final fantasy

□まほろばの誘惑
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*数年後設定





「あ・・・こんなところにいた」



「・・・・・・」



「バルフレア?・・・寝てる」







木陰で横になる彼の

静かな寝顔がとても穏やか。

彼の名を知らない者などいないだろうと

それ程に有名な空賊が

こんなところで呑気に昼寝なんて。

苦笑を洩らしながら

隣りにそっと腰を下ろした。

空を見上げ、私が幼馴染と一緒に

空を駆けていた頃を思い出した。

今頃は、きっと新しい相棒と一緒に

飛び回っているのかな。

もしかしたら、あの女王陛下と

秘密の逢瀬でも楽しんでいるかも。



二人の顔が浮かんで

クスリと笑みが零れた。

誰かと誰かの幸せな顔を想うだけで

こんなにも幸せになれる。

誰かを想う幸せを知っているからこそ

感じられる気持ち。

教えてくれたのは

隣りで眠る彼に他ならない。







「・・・疲れてるのかな」



「・・・・・・」



「ん〜・・・首元苦しそう」







直射日光を浴びているわけではない。

でも、この日中の陽気は

彼のようにかっちりと着こんでいては

楽に過ごせるようなものではない。

寝ている彼を起こさないように

そっと手を伸ばしボタンを外す。

そして、ふと思い出す

昨夜の濃厚な情交。

私からの行動を望んだ彼に

逆らうことができず

普段ならしないようなことまで

彼にしてしまった。

今のように衣服を脱がせる、という

行為も例外なくした。



ボタン2つまで外して

思い出した情事と相まって

羞恥に襲われてしまった。

彼の寝顔なんてとても見れなくなり

そっと離れようとした。

でも・・・。







「っ!?きゃっ・・・」



「な〜に逃げようとしてんだ?」



「え・・・起きて、たの・・・?」



「お前が隣りに座ったあたりからな」



「っ・・・だったらっ・・・

起きてるって言ってくれたって」



「こういう時はキスで起こすって

相場は決まってるだろ?」







彼にのしかかるような姿勢で

抱きしめられながら

見下ろした先にある不敵な笑み。

今まさに思い出していた昨夜に

幾度となく射抜かれた視線に

今また射抜かれて。

自分でも分かる程に体が熱くなって

上手く言葉が出てこない。







「パンネロ」



「・・・ずるい・・・

私が拒めないって分かってて」



「ずるくて結構。

こっちだって、お前に拒まれないよう

誘い込むのに必死なんだよ」



「何そ・・・んっ・・・」







いやに真剣な眼差しで言われた言葉。

意味を理解する前に

塞がれた唇に思考は完全シャットアウト。

こじ開けられれば

後は彼の熱に翻弄されるだけ。

唇が離れ、酸素を吸い込むその隙に

彼の顔が私の首筋に埋められ

テロリと舐め上げられれば

快楽を散々教え込まれた体は

彼に応えるように反応する。

小さく漏らした吐息と声に

彼がくっと喉で笑ったのが分かった。







「ここと中・・・どっちがいい?」



「・・・・・・止めるっていう

選択肢は・・・」



「ここ、か、中の二択だ」



「・・・ベッドがいい、です」



「分かった・・・

じっくり愛されたいってことだな?」



「っ!?・・・知らな、ぃ」







こうして恥ずかしがっても

彼を喜ばせるだけなのに。

ひょいと軽々抱きかかえ上げられ

横抱きのままシュトラールの中へ

いつものごとく連れて行かれた。

いつもならいる彼の相棒は

偶然なのか気を利かせてなのか

シュトラール内にはいない。

彼の為に用意されたような状況に

あの激しくも蕩けるような交わりを

少なからず期待してしまっている。

そんな私は彼に囚われている

そういっても過言ではなにと思う。







「覚悟しろよ?

時間はたっぷりあるんだからな」







そう言ってまた、ニヤリと口角をあげ

触れるだけの柔らかなキスと一つ。

彼専用の寝室に入る直前に掠めていった。











〜END〜


 

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