final fantasy

□小さな星に誓いをたてる
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「海、行きたいなぁ」







彼女のそんな一言がきっかけだった。



夏の照りつけるような日差しも

真夏特有の纏わりつくような

暑さと潮風もない。

潮の香りに包まれながら波音を聞くには

幾分時期外れなのは言うまでもない。







「わあ〜・・・キレイね、すごく」



「・・・・・・ああ」







確かに彼女の言うとおり

この景色は綺麗だと思う。

だが!

こんな冬になろうかという時期に

ましてや空には星が煌めく時間帯。

どうしてこんな寒い思いをしてまで

こんな所に来たのか・・・。

数時間前の自分に言ってやりたい。







「ふふっ・・・」



「・・・エアリス、戻らないか?」



「え?今来たとこなのに・・・」



「はぁ・・・この寒さじゃ風邪、ひくだろ」







俺の言葉を聞いているのかいないのか

未だ波打ち際から動こうとしない彼女。

いい加減この寒さにも苛々し始めた俺は

彼女のすぐ隣へと歩み寄った。

その横顔はどこか憂いていて

ここではない遠くを見ているような

今にも消えてしまいそうな、そんな気がした。

急に漠然とした不安に駆られた俺は思わず

すぐ傍の彼女の手を掴んでしまった。







「えっ・・・クラウド?」



「あっ・・・」



「?どうか、した?」



「いや、別に・・・って、何なんだこの手!

冷たすぎるだろっ!」



「そう、かな?」







掴んだ手は想像していた温もりなどなく

思わず離しそうになる程に冷えていた。

もう感覚がない様子の彼女を

俺のコートの中に入れるようにして

抱きしめた。

その小さな体は掴んだ手よりも

冷えきっていた。

思わず眉間に皺を作り

自分の行動、判断に後悔した。







「早く戻ろう」



「・・・もう少し、ダメ?」



「こんなに体冷たくしてるだろ・・・

何でここに拘るんだ?」



「・・・特に、理由はない、の。

別に、ここじゃなくても

他の海でも、他の場所でも・・・

何でも、良かったの」



「・・・エアリス?」



「なんだか、呼ばれたような、気がしたの

・・・星に、かな?         

気のせいだったんだけど・・・

急に不安に、なっちゃった。

また、クラウドと離れちゃうのかな、って

だから、クラウドとの

思い出の場所に来たかったの

ここに・・・クラウドの傍に

引き止めてくれるような、気がして・・・」







彼女も俺と同じような不安を感じたのだと知り

抱きしめる腕により力を込めた。

同じ時間を今歩いている

もう二度と離さないとそう心に決めた。

でも、離れることはないという

そんな保証はどこにもない。

それでも・・・。







「エアリスが、気にしなくてもいい」



「・・・クラウド」



「もし・・・もしも、その不安が

現実になったとして

俺とエアリスが

また、離れ離れになったとしても・・・

大丈夫だ」



「えっ・・・」



「今度は迷わず、エアリスを探しに行ける。

二人で過ごす幸せを知ったから

失うことは恐い、けど・・・

簡単に手離す気はないから必ず見つける。

今の俺なら大丈夫、そんな自信はあるんだ」



「・・・そっか・・・ふふっ・・・

でも、私だって、待ってるだけじゃないよ?

私もちゃんと探すから・・・

待ってるだけじゃなくて

今度は私も探すから

同じように頑張りたいから・・・」







心にあった不安をさらけ出して

自分に言い聞かせるような、そんな決意。

それでも嘘偽りなんかではない。

彼女と過ごす穏やかで幸せな時間を

心と身体で知った俺なら

俺達なら大丈夫だと、そう言える。





暗い夜空に散りばむ煌めく星々。

小さな光を見つめながら

更に小さな己の最大の力で

愛しい想い人を必ず守っていこうと

もう一度決意した。

どんな厄災からも、どんな脅威からも

どんな不安からも・・・。














〜end〜


 

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