final fantasy

□溢れた雫、冷めない心
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木々に覆われた周囲を見渡しながら

意識は空から降る温かい雫に向いていた。

ぽつっ、ぽつっと小さかったそれは

瞬く間に大粒となり降り注がれた。



濡れて張り付く衣類が

纏わりつく感覚に

うざったさを感じながらも

その生温かい温度は

何故か心地よく思えて。

まるで、彼女に抱き締められている

その感覚に似ている気がする。







「ぁ・・・早く帰って来いって

言ってたな・・・」







デリバリーを休業して

数日間、彼女とゆったりとした

特別な時間を過ごそうと

最近できたリゾート島へと来ていた。

こじんまりとした島全体に

七つのコテージが建てられている。

コテージは一つ一つ

外観も内装も違っていて

どれもが干渉されないように

それぞれ独立していて

隣り合っているといっても

他のコテージとは距離が

ふんだんにとられている。

中でも島の中心にあたる

今回予約のできたコテージは

他のどれもと違い特別感がある。

他6つとは木々を覆うようにして

隔離されているから

恋人と二人きりの世界、を

実現できる空間となっている。

“小さな恋人達の楽園”として

大人気で通常予約をとるのが難しい。

今回は本当に運が良かった。

彼女が好きそうなところだったから

・・・いや、単に俺が彼女と

二人でいたいと思ったからだな。



普段二人で暮らし、二人で過ごしている。

でも、誰にも干渉されず

そこにあるのが互いだけという環境

生きる全ての欲求を満たし

彼女の笑顔と示される愛情だけを

ただ、体と心で感じる日々。

それはとても退廃的で、怠惰的

でも・・・とても魅力的な日々。

期間限定のその生活を

満喫して何が悪い。

思う存分、彼女を満喫したいんだ。



スコールに打たれながら

彼女を思い返して

早く戻って来て欲しいと言っていた

彼女に会いたくなって。

急いでコテージへ戻ろうとした。

すると・・・。







「あ、クラウド!」



「!何してるんだ!?」



「何って、クラウドの帰りが遅いし

スコールが降ってきたでしょう?

傘も何も持ってなかったから

迎えに来たんだよ?」



「・・・じゃあ、何で

何も差さずに来てるんだ?」



「ん〜?

ここが南国だからかな

雨の雫が温かいでしょ?

濡れるのも良いかなって思ったの

ふふっ」



「はぁ・・・ふふ、じゃない」



「そう言うクラウドだって

びしょびしょでしょ?

ね、早く戻ろう」



「ああ」







そう言うと当たり前のように

スルリと俺の腕に

白く滑らかな腕を絡めてきた。

彼女が今着ているものは

淡い水色のビキニの上に

白い薄手のワンピース。

俺と同じように濡れているのだから

彼女も衣類が体にべったりと

張り付いて透けている。

そんな状態で腕を絡めて

体を寄せてくるもんだから

むらぁっと欲が膨らむ。

しばらく耐えながら歩いて

コテージが見えてきて。

そこで、俺の我慢は限界に達したようだ。







「クラウド、タオル持って・・・きゃっ」







入口で彼女がそう言うよりも先に

彼女を抱え込み室内へと雪崩れ込んだ。

雨と群れた匂い

彼女自身の甘い香りが

絶妙に混じり凄くそそる。

次第に上がる息を

そのまま彼女の耳元に吹きかけると

ふるっと体を震わせ

耳元だけでなく首筋から胸元まで

赤く染め上げるその様が堪らない。







「んっ・・・待って、クラ・・・あん」



「はぁ・・・待てない」



「ん、ぁ・・・ち、がっ・・・

ふぅ・・・あの、ちょっと待って!」



「・・・何なんだ」



「・・・クラウドに見て、欲しいの」







そう言って彼女に手をひかれ

向かったのは寝室。

しかし、そこは昨日来たばかりの時とは

様相が変わっていた。

ベッド横には俺が好きな

あの教会で彼女が育てている黄色い花が

綺麗に飾られていた。

それから、ベッドの上には

青色の袋にリボンのついた

所謂、プレゼントが一つ。







「エアリス?」



「ん・・・お誕生日、おめでとう」



「え・・・ぁ」



「ふふ、今年も忘れてたでしょ?

自分の誕生日」



「歳をとるだけの日なんて

覚えてるはずないだろ」



「そんな言い方ないでしょ〜?

私の誕生日は覚えてくれてるのに」



「エアリスは特別だ。

忘れるはずがない」



「ん、ありがと。

だから、私もクラウドの誕生日

忘れたりしないんだから」



「・・・」







妙に照れてしまった俺は

素直に礼を告げられなくて。

でも、彼女に小さく“ありがとう”と

零した言葉はしっかり届いたようだ。

彼女に促されベッドにある

プレゼントを開くと

小さな箱が入っていた。

その箱を更に開けると

中にはピアスが入っていた。

シンプルなそれは海のように

深い青色の石が埋まっている。







「クラウドの色って

それを見つけた時に思ったの」



「・・・ありがとう」



「ん?ん〜?

クラウド、照れてる?」



「っ・・・うるさい」



「ふふっ、こんなに一緒にいて

ずっと一緒にいるのに・・・

いつまでも私に照れてくれるんだね」



「当たり前だ・・・

たぶん、慣れることも飽きることもない

ずっと俺は・・・」



「・・・・・・俺、は?」



「・・・エアリスに恋してる」



「うん・・・私もね

クラウドにずっと恋してるよ」







ふわりと笑う彼女が愛しくて

少し性急に抱き寄せて

ほぼ無意識に濡れたワンピースを

脱がせていた。

体から剥がしていく感じは

普段よりもヤラしく思えて

より煽られた。

すると彼女の指先が

俺の服にもかかり

脱がされた。

互いの衣類が足元で丸まって

床に小さな水たまりができてるのも

今はどうでも良くて。

ただ、目の前の愛しい人と愛し合いたい

それしかないんだ。



南国の囲われた

期間限定の二人だけの楽園。

情熱的な愛の交わし合い。

常よりも大胆に淫靡に、神秘的に

二人の時間はまだ、続く。











〜END〜


 

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