ワンドオブフォーチュン

□栄養補給的、な。
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二人だけの朝を迎えるようになって

早くも一週間が過ぎようとしている。



寮を出ての二人だけの生活に

不安と、同じだけの喜びと

ドキドキ感を感じていた。

ユリウスも同じだったみたいで

この部屋に来て最初の夜

とても照れくさそうに言った。





『なんだか・・・

新婚さん、みたいだね』





思わず赤くなってしまったけど

私も同じことを思っていた。

ユリウスと恋人になって

この三年でいくらか料理も

できるようになって。

まさか、こうして

毎日私の料理を大好きな人に

食べてもらうようになるなんて

思わなかったから、本当に幸せ。



ただ・・・

毎日一緒ということは

つまり、学校をのぞけば

本当にずっと一緒にいるということ。

学校でだってほとんど一緒だけど

夜もずっと一緒で

朝もずっと一緒で

二人で登校する、なんて。

なんだか照れてしまう。

それに、何の隔たりもなくなったから

だと言ってたけれど・・・。

ユリウスの愛情表現が

激しくなってしまって。



今だって、そう。

お風呂からあがって

次に入ったユリウスを待っていると

思いの外、早くにあがってきた

ユリウスにぎゅっと

抱きしめられていて。







「あの・・・ユリウス?」



「どうしたの?ルル」



「っ・・・あの、ね?

・・・こんなに、くっついてたら

ね、寝むれない、と思うの」



「うん・・・そうだね」



「だから、ね?

少しね、離れて、ほしいかなぁ

・・・って、思ったんだけど」



「やだ」







さっきからこの繰り返し。

抱きしめられることが

嫌なわけじゃない。

むしろ私だって嬉しい。

でも、こんなに身動きもとれない

ましてや後ろから抱きしめられたら

顔だって見えないのに。



まわされた彼の腕にそっと触れて

顔だけで後ろをチラリと見ると

私の肩に顎をのせて

「ん?」と穏やかな笑みを

浮かべている。

最近また大人びたユリウスの

硝子一枚通したその瞳に弱い。

きっと、ユリウスだって

分かってるのに

わざとその瞳を向けて来る。

その笑顔だって反則。

いつもの優しいものとか

無邪気なものとかともまた違う。

見守ってくれているような

包み込んでくれるかのような

そんな温かい、大人びた笑み。

そんなユリウスを拒むのは

私にとっては至難の業。

それなのに・・・。







「っ・・・ひどいわ、ユリウス」



「え?」



「明日は、黒の塔の研究員の人と

話があるからって言ってたじゃない。

だから、早く寝て

明日に備えないとって思ったのに」



「俺に気をつかってくれてたの?」



「それなのに!

全く私の話し聞いてくれないし

寝る準備もさせてくれないし!!」



「ごめん・・・でもね?

別に明日は11時からの約束だし

そんなに早く寝ないと

いけないわけでもないよ」



「でも・・・」



「それにね?ルル」







そう言ってくるりと

私の体を反転させて

あっという間にベッドへと

押し倒されてしまった。

その早技にあっけにとられていると

何故かやたらとキラキラとした

満面の笑みを浮かべるユリウスの顔が

どんどんと近づいてきて。

そこでやっと危険だと理解した。







「ちょ・・・ちょっと、待って!!」



「何?」



「な、何じゃなくて・・・

な、何する、の?寝るんじゃないの?」



「寝るよ?ルルと一緒にね。

でも、その前に・・・

ルルを堪能しないといけないから」



「い、いけなくない!

も、もう遅いし・・・」



「まだ、10時だよ」



「わ、私っ!も、もう眠いの」



「・・・・・・」



「だから、ね?今日は・・・」



「大丈夫だよ」



「え?」



「すぐに眠気なんて飛んじゃうから」



「っ・・・!?」







本当に事も無げに

何てことを言うのだろうか。

無邪気にエッチって・・・

どういうことなんだろう。

体まで熱くなるくらいに

真っ赤になった私に

何故かユリウスはとても嬉しそうで。

抵抗の緩んだ私を

優しく抱きしめながら

さっと、眼鏡をはずして

ベッドサイドのテーブルに置くと

ほんの間も置かずして

唇を重ねてきた。

この優しいキスをされると

全部どうでもよくなって

ユリウスのことしか

頭になくなってしまう。



甘い低音の吐息が漏れて

ゆっくりと離れた時の

その表情がとても色っぽくて

思わず見惚れてしまう。







「さっき、抱き締めてた時に

ルルを充電してたんだけど

それじゃあ、全然足りないんだ」



「んっ・・・」



「だから、ね?ルル。

もっと、ルルをちょうだい」







そんな色っぽくお強請りされて

断れるはずないじゃない。



キュンとする胸の内に

そのまま成すがまま

身を任せることにして

私も、キュっと

ユリウスの胸元のシャツを

握りしめた。

すると、ニコリと柔らかな笑みのまま

彼の少し冷たい指先が

パジャマの下へと入ってきた。





ああ・・・きっと明日は

ギリギリの時間に目覚めることに

なるに違いないわ。













〜END〜


 

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