牛蒡夢

□抑制のない事実
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※歪な世界の美しさ・続





「バーダック!

あんた、異星人の女囲ってるって

噂が流れてんだけど!?」



「どうなんだ!?バーダック・・・」



『っ・・・!?』



「・・・・・・てめぇら・・・」







遠征から戻って来て

自室でのんびりミルクと

過ごそう、なんて

柄にもねえこと考えてっからなのか。

思いもよらないタイミングで

アイツらが殴り込んできやがった。



最近の習慣となりつつある

俺が帰ったら真っ先にミルクが

俺に抱きついてキスをすること。

恥ずかしがってはいるが

離れてる間の寂しさもあり

俺が促さなくてもミルクから

積極的にしてくれる。

それがたった一日だろうと

俺と過ごせない夜は

寂しさと孤独で堪らなくなる、と。

そんな可愛いことを言うコイツを

悲しませたくねえと思うのは

当然のことだろ?

だからこそ、俺は帰還後は

真直ぐに自室へ向かうようにしている。

俺自身も一刻も早くミルクに触れて

抱きしめたいと思っているから。



それを・・・

今目の前にいる奴ら。

トーマとセリパの乱入により

あっけなくぶっ壊された。







「あ〜・・・」



「・・・・・・・・・・・・」



「なあ、悪かったって。機嫌直せよ」



「・・・・・・・・・・・・死ね」



「ひどっ・・・!?」



「っていうか、遠征から戻って

最初にすることが女のご機嫌とりって

バーダックも地に落ちたもんだね」



「・・・んだと?

もう一回言ってみろよ・・・ああ!?」







俺の機嫌の悪さに

困惑するトーマを余所に

キレたセリパと言い合う。

っつうか、人ん家に入る時の

礼儀ってもんを知らねえのか?

許可無く入って来る奴を

侵入者っつうんだよ。

惑星ベジータに侵入してきた奴を

俺達はどうする?

もちろん即排除するに決まってんだろ。

だったら、俺が今取るこの行動は

何ら間違っちゃいねえんだよ!!



果てない言い合いに痺れを切らし

相手がセリパだろうが何だろうが

手が出そうになった・・・が。







『・・・あ、あのぉ・・・』



「「え・・・?」」



「・・・・・・・・・何だ」



『えっと、お茶を淹れたので

良かったらどうぞ。

バーダックは渋めですよね?』



「「「・・・・・・・・・・・・」」」







サイヤ人が二人。

言い合いといっても

かなりの迫力はあるはずだろうし

ましてや互いに手が出る寸前だった。

そんな中、へらっと笑いながら

茶をすすめてくるミルク。



・・・全く、ある意味大物だな。



気が削がれて

癖となった溜息を

盛大に吐き捨てて。

どかっとソファーに腰を沈めた。

そんな俺を見て

セリパもまた、ふぅと一息吐き

トーマの隣りに座った。

そんな俺達を見て

またもやニコリと笑みながら

ミルクがテーブルに

茶の入ったコップを並べていた。







「で?その女は?」



「・・・俺のもんだ」



「それは分かってるから

名前は?どこの星の娘なの!?」



「ちっ・・・だから、何で

てめぇらに教えなきゃなんねえんだよ!」



「俺達は仲間だろ!!」



「仲間だからって

何でもかんでも言わなきゃなんねえって

決まりやルールがあんのか!?」



『・・・バーダックさん・・・』



「何っ・・・・・・何だ?」



「「・・・・・・・・・」」







喧嘩っ早いこの俺が。

ミルクに名前を呼ばれただけで

気を鎮めることができる。

だが、それでもトーマ達に

コイツのことを話す気は

全くもってない。

今、俺の腕に触れながら

心配げに見上げてくる

ミルクを見つめていると。

より一層、誰にも言いたくねえって

気持ちが強くなっていく。

俺が軽く舌打ちしたのと同時に

目の前の二人が同時に声を出した。







「ああ!!分かった〜・・・

くすくす・・・なぁんだ〜」



「・・・・・・・・・んだよ」



「バーダック・・・

お前、子供みてえな独占欲丸出しって

・・・そんな一面があったのか」



「うるせえ!!

人がブチ切れてる姿見て

何分析してやがんだよ!!」



『?独占欲・・って?何に対して?』



「「え・・・?」」



「っ・・・お前に決まってんだろ!!」



『え・・・えぇえ!?

わ、私?な・・・な、な・・・』







ああ゛〜・・・ったく。

何なんだよ、これ。

っつうか、俺は一体何に苛ついて

何に腹立ててんだか・・・。



ミルクの真っ赤になった顔と

あわあわ焦ってる様子を見てると。

だんだん、苛ついてんのが

馬鹿らしくなってきた。

急速に消え去る苛立ちに

再度大きく溜息を吐くと

トーマとセリパが大笑いし始める。



ったく・・・勝手に笑ってろ。



完全に笑われているが

頭上に?を飛ばしまくる

ミルクを見やり

ああ・・・可愛いなぁ、と。

己の心に素直になってやろうと

そう決めた途端。

目の前の二人とかこの状況が

本当にどうでも良くなった。







「ミルク」



『え・・・・・・んっ!?』



「「!!?!」」







細っこい腕を掴んで

俺の腕の中に抱き寄せながら

その美味そうな唇に喰らいついた。

見せつけるように

何度も角度を変えて

どんどんその深みと濃度を増して。

十分に時間をかけた後

ゆったり離れてミルクを

ぐいっと抱きしめた。

二人に視線を向けながら

自身の唇を舌で拭うと

ついに開き直ることにした。







「ミルクは俺のもんだ。

どんだけガキくせえって言われようと

誰に何といわれようとな

手離す気も譲る気も更々ねえんだよ!!」







俺の言葉に悶えるミルクと

唖然とする二人。

だが、言った言葉は

嘘偽りねえ俺の本心だ。







「・・・お前って・・・

そういう奴だったんだな」



「まあ・・・今まで本気の女が

いなかったって・・・こと、でしょ」



「これで、お前が俺のもんだって

知らしめることができたな」



『っ・・・紹介するなら・・・

普通に紹介してほしい、ですよ』







そう言ったミルクは

その後、コイツが言うところの

普通の自己紹介をしていた。







〜END〜



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