落乱

□名づけるなら、それは・・・
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宵闇が薄れ

陽の光が遠くの空を

薄く照らし始める。

木々を飛び移りながら

城へと戻る途中に

ソレは待ち構えていた。

いや・・・正確には

落ちていたと、言うべきか。







「・・・・・・女?」







あまりにも不自然に

その女はそこに横になっていた。

気を失っているらしく

ぴくりとも動かない。

近寄り顔を覗きこみながら

すぐに反応できるよう

警戒を一層強めて。



横たわったその女は

身には何一つ纏ってはおらず

周囲には何もない。

身につけていたであろうもの

所持していたであろうもの

この女が何者かを見定める為のものが

何もなかった。

だが・・・・・・・・・・・・

動けなくなってしまった。

透き通るような白い肌。

絹のようにさらりと散らばる黒髪。

細く折れそうな肢体に

華奢な体に不釣り合いな豊満な胸。

幼さが残る顔立ちと

妖艶に色香を放つ体と・・・。

知らず口角が上がるのが分かった。



ふ〜ん・・・。



羽根でも生えているのかと思う程

軽い軽い女をひょいと肩に担ぎあげ

そのまま、帰路を行く。

別に、今更情欲を溢れさせて

貪りつきたいわけではない。

愛だの、恋だの・・・

そんなことを言う歳でもなければ

一目見て心奪われ・・・何て

そんなはずもない。

あえて言うなら、これは・・・

好奇心、かな?

単なるそれではなく

強烈に、何故か興味をそそられた。







「まあ・・・うちに害成すものなら

始末してしまえば良いだけだしね」







再び口角を上げて

自身の呟きと

抱えているこの女を思い

抑えられない笑いを

小さく零した。

それを見越したかのように

周囲を朝日が照らし始めた。









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