final fantasy

□ぴったり
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見つめる先にあるのは

ほどよく筋肉のついた

綺麗な背中。

傷跡一つないその背は

とても逞しく心強く思えて

とても愛しく思えて。







「・・・・・・どうした?」



「え?」



「・・・手」



「?・・・あ」



「急に触れてきたから、驚いた」



「ごめんなさい・・・」







無意識にその背に

手を伸ばしていたようで

彼に声をかけられるまで

気がつかなかった。

肩越しに振り返る彼の

涼やかな瞳の色と

さらりと額を滑る髪が

自分とは作りがまるで違って

とても、好きだと思う。



上手く言葉に表せなくて

表現の仕方も知らなくて。

でも、どうしても伝えたくて。

ぐるぐる巡る思考が

私を突き動かしたみたい。







「・・・いや、別に・・・」



「・・・」



「・・・」



「・・・ぁ」



「・・・ティナ」







ふいに呼ばれて見上げた時には

私の体は彼の腕に抱き上げられていた。

自分の意思で空を浮くのとは

全くちがっていて。

自分以外の力によって感じる浮力は

思いの外に驚きを伴うものだ。

それでも、相手が彼だからなのか

心に温かく広がるのは

安心感と少しの戸惑い。

このまま身を任せたい気持ちと

何故か胸がざわつく、この感じ。

間近にある彼の顔を

瞳を直視することができなくて

頬が熱を持っていくのが分かって

また、戸惑ってしまう。







「ス・・・スコー、ル?」



「・・・これなら、どうだ?」



「え?」



「触りたいんだろ?

だったら、好きなだけ触れば良い」







そう言って私を抱えたまま

テントの中に敷かれた

布団の上に座り込んだ。

彼の胡坐をかいた膝の上に

やんわりと座らされ

素肌を晒す彼に抱きしめられた。

触れ合う肌からは暖かい熱と

しっとりとした感触。

それから、彼の匂いが

今触れ合っているのが現実だと

私に認識させてくれる。



これは、何という感情なのかな。

嬉しい、に似ていて

楽しい、にも少し似てる。

でも、苦しい、も少しあって

悲しくはないのに

何故か涙が出そうで。

分からない。

分からないけど

もっと、彼とくっつきたいと

そう思ったのは確か。







「スコール・・・もっと、ね

ギュゥって、して?」



「・・・こうか?」



「うん」



「・・・」



「スコール?」



「・・・はぁ・・・何でもない」



「?そう?」







眉間が少し寄せられたみたいだけど

抱きしめられる力が強まったから

そっちの方が嬉しくて。

私も同じように広い背中に手を回して

強く抱きついた。










(多分、ティナは分かってないんだよな。

・・・思いっきり自分から

胸を押しつけてるんだが・・・)












〜END〜


 

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