落乱

□瞳に映ったその後は〜その奥、深くまで〜
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「どうしたの?桜」



『あ、あの・・・』



「そんなとこに突っ立ってないで

中に入りなよ」



『っ・・・あ・・・』



「・・・・・・おいで?」



『・・・は、はい・・・』







部屋の入り口で顔を真っ赤にしながら

何やらモジモジしている彼女。

何だか可愛い状態になって

今すぐ襲ってほしのかな、なんて

頭の中で悶々と考えながら。

とりあえず、入ってくるように

彼女に手を差し伸べて招き入れた。



理由なんて、分かりきっているんだけどね。



“機会を作る”って心に決めて

早くも一週間が経った。

なかなかチャンスが巡ってこず

いい加減、我慢に我慢を重ね過ぎた結果

いよいよ強行手段をとることにした。

そして・・・今に至る。







『あの・・・雑っ・・・』



「桜」



『ぁ・・・昆奈門さん』



「どうしたの?」



『何で・・・仕事終わりに

私は連れてこられたのでしょう?』



「ん〜・・・この前言ったこと

覚えてる?」



『え・・・この前?』



「そう・・・職場で

資料室で二人きりで話したでしょ?」



『あ!・・・はい、覚えてます』



「良かった・・・じゃあ、その時にね

私が言った事、覚えてるかな?」



『昆奈門さんが、言った事?』



「うん」







焦りながら一生懸命考えている

そんな桜の姿を

隣で見つめながら

楽しくて浮かれる心を

沈める術が最早分からない。



ああ・・・可愛い。

もう、可愛すぎ。



早く触れたい、食べたい。

抑えられない理性なんて

かなぐり捨ててしまいたい。

沸々と情欲を募らせていると

困り顔の彼女が見上げてきた。

一瞬、このままソファーに

押し倒してしまいそうになって

とっさに抱き締めるに留めた。







「ん?思い出した?」



『っ、いえ・・・ごめんなさい

どの事か分からない、です』



「そう・・・なら、仕方ないね

・・・・・・桜」



『ぇ・・・・・・え?』







申し訳なさそうにしている

その表情だとか

窺うような上目遣いだとか

私のシャツの袖を

遠慮がちに掴む仕種だとか。

私の言葉を覚えていない事と合わせて

もう、行動に移してしまおう、と。

抱き締める彼女をそっと

ソファーに押し倒した。







「ねえ、桜」



『は、はい・・・』



「ここがどこか分かってるかな?」



『えっと・・・ホテル?』



「ん〜・・・ホテルっぽいけど

ここはね、私の別荘で

コテージなんだよ」



『え!?』



「目隠ししてたけど・・・

ホテルみたいにエレベーター乗ったり

誰かに案内されたりしなかったでしょ?」



『・・・はい』



「じゃあ、次ね

・・・急に桜を

別荘へ拉致してきたわけだけど」



『えっ!?わ、私、拉致されたんですか?』



「そうだよ・・・

その理由は、ね?

桜を抱きたくて

堪らなくなったから

・・・凄く、欲しいって

思ったからなんだよ」



『ほ、しぃ・・・って・・・』



「“最後の男になるつもり”って

言ったでしょ?私」



『は、はい・・・』







顔を真っ赤にして瞳を伏せる

その表情が堪らない。

目の前の美味しそうなご馳走に

食指が伸びてしまう。

柔らかく、滑らかな頬を撫でると

その感触に体の中心が熱くなる。

きっと、この細く華奢な体の

どこもかしこも、こんな風に

柔らかく気持ちの良い感触なんだって

想像、というか妄想が止まない。







「私はね、機会を待つんじゃなくて

無理やりにでも作ってしまおうと

そう思ったんだよ」



『っ・・・じゃ、じゃあ・・・』



「くす・・・今から、桜を

食べるんだよ」







恐がるかなって思ったんだけど。

全身を真っ赤にさせながら

私の腕に手を添えながら

『シャワーを浴びたいです』って。

何だ・・・覚悟はもうできてるのか。



そう思ったら何だか

より愛おしくなって。

強く抱き締めながら

そっと耳元に囁いた。







「じゃあ、一緒に入ろうか」







そんな私の言葉に

一層驚きながらも

ゆっくりと頷いた。



いよいよ近づくその時に

もう、止められる自信はない。

いや・・・止めないから、ね。
















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