final fantasy

□記憶の中の温もり
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*FF10EDネタバレ
*インターナショナル特典「永遠のナギ節」ネタバレ







「はぁ・・・」







村の人達から来るお見合いの話。

村の人達はきっと

私のことを思ってなんだろうけど

お相手の方は

大召喚士である私を欲しがってる。

そんな人ばかりじゃないって

分かってるけど・・・。

でも、私はきっと利用されてしまう。

私が拒んでみせても

きっと、私の名前だけで

利益を得てしまう。

そんなことの為に、私は・・・。







ピーーーーーーーッ・・・



「・・・綺麗な音、出せるように

なったんだよ」







考え込んだ時、悩んでいる時

不安な時・・・寂しい時。

気がつけば誰もいない海へ向かって

この指笛を鳴らすことが

癖になってしまっていた。



私達の合図。

呼べばどこにいても

必ず飛んで来てくれる。

今も、心のどこかでは

そう思ってる。

こうして呼ぶことで

彼と繋がっていられる

いつか、きっと来てくれるって。



ねえ、どうしよう・・・

私、皆の笑顔を見ることができて

とっても嬉しいのに

私はそれで幸せだって

そう思えるはずなのに。

ワッカさんとルールーもいて

キマリだってガガゼドにいながらも

気にかけてくれて

リュックだって会いにきてくれて。

私はこの永遠のナギ節を

喜ばしく思っているのに。

それなのに・・・。



それなのに・・・

ねえ・・・キミがいないと

私、上手く笑えないよ。

笑顔なのに、嬉しいのに

時々、苦しくなる時があるの。

せっかく私とお話がしたいって

会いに来てくれてる人達を前に

そんな私では駄目だって思うから

頑張って笑ってる。

笑顔の練習は旅をしていた時も

頑張ってしていたから。

でもね、その時と違うのは

隣りで一緒に笑ってくれる

話を聞いてくれる、聞かせてくれる

キミがいないこと。







「・・・キミに会う前は・・・

私、どうしてたの、かな」







キミに会う前の私が思い出せない程

私にとってとても大きな

存在になってしまってた。

気づいたのは・・・

キミが祈り子様達と一緒に

空へ消えていった時。





夕日も海の彼方に消えて

満点の星空の下

浜辺で海を見つめていると

無性に泣きたくなってくる。

見下ろす小さな光とか

静かな水面は・・・彼と

最初で最後の口づけを交わした

あの聖なる場所を思わせるから。



唇に感じた熱

彼の香り

抱きしめられた温もり

熱い視線を向けられた瞳



どれも鮮明に残っている。

まだ、思い出なんかになっていない。

今だって自分の唇を

指先で撫でるだけで

彼が残した熱を感じられる。







「・・・情けない、って・・・

笑わないで、ね?」







誰に、何て言われようとも

私には・・・

やっぱり、キミが必要なんだ。

どうしても会いたくて

キミを感じたくて堪らない夜は

指笛の後に小さくそっと

風に紛らすように・・・

キミの名前を紡ぐ。

ほとんど呼ぶことのなかった

キミの名前。

でも、今の私には

心を支えてくれる大切な名前。







「・・・・・・

きっと・・・会える、よね?」







最後にもう一度キミの名前を

音にしてから

私は浜辺を後にした。



弱さを見せるのは彼の前だけ。

皆には心配させたくない。

弱い自分を見せたくない。

あの旅からずっと・・・

私が弱さを見せられるのは、彼だけ。



遠くから聞こえた水音に

一度振り返ってみたけど

そこには何もなくて。

ほんの少し、悲哀のような

感情が湧きあがったけど

無理やり心から追い出して

村へと戻って行った。










次の日、リュックが持ってきた

古びたスフィアを見た私は

待ってるだけでは駄目だって。

あの時から止まっていた

私の時間をもう一度動かすために

キミを探しに

今度は自分のために

旅に出ることを決めた。












〜END〜


 

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