final fantasy

□甘い熱を注がれて
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「あっ、ライトさん!」



「すまない、ホープ・・・待たせたな」



「大丈夫ですよ。

待ち合わせの10分前ですから」







今日は付き合い始めて1年になる日。

ホープと二人で今日のデートを決めた時に

何かお祝いをしようという話になった。

戦いの後・・・まさかホープと

こんな関係になるなんて

あの頃の私には想像もできなかった。

それでも出会った時から         

私にとってホープは

特別だったのかもしれない。







「どうかしました?ライトさん」



「えっ・・・いや、何でもない」



「くすっ、じゃあそろそろ行きましょうか」



「ああ・・・何か買い物があるんだったか?」



「はい、今日のデートで必要なものです」







ふいに引き寄せられた手。

私よりも大きいその手は

繊細さを持ちながらも時折力強さを出す。

一人の男・・・なのだと知らしめるように。

並んだ肩の高さもいつの間にか

同じ高さとなっていた。

それだけ時間が経ち

その時間を共に過ごしてきたんだ。

そう思うと・・・何故だか頬が緩んでしまう。







「・・・ホープ」



「なんですか?」



「今日は・・・お祝い、じゃなかったのか?」



「えっ?お祝いですよ。

その為に今準備してるんじゃないですか」







あの後、何やら大量の食材を

買い占めるホープを

ただ横で見ていた私は・・・

気がつくとホープの家にいた。

ホープの父親は

仕事で1週間家を空けるらしい。

そして、ホープに座らされたテーブルの前で

ぼんやりとキッチンで何かを作る

ホープを眺めていた。

ホープの作る料理はすごく美味しい。

私もそれなりに家事はするが

ホープは私より上手い。

出て来た料理は

レストランで出てくるような

豪華な料理ばかり。

どんどん腕を上げていくホープに

何故か複雑な気持ちになる。

女として、の気持ちなのだろうか。

この私にそんなことを思わせる男なんて

世界中探しても

きっとホープだけなのだろう。

最後に、と大きなケーキが出て来た。

これもホープの手作りだ。







「本当に腕を上げたな、ホープ」



「まあ、いつも作ってる

というのもありますけど・・・

食べてもらうのが、ライトさんですから」



「?どういう意味、だ?」



「・・・好きな人に食べてもらうから

とびきり美味しく

込める愛だって一際大きいですよ」







さらりといつもの笑顔で言われ

どう答えたらいいのか分からず

ただ俯いて赤くなった顔を

隠すことしかできない。

それでもホープは

気付いているのだろうけど・・・。







「ライトさん、ケーキ食べてみてください」



「このまま、か?」



「はい。僕とライトさんの

二人だけ、ですから」







含むような言い方と笑みに緊張が増す。

他意はないのだろうと思いなおし

フォークでケーキの端をさして掬った。

チョコレートでコーティングされたケーキは

粉砂糖が雪のように散らされていた。

そのまま一口食べると

口の中にはチョコレートのほろ苦さと

生クリームの甘さが絶妙に混ざり広がった。







「どうですか?」



「ん、すごく美味しい・・・」



「よかった」



「ホープは食べないのか?」



「ああ、僕は・・・」







二口目を口に含みながら問うと

急にホープの顔が近づいて唇が重なった。

そのまま彼の舌が滑り込んできて

口の中を味わうかのように動きまわる。

こんな行為も成長していくホープに

私はただ翻弄させられるばかりだ。







「・・・甘い、ですね」



「はぁ・・・いきなり・・・」



「ライトさんが食べる姿で充分ですよ。

それに甘いものならケーキより

貴女がいいです」



「なっ!?」



「くすっ・・・明日も休暇なんですよね?」



「えっ・・・ああ」



「だったら・・・」







火照る顔を持て余しながら

ホープを見ていると

再度顔が近づいてきて

また口づけられると思い

自然と身体が強張ってしまった。

唇は重なることなく耳元へと近づけられた。

そして、熱い吐息と共に囁かれた。







「今夜は泊まっていってくださいね」



「えっ!?」



「今日は僕達の記念日、なんですから・・・

1日一緒に祝うんでしたよね?」



「それは・・・そう・・・だが」



「まだ、今日は長いですよ?」







そんな甘い囁きと共に耳に口づけられ

滑り落ちて来た温もりが頬を包みこむ。

彼の熱さを直に感じながら

身体がマヒしていくような

そんな感覚に陥っていく。

再び唇に重なった熱と

ケーキなんて比ではない

甘い甘いこの口づけに

私はホープのことしか考えられなくなる。

そして、さっきの問いの答えは・・・。







「で?ライトさん、どうします?」



「・・・お前の、部屋・・・が、いい」



「くすっ・・・もちろんですよ」







こんな風に翻弄される私というのも

悪くはない。

そう思わせてしまう程に

ホープからもらう愛は大きいもので

私もそれに答えたい、返したい。

そう思いながら私はホープの部屋へと

連れて行かれた。

これから始まる甘い一時に

胸を高鳴らせながら・・・。










〜END〜


 

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