牛蒡夢

□はじめまして、祖母です
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空「・・・なぁ、父ちゃん」



「ああ?」



飯「・・・その人は、誰なんですか?」



「俺の嫁」



空・飯「えぇええ!?」



『あ、あの・・・は、はじめまして』



天「わぁ〜・・・お姉ちゃんの髪

空と同じ色でキレイだね」



『え・・・あ、ありがとう』







え〜・・・何だかとんでもないことに

なってしまったのは何故だろうか。



惑星ベジータがフリーザによって

消滅してしまってから

どれ程経ったのだろうか。

きっと十数年は過ぎているはず。

あの爆発に巻き込まれたバーダックは

この太陽系地球という星に

飛ばされていたという。

しかも時代まですっ飛ばしていた。

そして、私も一緒に飛ばされていた。

バーダック専用の宇宙船で

無理やり別の星へと移されそうになり

私はベジータを出るまでに

爆発に巻き込まれたのだ。



そして、二人揃って生きていることに

まずは喜びあって

そして次にはここが地球だと知って

更に驚くべき事実を知ることとなる。

ここは彼の息子が住む星らしい、と。

あっさりと親子の再会を果たし

話によると孫が二人もいて

上の子は大きいらしい。



ここでの生活を始めて数ヶ月。

少しは慣れてきてはいるが

私は彼のように様々な星を

見てきたこともなければ

体感したこともない。

自身の星と惑星ベジータだけ。

だから、バーダックから過保護にも

あまり出歩かないようにと

言いつけられていた。

息子達の話はいつも家で聞いていて

でもそれでも楽しかったのだが。

ある日、はたと思ってしまった。





『私、バーダックのお嫁さんだけど

っていうことは、私おばあちゃん?』





何だろうこの複雑な気持ち。

この歳でおばあちゃん、なんて。

まあ、私の種族もサイヤ人と一緒で

若い時代が長いから年齢と容姿は

比例するわけではないけれど。

でも、それにしたって。

そんな何ともいえない気持ちを胸に

もんもんと数日が過ぎたある日。

それは突然のことだった。

息子+孫二人が訪ねて来たのだ。



そして、冒頭に戻るわけですが。







「おい、ミルク

何ガキ相手に口説かれてんだよ」



『えぇえ!?い、今の口説かれてたの?』



「当たり前だろ!!

だいたい、お前みたいな美人

そうそういねえんだ。

初対面の男と会う時は十分に

警戒しろっていつも言ってるだろ」



飯「・・・お祖父さんって

こんな人でしたっけ?」



空「こうゆうんを・・・

ああ!ノロけってんだろ?確か」



天「?ねえねえ、兄ちゃん。

“くどく”って、何?」



飯「ご、悟天は知らなくていいから!」



空「へぇ〜・・・んじゃあ

そいつ、オラの母ちゃんってことか」



『え・・・悟空さん、が・・・

バーダックの息子?』



「当たり前だろ。

こいつが息子じゃなけりゃあ

誰が息子なんだよ」



『だって・・・』







だって、だって!

悟空さんも悟飯くんも悟天くんも

バーダックに似てるよ?

特に悟空さんと悟天くんは

バーダックとそっくりだよね。

でもでも・・・信じたくなかったもん。

私まだ20代なんだよ?

それなのに・・・それなのに!

自分より年上の息子って!!

しかも孫が自分と

幾つかしか違わないって!!

しかも悟天くんなんて

私の弟でもいけそうじゃない!!







「おい」



『え?』



「全部声に出てるぞ」



『ぇえ!?』



飯「まあ、気持ちは分かりますよ。

僕もいきなりこんな若いお祖母さん

って・・・言われても」



空「オラは別に気にしねえけどな」



「能天気なお前と繊細なミルクを

一緒に考えんな」



『あ〜・・・でもぉ・・・』







とても優しくて、穏やかで。

とても良い人達ってすぐに分かった。

でも・・・それとこれとは違うわけで

自分の子供や孫だと言われても

どう受け止めれば良いのか・・・。



すると、急に服の裾を

引っ張られて。

思わず見下ろすと

悟天くんが少し不安そうに

私を見上げていた。







『どうしたの?』



天「お姉ちゃん」



『ん?』



天「僕達のこと、キライ?」



『え・・・』



天「お父さんね、すっごく強くてね

とってもカッコいいんだよ。

それでね、兄ちゃんもね

強いし頭もいいしね、優しいから!

僕もね、これからいっぱい

修行して強くなるから

お父さんや兄ちゃんみたいに

なれるように頑張るから

・・・だから・・・・・・

きらわないで?」







・・・嫌うはずないじゃない!!

何よこの子!!

何よこの可愛さ!!

トキメキを覚えた私は

思わず悟天くんを抱きしめていた。







『嫌いじゃない!!

嫌いになんてならないよ!!

悟空さんも悟飯くんも悟天くんだって

み〜んな、私の家族だよ!!

私の息子と孫なんだからね!!』



天「わぁ〜!ありがとう!!」







ああ・・・いいかもしれない。

そうよ、家族が増えるって

そう思えば良いんだ。

だって、あれこれ悩んだって

仕方がないし。

だいたい、若いおばあちゃんって

何だかカッコいい気がする。

それに・・・何と言っても

私が愛してやまない彼の

大切な息子と孫なんだ。

だったら、私が愛さないで

どうするのよ。



そんな覚悟にも似た決意を胸に

悟天くんの笑みに

私も思いっきり笑顔で返した。







飯「あ〜あ・・・ミルクさん

悟天に騙されちゃって・・・」



空「騙す?何のことだ?」



飯「自分の涙に大人が弱いって

ちゃんと分かってるんですよ」



空「そ、そうなんか?」



「んなもん、見てりゃわかるだろ。

ちっ・・・あのガキ・・・

ベタベタとミルクに触りやがって」



空「・・・なあ、アレも計算か?」



飯「いや・・・アレは違うと

思います・・・たぶん」







まさかこんな会話がされているなんて

私は全く気づきもしなかった。





この地球での生活も

悪くないかもしれない。

悟空さん、悟飯くん、悟天くん

三人に会ってそう思えたよ。

バーダック、よかったね。

こんなに良い息子と孫がいて。









〜END〜



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