも、家族の問題は家族で

解決すべきなんです」



「ちっ・・・」



「・・・」



『・・・』



「結果、貴女を大きく傷つけることに

なってしまいましたね」



『っ・・・』



「引き取れないなら、せめて・・・

この家に来たときには

普通に接していこうと思ったのです。

愛菜との扱いに差が出ても

貴女が困るだろうと思ったので

同じように厳しくあたりました。

それでも、そこには愛情を

込めたつもりです」







私の知らないところで

祖母と祖父がそんな風に

思っていてくれたなんて

今まで知らなかった。

知らないところで

私が知らなかった愛を

諦めて、でも心のどこかで

欲しかった愛を

与えてくれていたなんて。

それに気付かなかったなんて。



私は周りが見えていなかったんだ。

与えてくれていたことに

気付くことをしないで

ただ、私には手にできないのだと

そう思い込んでいた。

こんなの・・・父や姉に言われた

被害者面しているのと同じだ。







「知世、違うだろ?」



『っ・・・え?』







不意に握られていた手に

ぐっと力が込められ

かけられた言葉。

先生を見つめ、言葉の意味を

問うように視線を向けた。







「はぁ・・・お前さんのことだ

どうせ、向けられていた愛情に

気付けなかった自分を責めて

グルグル考えて落ち込んでいたんだろ」



『えっ!?な、なんで・・・』



「そもそも、お前さんの祖母は

見返りを求めてお前さんを

気にかけていたわけじゃない。

・・・それが何故かなんて

説明しなくても、分かるだろ?」



「・・・そうですよ、知世」



『っ・・・・・・』







見返りなんて求めていない。

ただ、気になるから。

溢れる愛情をそのまま

向ける相手へと与える。

無償の愛情。

気になるのは当然。

他人ではないから。

意識しなくても、その体に流れる

細胞と巡る血、故の感情。

決して切ることのできない

永久に続く繋がり。



私が、貴女の孫だから、だよね?

家族だから、なんだよね?



私がそのことを理解できるのは

スっとその言葉が胸に降ってきたのは。

・・・まぎれもなく

先生のおかげなんだよ。









to be continued・・・


 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ