Black Jack

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『え・・・』



「何を驚いてるんだ?」



「知世、じぇ〜ったい!

似合うよのさ」







朝起きて朝食もそこそこに

先生とピノコちゃんから

行きたい場所があると言われ

3人で出かけた。

そして、着いた場所が・・・。







「きれ〜!知世、かわいい!」



『え・・・ぅ・・・あり、がと』



「先生!ろうちたの?」







今私が着ているのは

真っ白なウエディングドレス。



結婚式を小さくてもしようと

そう言ってくれた先生。

私の手持ちのお金なんてなくて

先生に払ってもらわないといけないから

ずっと、式なんて挙げなくていいと

言い続けていた。

でも、そんな私に先生は・・・

「一生に一度のことなんだ

・・・それに、私が知世に

あの白いドレスを着て欲しいと

そう思ってるんだ」

そんな風に言ってくれた。

家族になろうって

そう言ってくれただけでも

私は一生分の幸せを使い切ったって

もうこれ以上なんてないんだって

思ってたのに・・・。

私が思う以上にどんどん幸せを

投げかけてくるんだから。

ドキドキしすぎて

どうしたら良いのか分からない。



そんな感じで

今日は私の衣装合わせ。

目移りしてしまう程の

数あるドレスの中から

先生とピノコちゃんが

選んでくれたものを

幾つか着てみた。

大きな鏡に映る自分は

本当に自分なのかと疑う程に

綺麗に見えると思いたいけど。

ピノコちゃんが呼びかけても

先生は明後日の方向を見たまま。

・・・やっぱり、どんなに綺麗なドレスでも

目も当てられないくらい

似合ってないのかもしれない。







『先生・・・ごめんなさい』



「!?何の謝罪だ?」



『私、美人じゃないから

先生が思う程似合ってないですよね?』



「はぁ・・・また、お前さんは

勝手に思い込む癖は

いい加減、直さないとな」



『思いこむ、って・・・』



「ふぅ・・・綺麗すぎて

直視できなかっただけだ」



『ぁ、え・・・ぇえっ!?』



「知世、きれいで

かわいいのよさ!」



『ピ、ピノコちゃんまで・・・』







こうしてはしゃいだり

冗談を言い合ったり。

家族ってこういうものなんだって

いつもふとした時に

気付かされ、教えてくれる。

そんな二人が私には宝物で

何にも変えられない

そんな大切なもの。

ありがとう、なんて

何度言っても足りないくらい

私は感謝している。







「先生!知世が困ってゆから

ちゃんと先生が決めなくちゃ!!」



「私が?

知世が気に入ったものが

良いだろ?」



『先生、私、決められないぃ・・・』



「そんなに情けに顔をしなくても

良いだろう・・・・・・そうだな」







困り顔の先生が

仕方なさそうな素振りで

でも、一切の迷いなく

選んだドレスは・・・

一番最初に着たドレス。

一見するとシンプルなそのドレスは

良く見ると手の込んだ刺繍に

私の好きな桜を基調に

春をイメージした模様となっている。

私も気になっていたソレを

先生が選んでくれた。







「お前さんも気に入ってただろう?」



『はい・・・

でも、似合わない、かなって』



「先生が、そっけないことすゆから」



「だから!・・・照れただけだと

さっきから言ってるだろ」



『はい・・・だから、私も

そのドレスが着たいです』



「決まりだな」







着実に近づく日に

胸が熱くなって楽しみに思う。

そんなこと初めてのこと。

また一つ、先生がくれた

初めての体験。

こうして、これからも

先生がくれるたくさんの物を

数えていきたい、な。









to be continued・・・


 

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