落乱

□参
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「そこで何してるの?」



『っ・・・!!!』



「あ、組頭!

どこにいらっしゃったんですか!!

ずっと探して・・・」



「桜?」



『ぁ・・・ぅ・・・っ!!』







突然の雑渡さんの出現に

パニックになってしまい

思わず逃げだした。

いつも急に現れるのに

全然慣れなくて。

その理由も、自分の心に気付いた今

しっかりと分かってしまう。

何、コレ。

こんなの、こんな風になるのなんて

私、今までにないよ。

こんな、顔を見ただけで

どうしようもなくなるなんて。

気付く前でさえ戸惑っていたのに

普通に接するにはどうすれば・・・。



ぐるぐると色んなことを

考えながら走っていたせいなのか

私は容易く雑渡さんに捕まってしまった。

そして、いつの間にか

庭の端にまで来ていたみたいで

近くの大木の陰へと引きこまれた。







『ゃ・・・やだっ!!』



「・・・・・・」







思わず彼の手を振り払ってしまった。

掴まれていた腕が熱い。

鼓動が速すぎて

呼吸が上手くできず苦しい。

もう・・・雑渡さんの顔が見れない。

顔だって熱くて、熱過ぎて

絶対真っ赤になってしまってる。



そんな私をよそに

注がれる視線はいつもと変わらない。

十分に間をとってから

彼の手が再び私の腕を掴み

顎を掬われ強引に視線を合わせられた。







「やだ、って・・・

私も、随分嫌われたみたいだね」



『・・・・・・』



「・・・さっき、尊奈門と

何を話していた?」



『ぇ・・・』



「・・・・・・」



『ぁ・・・』



「・・・・・・」



『っ・・・』



「・・・・・・私には

話せない内容ってこと?」



『・・・・・・・・・な、い』



「ん?」



『・・・ざ、雑渡さん、には・・・

話したく、ない・・・です』



「・・・・・・へぇ〜」







失礼なことを言ってる自覚はある。

でも、諸泉さんと話していた内容を

そのままはっきり言えるはずがない。

そんなことできない。

私の気持ちを全て吐露することになる。

そんなの、無理!!

雑渡さんに、面倒に思われたくない。

嫌われたくない。

見限られたくない。

捨てられたくない。

異端の者が馬鹿なことをって

・・・切り捨てられたくない。

見捨てられたくない。



じわりと浮かぶ滴に気付いても

止めることなんてできない。

ああ、誰かを想うことって

こんなにも醜い気持ちが溢れるものなんだ。

そんなこと、知らなかった。

これもそれも、全部、雑渡さんのせい。



すると、溢れた滴が頬を伝い

それを見た目の前の彼は

滴に唇を寄せ、吸い取ってしまうと

伝った跡を丁寧に舐めとっていく。







「・・・尊奈門とは

あんなに仲良く話せるのに

私とは二人でいるのも嫌?」



『っ・・・ち、がい、ます』



「何が違うの?

こんな風に泣いちゃって・・・

まあ、ぐずぐず泣く桜も

可愛いから良いけど」



『・・・そ、なこと・・・なぃ』



「可愛いけど・・・

おしおきをしないといけないね」



『え・・・』



「だって、私以外の男と仲良くして

あんなに親密になっちゃって・・・

私に隠し事までして・・・」



『で、でも・・・それはっ・・・』



「いくら桜でも

言い訳は聞かないよ?」



『ゃ、ぁ・・・』



「くくっ・・・ねえ?

おいたをした子には

ちゃ〜んと躾をしないと、ね?」



『っ・・・』







そう言うが早いか

あっという間に着物の

腰紐を緩く解いてしまって

意味を成さない程に前を開かれた。

ここでは当然下着なんてつけてないから

直接空気に触れてしまった胸。

あれだけ、激しく口づけていながら

肌を晒したのはこれが初めて。

抱きしめられたり、触れられていても

それだけはしなかった。

だから、どこか安心していた。

彼は、ここまではしないだろうと。







「ふふ・・・良い表情だよ。

ああ、桜の泣き顔は

どうしてこんなに興奮するんだろうね」







獲物を狙う、そんな鋭い瞳で

でも、悦楽の色を滲ませて。

彼の指がつぅっと私の肌を

柔らかい所まで撫でていった。



もう・・・誰にも止められない。








〜終〜


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