落乱

□貴方の手中に堕ちるまで
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注)トリップ夢主





『・・・綺麗な空』



「ふ〜ん、桜の世界では

ここの空と違うの?」



『っ!?ざ、雑渡さん・・・

ど、どうしたんですか?』







この世界に来てからお世話になっている

このお城の忍組頭、雑渡昆奈門。

それが目の前のこの人。

前から大好きだったりするのだけど

そんなこと本人には言えない。



夕暮れの茜色の空が

元の世界よりもとっても綺麗で

なんだか鮮明に見えた。

もっとよく見たくて

庭にまで出て見上げていると

急に背後から声をかけられた。

全く気配がなかったから

驚いてしまったけど・・・

忍組頭だから気配を消すくらい

当然かもしれないけど・・・

だからって、何も忍務以外でも

気配を消すことないでしょう?

まあ、この人の場合

私を驚かせて楽しんでいるんだと

思うけど・・・。







「仕事が早く片付いたから

桜の顔が見たくなったんだよ」



『そう、ですか・・・・・・』



「ん?何で、微妙な顔してるの?」



『・・・いえ・・・あのぉ・・・

前から思ってたんですけど』



「何?」



『組頭って、お暇なんですか?』



「・・・・・・・・・・・・何で?」



『いや、あの・・・べ、別に

雑渡さんが仕事してないとか

サボってるとか、そういうことでは

決してなくてですね・・・』



「うん、桜って

時々、人の痛いところを突くのが

上手だよね」



『す、すみません・・・

あの、私がここへお世話になり始めた

その日から・・・ずっと・・・

雑渡さん、こうして私に会いに

来てくれてるので・・・

その・・・もしかしたら

私が想像するよりも時間を

作りやすいのかな、って思って・・・』



「ふぅ・・・大変なだんだけどね。

本当は朝も夜もないくらい大変で

休む間もない程に忙しかったり

寝る間もないなんてこともあるんだよ」







飄々とサラっと言ってのけたけども

それって今まさにこの時も

だったりするの?

そう思い出したら焦り始めたのは

何故か当人ではなく私。

私は慌てて雑渡さんの腕を掴んで

中へと入ろうとした。







「え、何?どうかしたの?」



『だって、そんなに忙しいなら

こんな所でしゃべってる暇

ないじゃないですか!!』



「いや、今日はもう仕事は終わったって

さっき言ったでしょ?」



『で、でも、休む間も寝る間もないなら

早く仕事を終えた時くらい

体を休めていた方が・・・』



「・・・桜?」



『は・・・・・・い・・・』







不意に名前を呼ばれ彼を見上げると

真剣な眼差しが私を射抜くように

見つめていた。

縫いつけられてしまったように

体を動かせず、その視線に

惹き付けられたかのように

逸らすことなんてできない。

すると、今度は雑渡さんが

私の腕を掴んで

現在使わせてもらってる

すぐ傍の部屋へと私を引っ張り込んだ。












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