牛蒡夢

□知らない距離
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注)微グロ的な内容です





まだ薄暗い室内。

気だるい体を起こして

早朝からの遠征への準備をする。

隣りで眠るコイツを起こさねえように

できるだけ静かに気配を殺して。

こんな風に気づかうのはコイツだから。



本当の意味でミルクと

想いを曝け出して

その細っこい体をこじ開けて。

俺はコイツを手に入れた気でいた。

もう、誰にも奪われない

俺だけのミルクだと。

そう思っていた・・・が。



何故かいいようのない寂しさを感じる。

こうして触れることができる。

触れられる距離にあるのに。

それでも、何とも言えない寂しさを

虚しさを拭えない。

コイツからの想いを言葉で聞いても

行動で示されても。

心が満たされることがない。

いつも、何かを渇望している。



それが何なのか判別もつかない

その現状にまた苛立つ。

まるで、ミルクへの気持ちに

気づく前の時のような。

あの、焦燥感、苛立ち。

ぎりっと奥歯を噛みしめ

身動いだミルクへと視線を向けた。

穏やかな寝顔を見つめ

ほんの少し和らいだ気持ちも

また、すぐに黒い何かに覆われる。







「・・・・・・・・・いっそ」



『ん・・・』



「っ・・・!?・・・・・・ちっ」







ジワリと滲んだ己の狂気的な欲に

改めて俺は戦闘民族なのだと

気づかされたような、気がした。

大きく溜息を吐いて

とりあえず後数十分で出発だ。

それまでにシャワーをあびて

眠気を覚まさねえと。



そう・・・今は寝起きで

思考がまともな状態じゃない。

だから、妙なことを考えるんだ。

普段は何でもない。

コイツを想うことだけで

コイツのことだけで頭も心も

全部が一杯だ。

だから・・・さっき浮かんだのは

一種の、気の迷いだ。

それを望んでるはずがない。







コイツの心臓を喰らいたい、なんて。







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