final fantasy

□そんな君を想ってる
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「やだぁ!」



「えっ・・・」







俺は彼女の声に、いや、拒否に驚いた。

仕事に出かける時。

いつものように俺を見送る為に

彼女が抱きついてきた。

だから、俺もいつものように・・・

愛しい彼女にキスをしようとした。

その瞬間に、彼女が拒否の声をあげた。







「エア・・・リス?」



「あっ!・・・あの・・・えっ、と・・・」







腕の中にいる彼女が

戸惑い気味に視線を泳がせている姿を見て

そんな彼女も可愛い、なんて思ったが

それどころではない。

彼女よりむしろ俺の方が戸惑い、焦っている。

いつも通りの朝の挨拶ともいうべきキス。

昨夜・・・・・あれ程まで熱く

激しく愛し合ったというのに。

何故、今朝になってキスを拒まれなければいけない?

昨夜だって、彼女が嫌がるようなことや

ムリヤリしたわけではない。

エアリスだって悦んでたよな・・・。

とにかくどうして拒まれるのかわからない。







「あ・・・どうか、した、のか?」



「ぇ・・・う、ううん!なんでもないの!

全然、だいじょぶ、だから!」







何が、どう大丈夫だというのだろうか。

明らかにごまかしていることが分かる。

本当ははっきりと理由を聞きたいが

仕事もあるし・・・

言いづらいらしい彼女の懇願するような

潤んだ瞳で見つめられると

何も言えなくなってしまう。







「・・・わかった。

・・・じゃあ、行ってくる」



「うん・・・いってらっしゃい」







いつもなら心が浮足立つように

家を出られるのに・・・。

ぎこちない空気を残したまま

俺はフェンリルにまたがり仕事に出た。










「・・・キスを拒むって、どんな理由がある?」







今日の依頼が意外にも早く終わった。

いつもなら真っ先に家に帰るところだが

朝の出来事を引きずっていた俺は

なんとなく帰りづらく・・・。

セブンスヘヴンに来ていた。

平日で賑わう時間帯を過ぎていた為か

店内にはティファはもちろん

マリンの様子を見に来ていたバレットの2人だけだった。

だから、朝からモヤモヤしていたエアリスとのことを

何とかしたくて相談しようと話を切り出した。







バ「はぁ?」



テ「・・・キス?」



「・・・ぁぁ」







とんでもないことを言ってしまったと

言葉にしてから気付き2人から顔を逸らした。

声も小さくなるのが分かる。

よく考えなくても

他にも聞き方があったはずなのに・・・。







バ「なんだってんだ、急に・・・

あっ!エアリスか?」



テ「当たり前じゃない。

クラウドはねエアリスのことしか考えてないのよ?

他に何があるっていうのよ」



「・・・今朝・・・いきなり、拒まれた」



バ「今朝、って・・・

朝っぱらから何やってんだ!?」



「何って、いつもと同じように

エアリスが見送りに出てきてくれたから

抱きしめて、そのまま・・・

しようとしたら、拒まれた」



テ「へえ・・・いつも、ねえ」



バ「それ・・・毎朝、ってことか?」



「ああ・・・そうだ。

それが、どうかしたのか?」



テ「クラウドって、そういう人だったんだ

・・・意外ね」            

        

バ「お前がバカップルってか?

はははははっ!!」



「・・・うるさい。はぁ・・・」







何だか馬鹿にされたように感じて

イライラし始め思わず溜め息が出てしまう。







「ティファは・・・その・・・

キス、したくない時、って・・・」



テ「・・・・・・・・・キスが嫌になるのは

少なからず相手の事が嫌な時よね。

好きでもない人にされたくないもの・・・

クラウド?聞いてる?」







ああ、しっかり聞いてるよ。

『相手が嫌な時』というのは・・・

つまり相手が嫌いということだろ。

今朝キスをしようとした時に言われた拒絶の言葉。

認めたくなくて・・・

無理やり頭の隅へと追いやっていたのに。

他の人の口から聞いて

嫌でも考えないといけなくなってしまった。

エアリスは俺のことが嫌いになった・・・

そういうことなのか?







テ「クラウド?」



「・・・悪い・・・もう、帰る

・・・ティファもバレットも

話、聞いてくれてありがとう・・・じゃあ」







俺は俯きかけた顔を無理やり上げて

なんとか立ち上がった。

落ちて行く気持ちを奮い立たせる術もなく

それ以上2人に声をかける余裕もないまま

フラつきながら店を出た。







バ「クラウドのヤツ大丈夫か?

かなり落ち込んでたぞ」



テ「・・・っていうかね、エアリスに限って

クラウドを嫌うことなんてないわよ。

理由は何か別にあるんじゃないかな・・・」



バ「それ、さっきアイツに

言ってやりゃあ良かったんじゃねぇのか?

そうすりゃアイツも

あんなに落ち込まなかっただろうし・・・」



テ「だって、あんな話聞かされて・・・

ただの惚気じゃない。

ちょっとくらい意地悪しても

バチは当たらないわよ」



バ「まあ、そうだな」














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