Black Jack

□水際で二人
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『わぁあ〜・・・すごいね、先生!』



「あんまりはしゃいで落ちるなよ」



『そんな子供じゃないで・・・きゃっ!』



「あ〜・・・気をつけなきゃらめって

先生がゆってるそばから・・・」



「誰が子供じゃないって?」



『うぅ・・・ごめんなさい』







今日はピノコちゃんの強い希望で

最近できたばかりのプールへと

遊びに来ていたりする。

今までこういうと所に来たことがないので

私はピノコちゃん以上にはしゃいで

興味を魅かれるものに目が止まって。

さっきからいちいち足を止める私に

先生が呆れて溜息を吐いていたり。

結局痺れを切らした先生に

いつものごとく抱えあげられてしまった。



とりあえず、と。

ピノコちゃんは浮輪を持って

あっという間に人ごみの中へと

消えていってしまった。

そんなピノコちゃんより

うずうず、そわそわしている

私の方がより危ないと判断したのか

先生はぴったりと私にくっついている。

・・・というか。







『・・・先生?』



「何だ?」



『すっごく近い、です』



「・・・何が?」



『っ・・・距離が、近い、ですよ』



「いつもと変わらんだろ?」



『ここは外で

こんなにたくさんの人の前で

・・・いつもと同じじゃないです』







やたらと近いこの距離に

先生のシャツから覗く目の前の肌に

さっきからドキドキしっぱなし。

それに、周りをチラチラ見てるけど

何を気にしてるのか。

自分の体を見下ろして

初めて着たビキニを見つめて

小さく溜息を吐く。

最初はこんな下着のような水着を

先生の前で着ることに抵抗はあった。

でも、お店の人やピノコちゃんが

絶対に似合うからと言ってくれた。

だから、先生にも見て欲しくて

頑張って着てるというのに・・・。

先生は目もくれない。

やっぱり、私には似合わなかったんだ。

ふと、先生の視線を辿ってみると

その先には、とっても綺麗な女の人。

私と似たような水着を着て

とってもスタイルの良い人。

何だか、怒りよりもショックが大きくて。







『っ・・・泳いできます』



「おい、どこに行く」



『どこって・・・ピノコちゃんのとこに』



「勝手に一人になるな」



『だから、ピノコちゃんと・・・』



「一人でピノコの所へ行こうとしただろ」



『・・・先生がそこまで心配する程

私って、子供で頼りないですか?

一人で、何もできないって

そう思ってるんですか?』



「そういうことを言ってるんじゃない」



『じゃあ、どういうことなんですか!

・・・全然私のこと見てくれてないし

楽しそうじゃないし・・・・・・』



「・・・それは・・・」



『・・・もう、帰ります』



「!おいっ・・・」







だんだん悲しくなって

涙が出そうになり。

さすがに、先生を困らせてしまうと思い

これ以上呆れられたくなくて

そう言うと・・・。

急に先生に後ろから抱き締められた。

さっきも言ったけど

ここは外で人前なんだってば!







『先生っ・・・』



「・・・何で、そんな水着にしたんだ」



『え・・・お店の人とか

ピノコちゃんが、似合うって

言ってくれたんです・・・けど

・・・似合ってない、ですか?』



「はぁ・・・・・・似合ってる。

腹が立つ程、似合ってるさ」



『?・・・腹が立つって・・・?』



「全く、大方私に見せたいと

思って着てくれているんだろうが・・・」



『はい!』



「何で、他の男共にも見せるんだ?

さっきから向けられてくる視線に

お前さんは気付かないでいるし・・・

こっちが殺気を飛ばして

牽制してるにも関わらず

視線の数は増えるし・・・

いい加減不機嫌にもなるだろ!?」




『・・・先生・・・・・・ヤキモチ?』







つい。

つい、嬉しくて。

あからさまな先生のソレが

嬉しかったら言葉にしてしまった。

すると・・・

何だかドす黒いオーラを

背に纏った先生が極上の笑みで

私を正面に向け腰を抱え込んだ。







「知世?」



『・・・先生?・・・あのぉ』



「子供扱いが嫌なら

今から子供じゃできないことを

シようじゃないか」



『っ・・・先生、何言ってるんですか?』



「ピノコが戻るまで

まだまだ時間もあるし

お前さんを子供だなんて思ってないことを

たっぷり理解してもらわないとな?」



『・・・お話、ですよね?』



「・・・ふふっ」



『っ、いや、あの・・・

もう分かりました!!』



「ついでに、そんな格好で

二度と人前に出られないように

体に教え込んでやるからな」







ああ、最後のその台詞が本音なんですね。



結局お昼過ぎにピノコちゃんが

パラソル下に戻ってきた頃。

私と先生も戻ることができた。

フラフラになってる私を見て

ピノコちゃんが・・・。







「あれぇ?知世、ビキニは?」



「ああ・・・着れなくなったから

新しいのをそこで買ったんだ」



『っ!?』



「れもぉ、そんな上着着て

あつそ〜」



『っ、ぅ、あ』



「・・・これくらいが調度良いんだ」







きょとんとしたあどけないピノコちゃん。

その純粋な瞳が今は痛い。

上着の下の肌に散らされた赤い印も

着れなくなったんじゃなくて

着れないようにさせられたのも

全部、先生のせい。

全部、先生の策略通り。



でも・・・愛されてるって実感して

喜んでしまってる私は

先生のどれもを許してしまうんだ。












〜end〜

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