final fantasy

□恋とか、愛とか
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「ねえ、セッツァーは?」







どこか焦りながら

皆の元へとやってきた

ティナが開口一番に告げたこと。

いや、尋ねたことは

ここにはいない賭博師のこと。







「さあ、見てないな。

私達とは別行動をとっているからね」



「一緒だったんじゃないのか?」



「ううん。私、ガウとリルムと

街の真ん中の広場にいたの」



「そう・・・ん?

セッツァーに何か用なの?」



「俺達でいいんなら聞くけど」







今日は様々な備品を購入すると

この街へ着いたとたん

一人でふらりと行ってしまった。

だから、誰も彼の居場所を知らないし

この広い場所で探しだすのは

なかなかに難しいこと。

だからこそ、皆は少女の為に

自分達で叶えられる頼みなら

聞いてやろうとしているのだ。







「ティナ?」



「あの・・・特に、ね

用があるわけじゃないの」



「え?」



「みんなはね

どこに行くか聞いてたけど

セッツァーは聞いてなくて・・・」



「ああ・・・まあ、アイツは

飛空挺の整備に必要な物を

買うって言ってたからな」



「そのうち帰ってくるんじゃないか?

今日は備品を買うことと

整備に費やすと言っていたからね」



「じゃあ、飛空挺で待っていたら

会えるってことね?

ありがとう」







皆が何かを言う前に

少女はとても嬉しそうな笑顔で

また、来た道を駆けて行った。

後に残された者達は

しばらく呆然とした後に

苦笑気味に言葉を交わした。







「今日中に戻って来ると

分かっているだろうにね」



「ああ・・・居場所分からねえから

不安だったんだろうけど」



「ふふ・・・

あんなに嬉しそうにされたら、ね」



「まあ、俺達もさっさと

買い物を終えて戻ってやらねえと

リルムもガウもいるからな」







少女のあの表情の意味と

あの心情の理由に気づいた

この仲間達は

初めてであろうその想いが

決して壊れぬことを願うのだった。










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





あの後、リルムとガウのことは

カイエンにお願いして

ティナは飛空挺の元へと

戻って来ていた。

周囲には何もなく

ティナは芝生に座り傍らにあった

小さな野花を見つめ

ただただ、待ち続けた。



どうして、こんなにも不安なのか。

ティナ自身分からないでいる。

ロックもセリスもエドガーも

マッシュもカイエンも

街中で買い物をしていた。

セッツァーだって今日は

買う物があると言っていた。

だから、街中にいるのは分かってる。

でも・・・はっきりとした

居場所は分からない。

そんな想いがよぎれば

今、何をしているの?

どこにいるの?

不安感が襲ってくる。

他のみんなだって

はっきりとした居場所は

分からなかったのに

そんな風には思わない。

じゃあ、どうして彼にだけ

こんな風に思うの?







「・・・分からない」



「何が分からねえんだ?」



「!セッツァー!」







急に降って来た声に

ぱっと見上げれば

そこには待ち焦がれた彼。

姿を目にした瞬間

ティナは、それはそれは

花が綻ぶような笑みがこぼれ

声をかけた彼は

一瞬の暇、見惚れてしまった。







「お前・・・もしかして

ずっとここに居たのか?」



「ううん・・・街の広場で

リルムとガウと一緒にいたの。

でも、途中でカイエンも一緒になって

私だけ先にここへ戻ったの」



「・・・何でだ?

久しぶりの地上なんだぜ。

もっと色々見て回ったり

楽しんで来りゃいいじゃねえか」







彼はそう言いながら

購入してきたのだろう

整備に使用する物を

船内に運んで行った。

その後をティナも追いかけ

一緒に船内へと入って行った。



荷物を置いて紙袋から

中の物を並べて行く。

ティナにとっては

よく分からないものばかりだが

きっと大切なものなのだろうと

触れることはせず見つめていた。







「・・・で?

何でここに戻ってたんだ?」



「・・・私も、よく分からないの」



「はあ?」



「リルムとガウと広場にいた時

今頃みんなも楽しんでるかな、って

買い物って言ってたなって

そう思い返した時に

セッツァーはどこで何してるかなって

そう思ったら、急に・・・」







言いながらまた先程の不安感を

思い出してしまったのか

少女の表情が少し陰ってしまった。

セッツァー自身も

今一つ掴み損ねていて

だが、こんな表情をされてしまえば

何だかこちらが悪いように

思えてしまって居心地が悪い。



不意に手を取られ

視線をあげる頃には

彼に手を引かれ

どこかへと連れて行かれた。

行きついた場所は飛空挺の甲板。

いつもはそこに広がるのは

一面の蒼と白。

今は野原と少し遠くに街が見える。







「・・・ゆっくりでいい。

聞いてやるから」



「・・・・・・みんなのね

はっきりとした居場所

知らなかった。

同じなのに、でもね

セッツァーのね

居場所が分からなくて

何してるのか分からなくて

そうしたら、何だかとっても

不安になっちゃって・・・」



「・・・不安・・・

何が不安だったんだ?」



「・・・分からない、の」







こんなことを話しても

きっと困ってしまうのでは?と

黙ってしまった彼を見つめ

急にまた、先ほどとは別の

不安感のような恐怖というのか

何とも言えない想いが

心を曇らせてしまう。



どんどん俯いてしまっていると

急にふわりと頭に感じる

大きな温もりに

ゆっくりと見上げた。

それは彼の手で

こちらを見てはいないけど

それでもゆったりとした仕種で

頭を優しく撫でてくれている。







「・・・もし」



「え?」



「ああ〜・・・・・・

もし、また不安になった時は

今日みたいにここにいろ」



「え・・・」



「俺はどこに居ようが

何をしてようが

必ず戻る場所はここだ」



「飛空挺?」



「ああ・・・必ずここに戻る。

だから、不安だったり

そうだな・・・不足の事態になった時

ここに戻ってろ」



「不足の、事態って?」



「ん?あ〜・・・迷子、とかか?」



「・・・迷ったり、しないもん」



「例えばだ。

とにかく、何かあった時は

ここに居ろ・・・

ここに居れば、俺が何とかしてやる」







そう言って不敵に笑んだその表情は

大空を翔るこの船のような

潔い魅力を持っていて。

また、かけられた言葉には

心へ安心感を植え付けて。

触れてくれている

この大きな温もりからは

なんだか、とっても温かくて

それで、心がキュンとなって

胸がドキドキしてしまう。





また、よく分からない

気持ちになったけど

でも、これは、何となくだけど

悪い気持ちじゃないなって。

何となくだけど、そう思った少女は

見つめる先の彼に

さっきよりも幾分

感情が表立つ、愛らしい笑みを

送るのだった。












〜END〜


 

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