final fantasy

□宵闇より深い黒
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腕の中で穏やかな寝息を立てる少女。

悲しみを堪える

その悲痛な姿が

見るに堪えない為

らしくない程に優しく接していた。



大事な何かを失う。

その痛みも染まる哀しみも

全て知っている。

だが、私の知っているその感情は

この少女が抱いているような

綺麗なものではない。

まるで全てを覆い尽くすかのような

闇。黒。

漆黒ともいえる禍々しいその闇は

罪という名をもって

私の心に巣食い

今なおその存在を知らしめている。



愛する者を止められず

愛する者を救えず

ただただ

こうして禁じられた時間を

刻み続ける。

それ自体が罪であり

償うべき罪科である。



その中で生まれた

この黒い感情は

ともすれば

愛すべき者を失った

あの彼と似通ったものかもしれない。

しかしながら

彼の心の歪さを差し引いても

私程に彩られてはいないだろう。

負の意味合いしか持ちえない

この禍々しいものは

この腕の中の少女に触れることさえ

本来なら罪となるはず。

だが・・・。







「・・・今だけだ」







この腫らした目元を癒し

涙を払うことはできないが。

それでも、溢れる滴を

掬い、拭ってやることはできる。

一瞬躊躇うも

今この時だけは

この少女のカナシイ叫びを

受け止めてやりたい。

今は静かなる眠りについた

彼女に変わり

悠久なる時間を持つ私が

その悲哀、悔恨、苦痛を。

そして、せめて眠る少女が

夢見るこの時間だけは

涙を流さぬように。





私とて彼女を失くした痛みは感じる。

しかし、果たして

この少女や仲間のように

深く切り刻まれるかのような

悲しみを抱いたのか。

彼のように

絶望にも似た暗闇に

包まれてしまっただろうか。

私はとうの昔に

全てを受け入れ

全ては運命なのだと

そう捉えるようになってしまった。

彼女がライフストリームの一部となった

その事実を悼むことはあれ

涙することも

絶望することも、ない。



それは、私が人ならざる者だからか。

それとも、私という

人格が成すものなのか。

それさえ分からぬ私を

少女の温かな手が捉える。

掴まれた腕は

少しの力で振りほどけるというのに

この手を払うことを

惜しいと思ってしまった。





その思いの意味することに

一瞬の焦りを感じるも

それはこの異質な空間と

時と場所、さらには

許されざる出来事に直面した為。

故に・・・

この漆黒の心に

小さな波紋が広がった

そんな気がしたのは気の所為だ。

そんなはずがない。

あってはいけない。





この夜。

少女を腕に抱きながら

私は再度

自身の身に科せられた罪を

刻むように振り返るのだった。












〜END〜


 

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