final fantasy

□ズルいヒト
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夢と現の間を彷徨っていると

微かに聞こえる穏やかな寝息。

夢の中へと引き寄せられたと思った

その瞬間。

眩いほどの光が部屋へと差し込んできた。

一気に現へと戻された意識は

覚醒してしまった。







「ん・・・朝、か?」







陽光に照らされる

真っ白なシーツの波に沈んでいる

身体をそのままに

ぼんやりと窓を眺めていた。

すると、急に背後から抱きしめられる。

その温かで、大きな腕は

私のお気に入りの場所だったりする。

一番安らげて・・・一番胸が高鳴る場所。

私を・・・ただの「女」にしてしまう。

しかし、抱きしめたきり全く動かない腕。

まだ、寝ているのかと腕の中で身体を捩り

身体の向きを変えてみた。

すると一見穏やかな笑みを浮かべる彼と

しっかりと視線が合ってしまった。







「ぇ・・・起きてたのか?」



「はい」



「・・・おはよう」



「・・・おはようございます、ライトさん」







光に煌めく柔らかな髪にそっと触れると

その手触りの心地よさにウットリする。

私の体を抱きしめていた右腕が

スルリと抜け頬に触れられる。

その掌は気付けば

大人の男のものになっていた。

包み込むような

その大きく骨ばった手・・・

「あの頃」と同じ温もりなのに全然違う。

それでも気付いたその変化にも胸が高鳴る。

きっと・・・慣れるなんてことは

この先にもないのだろう。







「ライトさん?」



「なんだ?」



「今日は、仕事は休みでしたよね」



「ああ・・・お前も、だろ?」



「はい・・・それで、なんですけど」



「どうした?」



「昨日決めた今日の予定

全部キャンセルしても良いですか?」







昨日決めた予定・・・。

お互いが久しぶりに休みだからと

ショッピングや映画を見て

その後、お気に入りのお店で食事をして

夜には私の家でゆっくりと・・・というもの。

いつものデートと変わらないが

一日中ずっと一緒というのは久しぶりだ。

私は結構楽しみにしていた、今日・・・。







「・・・何か、予定でも入ったのか?」



「いえ、そうじゃないんです・・・ただ」



「ただ?」



「ライトさんの寝顔を見てたら

今日はどこにも出かけずに

のんびりイチャイチャしてたいな〜と

思ったんです」



「い・・・!?」



「久しぶりに一日一緒に居られるんですから

ライトさんを思う存分に堪能したいんですよ」







爽やかな笑顔でサラリと

とんでもないことを言う彼。

こういう部分は変わらず・・・

いや、むしろ磨きがかったような気がする。

ギュッとその腕の中に抱きこまれ

押し付けられた胸からは

トクトクと穏やかな鼓動が聞こえる。

平然とあんなことを言っていたのかと思うと

何とも言えない気持ちになってくる。

けれど彼の言う

「思う存分に堪能」というのは

私にも似たような想いがある。







「駄目ですか?」



「お前とずっと一緒にいるのに

駄目なはずがないだろ」



「良かった」



「・・・それに」



「何ですか?」



「・・・わ、私も・・・ホープと

・・・イチャイチャしたい」







私からこんなことをあまり言わないからなのか

ものずごく恥ずかしくて

顔といわず全身が熱くて

真っ赤になっていることなど

容易に想像できる。

すると一瞬固まった彼が

いきなり私の首筋に顔を埋めた。

彼がそのまま短くついた溜め息が

首筋にかかり思わず身体が

びくついてしまった。







「えっ!?・・・ほ、ホープ!?」



「本当に、貴女はズルいです」



「えっ・・・?」



「そうやっていつも僕のことを

惑わせてばかりで・・・ズルいですよ」



「・・・ズルいのは、お前だろ」



「えっ?」



「お前の言葉一つひとつに

翻弄される・・・

惑わされているのは、私の方だ」



「・・・ライトさん」







真っ赤であろう頬をなでながら彼が耳元で



「そういうところが、ズルいんですよ?」



そう囁いてくすぐったいようなキスをくれた。

徐々に深くなっていくキスに

一瞬戸惑ったけれど

結局はいつも彼のペースへと

引き込まれてしまう。





まだ、一日が始まったばかり。

今日はずっと・・・一緒に温めあおう。













〜END〜


 

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