final fantasy

□好きなのは?
1ページ/1ページ







「あっ!」



「ティナ?」



「何だ?」







前方を歩いていたティナが

急に声をあげた。

ティナの手を握るのは誰か!という

しょうもない・・・基

熾烈な争いを繰り広げているのは

オニオンとジタン。

その後方ではクラウド、セシル

フリオニールが呆れたように

見守りつつ

もし、実際に誰かが

彼女の手を握ろうものなら

即座に切り刻んでやろうと

目論んでいたりする。

その五人がティナの声につられ

前方を見つめると

いつ合流したのか

バッツとティーダに挟まれた

若干疲れの見えるスコールがいた。

その少し後ろにはウォルもいる。

あちらも気づいたようで

バッツとティーダは

嬉しそうに手を振り駆け寄ってきた。

それは、皆に・・・というより

ティナに向かってだったが。

ウォルはそんな中

熱い視線をティナへと向けながらも

未だスコールの隣りにいる。







「何か・・・珍しいっつうか

なかなか濃ゆい組み合わせだな」



「だろ?俺もビックリ!」



「今日、初めてバッツの

ありがたみが分かったッス。

俺だけじゃあの二人を相手にする

自信がない・・・」



「あはは・・・うん、御苦労さま」







バッツとティーダの失礼な発言に

誰もツッコミをいれないのは

多かれ少なかれ皆似たような

感想を持っているからだろう。

若干傷を負っていたウォルに気づいた

セシルとフリオニールは

ウォルに声をかけ

手当てをしようとしていた。

スコールは眉間の皺を深めながらも

そんなウォルに無言でポーションを

手渡すのだった。







「スコール、ありがとう」



「・・・いや、俺も気がつかなかった」



「くす、素直に受け取りなよ」



「何か、スコールって

意外に優しいよな・・・」







セシルとフリオニールの言葉を聞き流し

再度、小さく溜息を吐いた。

すると、急にジャケットの裾を

クイクイと引っ張られ

驚きつつも表面には出さずに

振り返ればティナがいた。

キュっと掴まれた裾を

引くこともできず

視線と小首を微かに傾げることで

どうしたのかと問いかけた。

すると、急に俯いたかと思えば

その小ぶりな耳が赤くなり

むき出しとなっている首元まで

真っ赤に染まっていて

あげく、何やらもじもじと

焦りを滲ませていて。

その可愛らしい仕種はどうしたのかと

問いただしたくなる程。



今まで各々話していた面々が

そんな彼女に気づかないはずもなく

その愛らしい姿に惹かれつつも

何故、スコールに対してなのか。

沸々と小さくはない嫉妬を抱いていた。







「・・・あ、あの・・・スコール?」



「・・・・・・何だ?」



「・・・あの、ね?

・・・ふわふわ、したいの・・・ダメ?」







彼女の言葉を聞き一同は安堵した。

何だ、いつものことか、と。

スコールの腰とジャケットに付いている

ファーをティナは気に入っている。

ふわふわ好きな彼女にとって

目的はスコールではなく

そのふわふわなファーで。

だから、今回も彼女の言葉を聞いて

皆は嫉妬をあっという間に縮め

また、会話を再開するのだった。







「・・・はぁ・・・・・・

あんたも好きだな」



「・・・・・・うん」



「?・・・・・・・・・ほら」







どうぞ、と言わんばかりに

両腕を軽く広げ

どこからでも触っていいという

了解の意を表した。

そんなスコールに一瞬驚くも

相変わらず頬を染めて

それでも嬉しそうに近づいていく。

いつもファーを掌で撫でたり

軽く握ってみたりと堪能するのだ。

その間ティナに拘束されるわけだが

それがスコールは

嫌ではないから困っている。

今の状況を考えると

こんな欲を抱いている場合ではないし

彼女はそんなつもりがないのだ。

己の自制のなさに呆れていたりもする。

だが、スコールとて17歳の

思春期の青年だ。

それは、至極当然の感情。



そんなことを

近づいてくる彼女を見つめながら

考えていると・・・。

彼女の手が首元のファーに触れ

いつものように撫でられるか。

そう思った時。

その細い腕はスルスルと胸元に下りて

ジャケットを掴むと

ピタリとその小さな体を

くっつけてきた。

両腕を広げていたスコールは

別段抱きしめる為にそうしたわけではない。

だが、現に今

彼女はその腕に誘われるように

身を寄せて来た。

思わぬ事態にスコールは無表情のまま

懸命に思考を巡らせていた。







「・・・・・・・・・ティナ?」



「・・・・・・?なぁに?」



「え・・・・・・・・・いや」



「・・・・・・スコール・・・

ふわふわ・・・ね?」



「・・・はぁ・・・ファーが、な」



「ううん・・・違うの。

スコールが、ふわふわなの」



「俺が?」



「うん。

・・・優しくて、温かくて

とってもふわふわ・・・」







言われる意味が今一つ分からない。

だが、彼女はどうやら今回

ファーが目的はないようで。

これは己の欲を

ほんの少し満たしても良いということか。

そう理解したスコールは

頭の回転を正常動作へと変換し

周囲から寄せられる

痛い程の殺気を感じながらも。

普段見せることのない笑みを

真っ黒に染めながら殺気へと返して

広げた両腕でしっかりと

胸にすり寄る彼女を抱きしめた。

香るのは仄かな甘い香り。

まるで野に咲く花のような

心を落ち着かせてくれる香り。

そして、腕の中の華奢な体は

力を入れれば壊れそうで

でも、壊してやりたくて。

そうして、愛しさをどんどん重ねていく。







「・・・ふわふわ、堪能できたか?」



「・・・ううん・・・もうちょっと」



「・・・そうか・・・仕方ないな」







その表情のどこが仕方ないんだ!という

周囲の面々の声が聞こえてきそうな程

スコールはあからさまに嬉しそうな

柔らかな表情を浮かべていた。

普段無表情だからこそ分かる

その小さな変化に驚きつつも

未だかつて抱いたことのない程の

嫉妬と憎悪をスコールへ抱いていた。

邪魔をしたいがティナからのその行為を

もし邪魔してしまえば悲しませるのは

誰でも予想のできること。

皆周りの出方を伺っているのだ。



そんな周囲に気づいているスコールと

全く気づいていないティナは

二人の世界を作り上げて

抱擁を楽しんでいた。







「・・・そんなに、好きか?」



「うん」



「・・・そうか」



「うん・・・スコール、好き」



「っ!?・・・そ、そうか」



「うん!」







彼女の嬉しい言葉を受けたスコールは

いよいよ攻撃を仕掛けて来るだろう

八人を相手にしても

切りぬけることができるであろう力を

己の身に感じるのだった。

片腕でより抱き寄せながら

利き手にはガンブレードが

しっかりと握られていた。












〜END〜


 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ