final fantasy

□それを禁忌と呼ばないで
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いつからだろう。

私に触れるその手が

戸惑いを示さなくなったのは。



いつも私に触れる時。

必ず寸前で躊躇う彼は

それさえも自分には罪だと

そう思っていたに違いない。

何て馬鹿な考えなんだろう。

私が良いと言ってるのに

自分で自分を許せない、なんて。

何て、愚かで・・・

何て、愛しいのだろう。

こんな感情はあの頃の私には

到底理解できなかったのだけれど。



あの頃より、少しだけ

長くなった髪は

肩にギリギリつかないくらい。

背はあまりかわらないけど

胸は少し、は・・・

大きくなったような気がする。

そんなことを呟いた時に

彼はとんでもないことを口にした。





『・・・日頃の私の成果だな』





成果?どういう意味なんだよ!!

何を平気な顔して言ってるんだか。

日頃って・・・

そう頻繁に触って・・・るのか?

自分で考えながらだんだん

恥ずかしくなってきた。

今ではこんな関係にまで

こぎつけたけど。

未だに、遠くに感じてしまうことがある。

傍にいるのに

心が、視線が

私ではなくて

私を追い越して遠くへと向けられて。

そういう時、どうしようもなくて

無性に泣きたくなってしまう。







ヴ「・・・大丈夫だ。

お前を置いては行かない」



ユ「そう言って・・・

何カ月も姿見せなかったじゃん」



ヴ「・・・悪かった」



ユ「別に、謝って欲しいんじゃない。

ただ・・・心配なだけだから。

・・・心配するのも、迷惑?」



ヴ「私は何も言っていないだろ?

・・・お前に心配され喜びはすれど

迷惑など微塵も思ったことなどない」



ユ「・・・そっか・・・

・・・・・・・・・なぁ、ヴィン」



ヴ「・・・・・・何だ?」



ユ「・・・何でもない。

・・・・・・呼んで、みただけ」



ヴ「・・・そうか」



ユ「・・・・・・ヴィン?」



ヴ「ああ」



ユ「・・・ヴィン」



ヴ「・・・ああ」



ユ「ヴィ・・・ぁ」







ふいに抱きしめられた腕の中は

人外とは思えない程に温かくて。

こんな温もりを持つ彼が

罪に覆われてなどいるはずがない。

そう思うのに。

そう思うのは私や周りだけ。

彼自身は決して認めはしないだろう。

幾歳を生きながらえても

その心の闇は消えないのだと思う。

それでも闇の中に

ほんの少しでも良い。

小さな光を灯してやりたいと

そう思う私は、彼と同じ

愚か者なのだろうか?







ユ「・・・ヴィン・・・」



ヴ「大丈夫だ・・・私は、ここにいる」



ユ「っ・・・お願い、だから・・・

私を、離さないで・・・諦めないで」







危うい彼に抱きついて

私の傍にあることを留めたくて

必死に訴えた。

言葉で・・・それ以上に、心で。

彼の優しい手が私の頬に触れて

艶やかな黒髪が額にかかり

ゆっくりと近づく唇が

微かに開かれ音が紡がれた。







ヴ「・・・お前には、敵わないな」







そう呟いた彼は

私の好きな優しい頬笑みを浮かべていた。

そんな彼に満足して瞳を閉じれば

熱い程の唇で口づけられた。












〜END〜


 

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