牛蒡夢

□寄り添う証
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『?バーダック?』



「ああ・・・・・・

良い子にしてたみてえだな」







見上げてくるミルクを

笑いを堪えながら

頭をワシャワシャと撫でてやった。

すると、戸惑い気味にも

嬉しそうに笑っていた。



何だ・・・この気持ちは。

普段よりも早くなる鼓動に

むず痒いような、温かい感じ。

初めて感じるこれは

トーマ達、気を許せる仲間に

対してのものと似ているが

全く別物だと分かる。

だが、これを何と呼ぶのか

それが分からない。







『バーダック、ご飯食べますか?』



「ああ、そうだな」



『じゃあ、好きな物教えて下さい!!』



「好きな物?・・・って、俺のか?」



『はい!お口に合うか分かりませんが

頑張って作りますから』







相変わらずニコニコ俺を見上げる

そんなミルクに

何故か思わず溜息が洩れ

とりあえず何でもいいから

大量に作るよう言いつけて

俺はシャワーを浴びることにした。







「・・・へぇ・・・味は悪かねえな」



『ホントですか!?

良かったぁ〜・・・』



「次からはもっと量を多めに作れ。

今回みてえに待たされちゃあ

我慢ならねえからな」



『まさか、こんなに食べるなんて

思わなかったので・・・

でも、大丈夫です!!

次からはい〜っぱい作りますね。

今日の晩御飯は任せてください!!』



「・・・・・・ああ」







何がそんなに嬉しいのやら。

俺が何か言う度に逐一感情を

これでもかと表情に出してきやがる。

まあ、無意識になんだろうが。

俺ががっついてる間も

ニコニコ黙って見てるし。

落ちつかないが、嫌悪はねえ。



食器を片づけるミルクを

満腹になった俺は

ソファーに体を預けながら

ただジっと見つめていた。

何だ・・・この馴染みようは。

まるで、ずっと前から

こうして過ごしていたような。

不思議な感覚を持て余しながら

ふと、今日の戦利品を思い出した。







「ミルク」



『はい?』



「ちょっと来い」



『?は〜い』







何の疑いもなく俺の傍にくると

ソファーに、じゃなく

俺の足元の床に座り込んだ。

何でそんなとこに、と

言葉が喉まで出かかったが

とりあえず渡すもんを

渡してしまうことにした。







「ん」



『・・・・・・?』



「どうした?」



『え・・・?・・・・・・私、に?』



「他に誰がいるんだよ」



『で、でも・・・あの・・・

私、もらっても・・・?』



「いいから、さっさと受け取りやがれ」



『っ・・・はい』







渡したのは服とアクセサリー。

どれも今回の遠征先で手に入れた物。

服はミルクの髪と同色の水色で

肩ひもはグラデーションになり

濃い青から白に近い青のひもが

幾重にもなっている。

アクセサリーはピアス。

雫型のラピスラズリが付いている。

服もピアスも見た時に

ミルクに似合うと思った。

その時はミルクの存在を

覚えていたからカプセルにしまった。

その後は戦闘に入って

興奮した状態のまま記憶の彼方に

葬ってしまっていたわけだ。



受け取った瞬間は困惑してたが

次には嬉しそうに笑ってやがった。







『これ・・・着替えても良いですか?』



「ああ」



『わぁ〜!!』



「・・・っ!?なっ・・・おまっ」



『え?』



「何ここで脱ごうとしてんだ!!

向こうの寝室で着替えてこい!!」



『あ、はい』







パタパタと寝室に入っていた

その姿を見送った後。

一気に脱力してしまった。

アイツには警戒心ってもんがねえのか?

っつうか、この俺が

何でこんな心配をしなきゃならねえ。

全くもって意味がわからん。

はあ・・・と、また溜息を吐くと

ちらっと寝室のドアの隙間から

顔だけを覗かせてミルクに気づいた。







「・・・何してんだ?」



『ん・・・何か、この服・・・

キレイ過ぎて、似合ってるか

心配で・・・』



「いいからさっさと出てこい。

見なきゃ似合うかどうかも

分かんねえだろうが」



『・・・はい』







出てきたミルクに俺はまた

目を瞠ることとなった。

似合うか、何て心配してやがったが

んなもん無駄な心配だ。

だから思わず

らしくない言葉が出てしまった。







「似合ってんじゃねえか・・・

綺麗だぜ」



『え・・・』



「・・・・・・何だ?」



『い、いえ・・・嬉しい、です』



「・・・おい、ピアスはどうした?」



『ここに・・・あの、私

ピアス付けたことないんです』



「だろうな・・・けど、これは

しっかり付けてもらうからな。

何せ、お前が俺のもんって証だからな」



『証?』



「ああ・・・付けてやるから

ここに座れ」







不安げなミルクの腕をひいて

自分の隣りに座らせた。









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