final fantasy

□惹かれる言動
1ページ/1ページ



『FF4〜カイン×リディア〜』





目の前の大きな背中。

戦闘の最中というのに

目を奪われるのは

意識が囚われるのは

結いあげられた金糸の髪と

濃紺の鎧と

軽い身のこなしと

槍を振るう力強い腕。



詠唱を終えて魔法を放つのと同時に

気がつけば私の体は

空高くにあった。

何が起きたのか分からずにいると

温かな何かに包まれていることに気付いて

それと同時に大好きな香りを感じて

今がどういう状態なのか

やっと理解することができた。







「戦闘中にぼけっとしてるな」



「し、してないもん!」



「・・・してただろ。

見ろ、俺がお前を抱えて

飛び上がらなければ

確実に攻撃を喰らっていた」



「うぅ・・・」







まさに、彼の言うとおりで

あの瞬間。

常の戦闘のように

神経を張り巡らせていたかというと

答えは否。

けれど・・・原因は、彼なのに。

彼の言葉に言い返せなくて

ただ意味もなく頬を膨らませてみた。

そんなことしても

彼が気にしてくれるはずもない。

視線を下げると

下ではセシルが止めをさしたようで

周囲にモンスターはいない。

ほっと一安心して

改めて視線を上げてみた。



普段見ることのない景色。

いつも彼はこんな景色を見ていたんだ。

いつもより近い太陽と空。

強く感じる風。

一面の緑の波に埋もれる

小さい仲間の姿。

彼の見ているものを共有できる今が

何だかとても特別に思えた。







「・・・カイン?」



「何だ?」



「・・・ありがとう」



「はぁ・・・頼むから

もう少し身の危険に

注意するようにしてくれ」



「は〜い!」







ねえ、カイン?

今のありがとうは、ね。

ついさっき助けてくれたこともだけど

それだけじゃなくてね。

いつもこうして上から

私達を見下ろして周囲の危機から

守ってくれてたんだよね。

不器用に優しい貴方は

決して口にはしないだろうけど。

でも、気付いてしまったら

とても嬉しくて。

もっと、貴方が知りたい、って

何だかね。

そう強く思ったの。

そんなことを言ったら

貴方はまた、呆れたような表情で

溜息を一つ吐くのかな。

でも・・・それさえも

嬉しいな、って思えるのは

どうしてなのかな?







「・・・何をニヤニヤしてるんだ」



「ニヤニヤじゃなくて、ニコニコなの!」



「ふっ・・・どっちも同じだろ」







ふわりと地面に下ろされて

そんな丁寧な扱いと

嫌みな言葉とは裏腹な

頭を撫でてくれる優しい手つきに

また、心が喜びに震えた。









〜END〜


 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ