牛蒡夢

□始まりの決定打
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「・・・大丈夫か?」



『ぅ・・・うん・・・』







真っ赤に腫れた目に

濡らしたタオルをあてながら

後ろから抱きしめてやる。

泣かした。

散々泣かした。

どうしようもない当たり前の事実。

俺とコイツは別々の人間で

一つになるなんてことは

あり得ないことで。

その事実が俺たちを

どうしようもなく寂しくさせた。



こんなことに悩む、なんて。

俺じゃねえみたいで・・・

苦笑が零れてしまった。







『?どうしたの?』



「いや・・・昔の俺じゃあ

考えられねえな、ってな」



『昔の、バーダック?』



「ああ」



『昔のバーダックって

どんなだったの?』



「どんなって・・・・・・

知りてえか?」



『うん!知りたい!!』







キラキラした笑顔で

期待感溢れるその視線に

俺はどうやら弱いようで。

こんな風に見られると

コイツの言うことを何でも

聞いてしまう。

そんな部分も

変わったところかもしれねえな。







「昔、っつてもなぁ・・・

お前と出会った頃と

そんな変わらねえな」



『そうなの?』



「ああ・・・変わったのは

お前と暮らすようになってからだ」



『え・・・』



「俺は、基本気を許した奴じゃなけりゃ

深く関わろうとも思わねえし

興味も持たねえ。

だから、サイヤ人の中でも

関わりの差は激しかったりするな」



『そうなんだ・・・

みんな、バーダックに話しかけるから

中心にいて人気者なのかなって

思ってたんだけど・・・』



「人気者って・・・

ある意味目立ってんのかもしれねえが

明らか良い目立ちかたじゃねえよ」



『そっか・・・』



「だいたい、サイヤ人の仕事自体

お前に話せねえような内容だ。

星を制圧したり・・・

お前の星だってそうだろ?」



『・・・うん』



「だから、不思議なんだよ。

お前が何で俺を好きになったのか。

普通仇の同族なんか

良くは思わねえだろ」







こんな風に話したことが

今まであっただろうか。

多分、なかった。

サイヤ人のこと、昔のこと

俺自身のこと・・・。

こうやって面と向かって

互いに話したことがなかった。

そうだ・・・長く一緒にいる癖に

知らないことが多すぎる。

俺だってミルクの星のこと

どんなふうに育って

どんな家族がいたのか。

そんなコイツの過去を俺は知らない。

それはコイツも同じだろう。



そんな話をしてたからか

つい、ずっと胸の奥で

疑問に思ってたことが

口をついて出た。





何で、俺だったのか・・・。








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