final fantasy

□垣間見たココロ
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一戦を終えて

ガンブレードを一振りし

肩にかついだスコール。

その姿を少し離れて見ているのは

金糸の髪を揺らす少女。



同じ境遇の仲間として

皆少なからず協力し合い

僅かに壁も薄れ打ち解けてきた。

その中でも紅一点であるティナは

皆から気にかけられ

声をかけられて。

それは気を使われているのだと

そう思い込む少女は

自分がしっかりしていないからだと

いつも落ちこんでしまうのだった。

しかし、それは単なる思い込み。

皆が気にかけるのは

それなりに少女に対して

好意を持っているから。

そんな男性陣の気持ちになど

全く気づかない少女は

只々、悩むのだった。



だが・・・そんな少女を

他の皆に対してと

同じように扱ってくれる人がいた。

それが、寡黙な男スコール。

協力という言葉を、意味を

知らないのではないかと

そう思える程に一人を貫いていた。

出会ってからも

ほとんど会話らしい会話を

した記憶がない。

それでも、こうして皆で集まり

食事をしたり、休息をとったり

そんな僅かな関わりの中で

彼は少女に対して"平等"に

対応してくれるのだった。

他の皆だったら少女優先で

食事を盛ったり、好むものを寄せる。

だが、スコールならば

特別はなく同じ物を

同じだけ入れてくれる。

休息だってそうだ。

"女の子だから"

そう言われて多く

休息をとらせてくれる皆。

しかし、それは気をつかわせていると

気に病む方へとしか思えず。

でも、スコールは同じだけを与える。

他の皆の"特別"という優しさ。

スコールの"同じ"という優しさ。

少女は心の中の不思議な想いに

戸惑いながらも

核心を見出したいと思ったのだ。



スコールを見つめていたティナへ

オニオンとジタンが声をかけた。







「ティナ、疲れてない?」



「・・・・・・」



「ティナ?・・・お〜い」



「!えっ!?」



「・・・大丈夫?」



「え・・・何、が?」



「やっぱり疲れてるんだろ?

結構、戦闘続いたし・・・

ちょっと休んで行くか」







ティナのいつもと違う様子に

疲れているのだと判断した二人は

他の仲間に休息することを伝えた。

ティナは違うと否定しようとしたが

思いとどまった。

否定したとして、では理由を問われたら

何と答えていいのか分からない。

疲れていない・・・これは本当。

お腹がすいたわけでもない。

怪我をしたり具合が悪いわけでもない。

では、何か?

気がかりなこと・・・

気になる人が、いる。



チラリと先程見つめていた

彼の背に視線を向けた。

セシルとクラウドと何かを話して

幾らもしない内に二人から離れると

いつもよりゆったりとした足取りで

どこかへと歩いていった。

視線で追いかけていると

気がつけば少女の足も同じ方向へと

歩みを進めていた。










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





皆からかなりの距離を置いた所で

スコールは腰を下ろした。

岩場に背を預け空を見上げながら

深く息を吐いていた。

右腕で目を覆い隠しながら

それきり動かなくなった。



そんな様子を5m程離れた場所から

少女は見つめていた。

ずっと先陣切って戦い

その戦闘の中でも一番機敏に動き

周囲を気にかけていた。

疲労も負担もかなりのものだと思う。

少女は休んで欲しいという気持ちと

その大部分を占める想いの中に

ほんの僅かに彼の傍にいたいという

そんな想いが浮かぶのが分かった。

だが、人との関わりを

必要以上を好まない彼が

自分が傍にいることで

安らぐはずがないことも分かる。

皆の所へ戻ろうかと

そう思った瞬間。







「・・・・・・何か用か?」



「!・・・・・・ぁ」



「・・・・・・」



「・・・気づいてたの?」



「・・・それで隠れてたつもりか?」



「・・・ええ」







相変わらず同じ姿勢で

ピクリとも動かないスコールは

しかし、自分の傍にある気配には

敏感である為

少女がいることも最初から知っていた。

後ろを歩いてくるから

向こうから声をかけてくるだろうと

そう思って何も

アクションを起こさなかった。

だが、予想とは違い

自分が一息ついても

全くしかけてこない。

目的も分からずに視線だけ向けられ

いい加減居心地が悪くなり

ついにはスコールから声をかけたのだ。






「・・・・・・」



「・・・みんなのとこに、居ないの?」



「・・・休憩の時くらい

一人になりたいんだ」



「・・・・・・ごめん、なさい」



「・・・え?」







姿勢を変えないままのスコールと

拙い会話を行うも

やはり一人になりたいという

彼の想いが吐露されて。

それを邪魔してしまったと

そう感じて思わず謝罪の言葉が零れた。







「あの・・・私、邪魔しちゃったから」



「邪魔?」



「だって、スコール・・・

一人がいいって・・・」



「・・・ああ・・・

別に、あんたが居たからって

俺が休息をとれないわけじゃない」



「え・・・」



「それより・・・

俺に何か用があったんじゃないのか?」



「用?」



「だから、後をつけてきたんだろ?」







スコールの視線とが交わった。

彼はいつの間にか

少女を見つめていた。

彼の言ったことは

邪魔をしたという少女の言葉を

否定したにすぎない。

だが、少女にしてみれば

ここに居てもいいと

そう言われたように感じてしまった。

そして、彼に後をつけてきた理由を問われ

少女はそろりと答えた。







「用はね、ないの。

ただ・・・スコールといたいなって

そう思った、だけ」



「・・・・・・」



「・・・・・・」



「・・・・・・何故だ?」



「・・・・・・スコールは、優しいから」



「優しい?俺が?」



「ええ」



「・・・馬鹿言うな。

他のヤツらならともかく

俺はあんたに優しくした覚えは・・・」



「して、もらってるよ?いつも」



「・・・・・・」



「私がみんなに気をつかわれるの

気にしてること・・・

気づいてくれたんだよね?

だから、私にもみんなと

同じように接してくれた」



「・・・あんたも同じ仲間だ。

だから同じように扱うだけだ。

そこに、他意はない」



「うん・・・それでも、ね

私には嬉しかったから・・・

ありがとう、スコール」







感謝を述べられ

あのスコールが驚愕の表情を向け

少女を見つめた。

少女のはにかんだような微笑みは

スコールの心にも

少なからず衝撃を与えた。

言いたいことを言えてすっきりしたのか

少女は皆のところへ戻ることを告げた。

だが・・・。







「・・・今、食事の準備をしている」



「え?」



「今日は、早めの夕食にするらしい。

あんたの元気がないからと

オニオンとジタンがはりきっていた。

他のヤツらもだが」



「そう、なの?・・・そうなんだ」



「・・・準備が終われば

呼びに来ると言っていた」



「うん・・・じゃあ・・・」



「ここにいろ」



「・・・え?」



「別にアイツらは

気をつかってるつもりはないんだろうが

・・・どうせ戻っても

また、気にしてしまうんだろ?

だったら・・・呼びに来るまで

ここにいればいい」







ああ・・・やっぱり"優しい"人。

彼のそんなさりげない気遣いが

ぶっきらぼうで

遠まわしだけれど

それでも、彼なりの優しさが

とても嬉しい。

少女は笑みを深めて

スコールへと歩みよると

ちょこんと隣りへ座った。

地に置いた愛らしい手が

彼の大きな手に

触れるか触れないかの距離をあけて。

その僅かな距離を埋めるには

まだ、互いを知れていない気がして。

いつかこの距離を縮めることが

できるのだろうか?





会話らしい会話などなく

たまにポツリ、ポツリと

言葉を交わすだけ。

それでも、とても心地よい時間。

こんな時間をもっと

彼と過ごせたならと

心の奥でそっと願った。













〜END〜


 

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