final fantasy

□気づいた時には
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最初は、ただの子供としか思っていなかった。

         

セシルと違い俺は顔を合わせたことも

記憶にあるかどうか・・・      

そんな程度の印象しかなかった。       

アイツも長く一緒に旅をしていた

セシルには懐いていたが      

途中から合流していた・・・

ましてや、ほんの少し前には

操られていたとはいえ敵として向かい合っていた俺には       

どこかよそよそしさを感じていた。

当然といえば当然だ。       

セシルとローザのように

すんなりと受け入れる方が不自然ではないか。

俺がそう思うのだから

あのエブラーナの王子やアイツは

よりそう思っているだろう。     

        



アイツが・・・リディアが

合流してからはまともに話していない。

俺自身べらべらと話すタイプではないし・・・

だが、かといって寡黙かといえば      

別段そういうわけでもない。        

セシルやローザはもちろん

エッジとは言い合うくらいに話している。

旅をしているのだから当然だろう。

だが・・・・・リディアとはそうはいかない。

理由は・・・俺が敵だった

ということだけではない。       

俺とセシルがリディアの母親の仇だからだ。

旅を共にしてきたセシルとは

分かり合えているかもしれないが

敵として再び現れた男が

急に仲間として加わったとなれば       

受け入れられるはずもない。       

そんなことは俺が一番よく理解している。

だから・・・・・。        

        

         

          

「・・・どうしたんだ?」      

       

「・・・うん」        

        

         

          

突然リディアが話しかけてきた。      

しかも何やら話があると言って。      

まさかリディアから話しかけてくるとは

思っていなかったから       

表面では冷静さを装っているが       

内面は変な緊張と戸惑いで溢れている。        

        

        

         

「話があるとか、言ってなかったか?」      

      

「えっ・・・!・・・あ・・・うん・・・

あるん、だけど・・・」      

      

「・・・・・」          

       

「・・・私、ね・・・カインにどうしても

言いたいことがあるの」       

      

「言いたいこと?」      

       

「うん・・・・・ごめんなさい」         

        

「・・・・・・・・・・え?」         

        

         

        

急に謝罪された俺が返せたのは何とも間抜けな声。      

何の謝罪なのか・・・まったく分からない。

俺が謝罪するならともかく

何故彼女が謝罪するのだろうか。       

       

        

       

「・・・ごめんなさい、カイン・・・」       

       
「・・・何の為の謝罪なんだ?」       

      

「えっ・・・?」        

        

「俺がお前に謝ってもらう理由は

ないと思うんだが・・・」      

       

「・・・私のせい、でしょ?

カインとセシルが離ればなれになっちゃったのって」        

       

「!?!!」       

        

「あの時・・・お母さんが目の前で死んでしまった時

私が幻獣をよんだから      

・・・カインとセシルのせいと

思っちゃったから・・・」        

        

         

         

俺とセシルが国王の命でミストの村へと赴いた。

その際にリディアの母親が召喚した幻獣を

俺達が倒してしまい

彼女の母親は還らぬ人となった。      

そして、ミストの村も崩壊し

彼女の帰る場所さえも奪ってしまったのだ。        

       

        

        

「・・・・・違うだろ」       

      

「えっ・・・」      

      

「どうして・・・何でお前が謝る!?

違うだろ?

俺とセシルが・・・

俺が、お前の母親と村を・・・」       

        

「・・・セシルに、聞いたよ?」        
      

「!?」       

       

「・・・セシルにもたくさんゴメンって、言われたの       

でもね?・・・セシルもカインも悪くないんだよね?        

お母さんがもういなくて

悲しくて寂しいのは、たぶんずっと消えない・・・       

でも、私と同じくらい

セシルとカインも傷ついてるって      

今の私なら分かるよ」        

       

「・・・同じ、じゃないだろ?

家族を奪われたんだぞ?       

セシルはともかく

俺を憎む権利はお前にはある」       

         

「権利、って・・・そんなの・・・

憎んだり、恨んだりって・・・    

される方もする方も、辛いんだよ?

カインだって・・・分かる、でしょ?」        

           

       

        

そうだ。

ローザのことで、俺が操られたことで・・・

セシル、ローザとそんな負の感情をぶつけようとしていた。     

いや、実際にセシルには

言葉という形にしてぶつけていた。

それは、セシルを・・・俺自身をも傷つけていた。      

苦しくて・・・痛くて・・・。       

        

        

       

「私・・・カインが悪い人じゃないって、分かるよ」        

       

「・・・ほとんど話したことがないのに

何が分かる・・・」       

       

「カインの瞳、すごく優しいから・・・

言葉はキツくても、そこに優しさがあるから・・・       

戦闘中とか、守ってくれる手が

・・・温かいから・・・」       

        

「・・・・・」        

       

「私、もっとカインのこと・・・知りたい、の」       

         

          

        

どうして、彼女の言葉はこうも真っ直ぐなのだろうか。       

初めて会った時は子供だった。    

今だって、見た目は大人でも・・・

中身は変わってないのだろう。       

子供らしい純粋さと

大人としての複雑な感情も理解している。

そんな彼女にこんな風に言われて

こんな風に必死になられて・・・

否定できるはずがない。        

俺だって、そこまで非道ではない。



俺も・・・知ってる。        

お前が誰よりも仲間を大切に思っていること・・・        

誰よりも傷つくことを恐れていること・・・

それ以上に

誰かが傷つくことを恐れていること。

知っている・・・・・

お前をいつだって見ていたから。         

           

          

             

「・・・ダメ、かな?」        

         

「・・・・・一つだけ」        

        

「えっ・・・」        

       

「・・・条件がある」        

        

「なに?」        

       

「・・・俺にも、お前のことを教えろ」         

       
「ぇ・・・?」        

        

「俺も・・・お前のことを知りたい

・・・これが条件だ・・・どうだ?」          

       

「・・・うん!

私も、カインにもっと知ってほしい!」        

       

       

         

本当に・・・真っ直ぐで、素直で。

俺にはないものを数えきれないくらい持っている。        

羨ましいとは思わない。

だが・・・まぶしくは思う。       

ローザに抱いていた想いにも似たもの。

でも、少し違う・・・愛しさと切なさと

そして淡い痛み。         

心の奥底にじわりと湧き上がるこの気持ち。

たぶん、俺はもう知っている。       

けれど・・・まだやっと始まった

俺とリディアの関係。        

今はまだ、気づかないふりをしていたい。

それも、いつまでももたないだろうけど・・・。


        
きっと、自覚してしまうと

留まることなく溢れてしまうだろう。

本当に気づいた時には手遅れだった

なんてよく言うけれど         

こういうことなんだと理解しながら・・・

目の前の彼女の柔らかな笑顔に魅入られていた。








 

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