final fantasy

□たった一言、伝えたい
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ジッと硝子越しに見つめ

彼此もう二時間。

いい加減、決めてしまわなければ

そう思ってはいるが。

こういうものに疎い俺は

なかなか決めかねている。



彼女を思い浮かべ

一番似合う物を、と思うが。

どれも彼女がつければ似合ってしまう。

店員に任せようかとも一瞬思ったが

自分で選んだ物を渡したかった。

彼女の特別なこの日を

何度過ごしただろうか。

再び彼女を時を歩み始め

そして迎えた今日という日。

だからこそ俺は

伝えたかった想いを

彼女に告げようと思う。







「あ・・・すみません、コレを・・・」







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





思いの外遅くなってしまい

気がつけば周囲は暗くなっていた。

家で待っているであろう彼女を思い

寂しがっているかも、と

気持ちはどんどん焦る。



フェンリルから降りると

緊張からか手に力が

入っていることに気付き

少し深呼吸をしてから

ゆっくりと扉を開いた。







「・・・ただいま」



「あ、おかえりなさ〜い」



「悪い、遅くなったな」



「ううん、お仕事お疲れ様。

もうすぐご飯できるけど・・・

お食事とお風呂どっちにする?」



「・・・・・・」



「?クラウド?」



「そこにエアリスっていう

選択肢はないのか?」



「っ!?な、ないわよ!!」







真っ赤になって怒る彼女を見つめ

苦笑交じりに小さな幸せを感じる。

ぐいぐい背中を押されながら

リビングへと入ると

そこにはご馳走が並んでいる。

エアリスが座って待っててと

キッチンへと入っていく。

食事の後でいいか、と

思ったが・・・。



湯気の立ち上るスープを入れて

彼女が戻って来た。

テーブルへ並べているが

意を決して彼女の肩を掴んだ。







「エアリス」



「どうしたの?」



「・・・・・・あ・・・

誕生日、おめでとう」



「ありがとう!ふふ・・・

毎年忘れないでくれてるね」



「当たり前だ!

エアリスに関することは

忘れるはずがない」



「そっか・・・えへへ、嬉しいなぁ」







頬を仄かに染めて微笑む彼女が

とても可愛くて、綺麗で。

胸が締め付けられる。

あんなに考えていた言葉は

一つも出て来ない。

でも・・・伝えなければ。

勢いのままに彼女の左手を掴んで

一番伝えたかったことを・・・。







「エアリスっ・・・」



「?・・・クラウ、ド?」



「・・・コレ・・・」



「ぇ・・・・・・」



「・・・・・・・・・」



「・・・・・・っ・・・」



「・・・・・・意味、分かるだろ?」



「っ・・・ちゃん、と・・・言って?」



「・・・っ・・・ぁ・・・・・・」



「・・・・・・」



「・・・エアリス・・・

俺と、結婚、しないか?」



「っ・・・・・・うん・・・

うん・・・ふふ・・・何でだろ

涙、止まんなく、なっちゃった」







そう言って柔らかく微笑む

その頬をはらはらと舞う滴。

そんな泣き顔でさえも綺麗で

愛しくて・・・

両頬を掌で包んで

滴を唇で辿るように口づけた。

温かなその煌めく滴は

彼女の心そのもの。

俺の心を満たしていってくれる。







「・・・クラウド」



「・・・何だ?」



「もう、一回・・・言って?」



「・・・・・・ああ」







俺の胸にすり寄りながら

左手を視線の高さにまで掲げ

薬指に煌めく銀光を見つめる。

その様がとても嬉しそうで

俺はその左手に指をからめながら

彼女が欲した言葉をもう一度

耳元に囁いた。







「エアリス・・・愛してる。

・・・俺と、結婚してくれ」



「・・・・・・はい」







自然と絡んだ視線に従うように

柔らかなその唇に口づけた。

それはまるで神聖なもののようで

触れては離れ、また触れてと

幾度となく繰り返し

互いの想いを確かめ合った。















I promise your love that all of me is your thing

(俺の全ては君のものだと、君の愛に誓うよ)

And・・・

(そして・・・)

I thank you on a day called today when you were born

(君が生まれた今日という日に、感謝する)









〜END〜


 

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