牛蒡夢

□寄り添う証
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『おかえりなさい!バーダック』



「・・・・・・ああ」







今回の遠征は大したことはなく

予定よりも二日も早く帰還した。

そして、報告は一緒に向かった

他の奴らに任せて

さっさと自室へ戻ってきたが。

忘れていた。

コイツの存在を。



そんな気は更々なかったが

何故かミルクを結果的に

助けたという形になってしまった。

そして、俺がその身を預かっている。

そう・・・俺が飽きるまで。

だが、その後すぐに

今回の遠征に出なければならず

自室から出ないようにだけ伝え

出てきたのだったが・・・。



ミルクの存在など

すっかり頭から抜け落ち

いつもの調子で戻ってきた。

すると、少し高めの

透き通ったような声音に

出迎えられた。

驚く俺にそのまま

体当たりするかのごとく

駆け寄って来ながら。







「大人しくしてたか?」



『はい!

お洗濯とお掃除も毎日しました!』



「毎日?」







そう言われ室内をみると

元々物がないものの

埃っぽさはなく

どこか明るさまであるような

清潔感がただよっている。

ついでに部屋の片隅には

溜めておいた洗濯物が

綺麗に干されていた。

思っていたよりもしっかりと

言いつけを守っていたらしい。



ぐるりと室内を見渡してから

視線をミルクに戻すと

何故かキラキラした瞳で

俺を見上げていた。

そわそわしながら

何かを待つようなその姿勢。

訳が分からず睨みつけるように

じっと見つめていると。

ウズウズしだして

そこで・・・ああ、と。

やっと理解した。



言いつけを守って

しっかり仕事をした、と

そう報告をしたコイツ。

そして何かを待ちわびている。

今の俺とコイツの関係は

云わば、主人と奴隷・・・

いや、ペットか?

まあ、つまりだ。

褒めてくれ、ってことだろ?

今のコイツに耳と尻尾が生えてりゃ

絶対に耳をおっ立てて

尻尾をぶんぶん振ってんだろうな。



そんな姿を想像して

柄にもなく吹き出しそうになった。

お前・・・似合い過ぎだろ。










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